教育環境

秋月流弥

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教育環境

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 木乃伊このい一穂かずほは今時の小学生だ。
 可愛いものや映えるものを集めることが趣味で、目立つことや自分がちやほやされることが大好きでSNSに写真を投稿して承認欲求を得る。
 学校で流行ったものにすぐのっかり、それが廃れば新たな流行にまたのっかる。
 その場の空気をその場のノリで生きていく。よく言えば柔軟悪く言えば考えなし。
 楽しければそれで良し、それが一穂のモットーだ。
 だからクラスの係を決めるのも当然自分がやって楽しいものを選ぶ。
 でも係なんて役職に近くて面白味に欠ける。楽しいか楽しくないかでいえば後者だ。

「係なんかやるなら他のことして遊んでたいのに」
 一穂が愚痴を言うとまあまあ、と友達の衣川きぬがわ綾羽あやはが宥めた。
「係だって今後の自分のためになるよ。やって損はないと思うし」
「真面目だね綾羽は」

 綾羽は真面目でしっかり者の優等生。いい加減な性格の自分とは全く違うタイプの人間だ。
 真逆な性格の二人なのに馬が合うからこうして休み時間も一緒にいる。自分にないものを持っている人間と話すのは刺激があって楽しい。

「一穂ちゃんは何係がいい?」
「私は目立つ係がいい! 派手で華やかで皆に注目されるやつ。綾羽は?」
「私は飼育係かな」
「えー地味。動物の世話って面倒くさいし。いっそ未確認生物くらいだったら映えるし面白そうだけど」
「それは私は嫌かな……あ、でも最近変わったペットが流行ってるよね」
「え、なになに」
「ご飯もトイレもしなくていい世話なしのペットが巷で流行ってるって噂だよ」

 綾羽の話に一穂は目を光らせる。面白い話は大好物だ。

「なにそれ最高じゃん」
「おまけに飼い主を看取れるように不死身なんだって。だから世話もしなくても死なないの。ただすごく高額みたい」
「じゃあ無理じゃん。はあ、タダでペットが手に入らないかなぁ」

 教室で話していると、先生が入ってきた。
 先生は両腕で大きなダンボールを抱えている。
「皆さん、おはようございます」
「先生なにそれ」
一穂が教卓に駆け寄ると他のクラスメイトたちもつられて集まってくる。
「実はみんなに紹介したい子がいて」

 先生はダンボールに被さる布を取る。
 皆がダンボールを上から除きこむと黄色い目と目があった。

「猫だ!」
 クラスの誰かが叫ぶとわあっと周囲が騒いだ。
 なんだ猫か。
 一穂はいたって普通の動物に少し肩を落とす。
 しかし予想もしてなかったハプニングに心が弾んだ。

「子猫ってこんなに小さいの!?」
「ふわふわで可愛い!」
「触ったら噛まれないかな」

 突然クラスに登場した動物に皆が興味津々だ。
 先生は周囲の微笑ましい反応に柔和な笑みを浮かべ生徒たちに話す。
「ここに持ってきたのは、この猫ちゃんを預かってくれる子がいないかなと思って。誰かこの子のお世話をしてくれる人はいませんか」
「はいはーい! 私もらう! 猫飼いたい!!」
「一穂ちゃん?」
 真っ先に挙手をする一穂に綾羽は目を丸くする。
 つい先程まで動物が面倒くさいと言っていた態度とは真逆に一穂は目を輝かせて猫を見つめる。
「猫とかの動画とったら超バズりそうだもん。ついでに私の可愛さとダブルで相乗効果」
「でも大丈夫? 生き物を飼うってすごい大変だよ?」
「平気だって。余裕余裕。ご飯あげたりするだけでしょ。人間と同じじゃん」
 笑顔で小さな頭を撫でると箱の中の猫はナーと鳴いた。
「先生、私この子貰います。お世話もちゃんとするから私にまかせて!」
「木乃伊さん……ありがとう。でも本当に大丈夫?  命を育てるってとても難しいことよ」
 先生は心配そうに一穂を見たが、対する一穂は明るく首を縦に振った。
「うん、絶対大事に育てる。私頑張るよ」
「わかりました。動物のお世話は大変だけど、よろしくお願いしますね」
 わあ、と教室は拍手で包まれた。
 綾羽だけが眉をハの字にして心配そうだ。
「今日からあんたの飼い主は私よ。よろしくね」
 猫に向けて笑顔を浮かべると、黄色い双眸がじっとこっちを見つめていた。
 どう見たって雑種だし世話だってしなくちゃいけないし面倒そうだけど、楽しいことに違いはない。
 係は放送係になったが一穂は新しい役職よりも猫に夢中だった。


 一穂は家に帰ると猫にご飯をあげた。帰り道にペットショップで買った最高級のフレークだ。
「ナー」
「美味しい?」
 猫が夢中で食べる姿を見て一穂は微笑んだ。
「そうだ。これプレゼント」
 猫の首に鈴のついたリボンを巻いてあげる。これもペットショップで買った。
「ナー」
「似合うよ。よしよし」
 猫の顎の下を撫でてやる。ゴロゴロと言って可愛い。

 さっそくSNSに猫の姿を投稿しようとスマホのカメラをダンボールの中の猫に向けた。
「ナー」
「あっ、ちょっと」
 しかし、猫はフラッシュに怯えたのかぴょんとダンボールから飛び出てしまった。
 そのまま猫は部屋の中を好き勝手に歩きだす。
「ちょっと、勝手に歩き回らないでよ」
 猫は器用に半開きだったクローゼットを開けるとワンピースにかじりついた。
「やめなさい!」
 猫を引き離すもワンピースからは糸が垂れていた。糸は長くほつれ、猫の口まで繋がっている。
 一穂は力が抜けその場で座りこむ。
「お気に入りだったのに」
 だが飼い主の落ち込む姿を見て動物は反省しない。猫は懲りずにクローゼットまで歩いていた。
「だからダメだって!」
 その日だけで自分の持ち服が五着お釈迦になった。


 猫を拾うも猫は芸をしない。というか覚えない。
 SNSに猫と仲良く戯れる動画は諦めたことはおろか、猫単体の写真も撮れない。カメラを見た途端タンスの隙間に隠れてしまう。

 世話も大変でため息を吐くばかり。
 ゲロを吐くしトイレの位置も覚えない。小さい頃にトイレの場所を教えるらしいけれど教えるなんて面倒くさい。雑誌の上で用をたされた時は怒った。

 猫に対する苛立ちは日に日に募っていく。
 食事を寄越せと早朝から枕元でナーナー鳴かれろくに睡眠がとれない。
 明日来ていく洋服を出しておくと匂いを嗅いではゴロゴロ寝て毛が洋服に付着する。
 本棚もクローゼットも爪研ぎをするせいでぼろぼろだった。


***


「一穂ちゃん大丈夫?」
「……なにが」
 休み時間綾羽が声をかけてくると、一穂は不機嫌そうに答えた。
「猫ちゃんと仲良くできてるかなって」
「学校にいるときにそんな話しないでよ!  あの猫芸も覚えないし写真も撮らせてくれないし。なんのために飼ってるんだか」
「なんのためって……」
「猫のせいで最近毎日楽しくないし、あんな猫貰わなきゃよかった」

 家に帰ると猫がナーナーと足元にすり寄ってきた。そういえば今朝ご飯をあげるのを忘れていた。

「ナー」
「うるさいッ」

 思わず足元の塊を蹴ってしまった。塊はボールのように転がっていく。
 それでも猫は立ち上がり一穂に寄ってくるので一穂は苛立ち、外へ出ることにした。
「あら一穂、どこ行くの?  もうすぐ夕飯よ」
「図書館!  こんなとこにいても気が滅入るだけだもん」
 玄関のドアノブを回すとお玉を持った母親が声をかけたが、一穂はぞんざいに行き先を伝えるとドアを勢い良く閉めた。

 それ以来一穂は猫の世話をしなくなった。
 嫌になって放置。それどころかイライラすると猫にあたった。
 寄ってくる猫は蹴り飛ばす。ひどいと首ねっこを持って壁にぶつける。
 一度母に目撃され父から二時間の説教をくらったが、一穂が反省するどころか益々猫に対する憎しみが深くなった。

 ある日、学校から帰り部屋に入ると猫がいなくなっていた。
 どこかに隠れているのかと猫の入りそうな隙間を探したがどこにもいない。
 頬に風が当たるのを感じふと窓を見ると窓ガラスが開いていた。そういえば朝に換気をして戸を閉めた記憶がない。
「もしかしてここから……」
 窓から顔を覗き外を見るも周辺に猫の姿はない。当然だ。開けっ放しにしてから数時間も経過している。
 窓を開けっ放しにしたから猫が飛び出していってしまった。

 飼い主なら嘆き悲しむはずなのに、一穂は正直ホッとした。

 もう世話をしなくていい。地獄の日々から解放される。
「あの子から出ていったんだもん。私が追い出したわけじゃない」
 一穂は自分に言い聞かせるように呟いた。


***


 猫がいなくなってから一週間、一穂の日常は戻った。
 SNSの投稿もできるし漫画や雑誌を読むこともできる。猫に囚われていた時間がすべて自由時間として戻ってきた。

「一穂ちゃん、最近ご機嫌だね」
「まあね。私はいつだってご機嫌よ」
「あはは、一穂ちゃんらしい答えで安心した」
「安心って?」
「最近一穂ちゃん怒りっぽいし忙しそうだったから……そういえば猫ちゃんは元気?」

 綾羽の問いかけに一瞬肩を強ばらせる。

「そ、そうね。元気すぎて困っちゃうくらい」
 勝手に逃げ出すくらいだし。
「へえ、やんちゃなんだ。今度見に行ってもいいかな」
「ダメ!」
 一穂の叫ぶような声にクラスの視線が集まる。一穂は慌てて小声で綾羽に言う。
「今うち散らかってて、ほら、猫のイタズラが酷くて」
 綾羽は残念そうな表情を浮かべる。家に来るなんてとんでもない。
 実は猫はとっくにいなくなってましたなんて絶対言えないから。
 せっかく自由になったのに水をさす友人に一穂は小さく舌を打った。

 しかし一穂の平和な日常は続かなかった。
 朝、部屋まで響く怒鳴り声に目が覚めた。
「なに……?」
 怒鳴り声は一穂の部屋の左側、リビングから聞こえる。
 眠いなか眼を擦り声の漏れでるリビングへ赴くと父と母が言い合いをしていた。
「パパママ、ど、どうしたの?」
「一穂!」
 母が一穂に駆け寄ると父は通勤鞄を乱暴に掴み家を出ていった。バタン!  と響きわたるドアの音に思わず目を瞑る。母は顔を手で覆い嗚咽を漏らした。

 母の話を聞くと父は他の女の人のところで浮気をしたらしい。
 父のことを話す母の顔は今までに見たことない怖い表情をしていた。一穂は母の恐ろしい表情に思わず顔をそらした。
 早くケンカが終わってほしい。
 そう思ったのに両親はこの日から毎朝毎晩言い合いをするようになった。
 互いを罵りあう声は一穂の部屋へも聞こえてくる。
「やめて……静かにして」
 一穂は布団をかぶり耳を塞ぐようにして寝た。

 学校にいるときだけが安らぐ時間だった。授業で数式や英単語を頭に詰めて少しでも気を紛らわす。

 しかし午後の授業の終わる時刻が迫るとともに憂鬱な気分になる。家に帰ればまたあの罵声を聞きながら過ごすことになる。
 それでも自分の帰る場所はあそこしかない。
 一穂は気を重くしながら通学路を歩いた。


「私、あの人と離婚することにしたから」
 家に帰ったばかりの一穂に母は冷たく告げた。
「え……」
「今まで続いていたのが奇跡だったのよ。一穂はパパとママどっちについていきたい?」
 そんな。
「いきなり言われてもわからないよ……ていうか嘘だよね?  前まで仲良しだったじゃん」
 一穂の言葉に母は何も言わない。
 あ、これ冗談ではないやつだ。
「わ、私はパパもママも大好きだよ。だからまだ三人でいたいなって」
「あの人はもう新しい家族ができてるから一穂は私に預けたいと言っているわ」
「……っ」
「私に預けられてもね」
 母が吐き捨てるように笑う。

 一穂は自分が両親に邪魔者扱いされていることに震えた。

「あー……そっか。私は邪魔者的な?  あはは、ごめんね」
 カラカラと笑ってみせる。喉の奥が異常に乾く。
 きっとケンカばかりしてたから自分にあたりたくなったんだ。
 両親だって人間。誰かに八つ当たりしたくなるときだってある。
「それよりも私お腹減っちゃった!  今日体育のリレーがハードでさぁ」
 話題を変えるため一穂は努めて明るい声で言う。
「今日のご飯は何かな?」
「ご飯なんてないわよ」
「えっ」
 驚いた一穂の顔を見て母は嫌なものを見たように眉をひそめる。
「なに当たり前のようにご飯が出てくると思ってるの。ママはあなたの召し使いじゃないのよ」
「だって、いつもご飯作ってくれてるじゃん……」
 言葉の最後の方は消え入るような声量になっていた。

 一穂の言葉が終わると同時にバンッと母が壁を思いきり叩いた。

「ママだって気分が悪いときくらいあるの! それなのにあんたは無理して夕飯を作れっていうの!?」
 母はそう言って一穂を叩いた。
「ごめんなさい! ごめんなさいッ!」
 突然の理不尽な暴力に一穂は戸惑いながらも謝ることしかできなかった。
「ごめんなさいママ、やめて」
 母の一穂を叩く手は止まらない。
「あんたなんて邪魔なのよ! こんな娘産まなければよかった!!」
「……ッ!!」

 その言葉を聞いて一穂は家を飛び出した。
 外は雨が降り始めていたが一穂は走るのをやめなかった。

 雨はだんだん強くなる。
 身体にあたる雨粒が石の礫のように固く感じた。
 雨の中傘もなしに飛び出した一穂は雨宿りするため公園の遊具の下に潜り込む。
「……」

 雨で濡れて冷える身体を抱え込むように座る。
 誰も迎えには来てくれない。
 綾羽なら呼んだら来てくれそうだけど、今はスマホもない。それに呼び出す気になんてなれない。
 遊具の中でぼーっとしていると遊具の前を一組の親子が通った。
「わー! 水溜まりだあ」
「こら、汚れるからジャンプしないの」
 近くで聞こえる子供のはしゃぎ声を聞きたくなくて一穂は公園を離れた。

 ずぶ濡れの姿で商店街の通りを歩く。
 商店街の通りは雨で薄暗いのに、周りの家の窓からこぼれる光は明るくて眩しい。

「……あの子も同じだったのかな」

 ふと一週間前に姿を消した猫のことを思いだした。

「ろくにご飯も貰えないし、私に蹴られて痛い目にあって、嫌になって出てっちゃったんだよね」
 あの後猫がどうなったか知らない。
 たったひとりで家を出て、帰る場所もなくて、もしかしたら死んでしまってるかもしれない。
「ひどいことしちゃった……ごめん、ごめんね」
 溢れる涙を擦りながら青になった横断歩道を渡る。

 そのとき、


「危ないッ!」


 誰かが叫んだ。

 横を見るとすぐそこまでオートバイが迫っていた。
「あ」
 声を出す頃にはドンッと大きな音が周囲を響かせていた。

 一穂は地面に倒れていた。

「う……」
 一瞬何が起きたかわからなかった。
 通りを歩いていた人々の騒ぐ声が聞こえる。
「事故だ! 女の子がはねられた!」
 そうか。自分ははねられたのか。
 横断歩道を渡ってる最中にオートバイが突っ込んできたんだ。

 でも、なんだろう。

「痛、くない……?」

 道路に倒れる一穂だったが不思議と痛いところがなかった。
 ドンッと鈍い音が響いたはずなのにその衝撃は自分にこなかった。
 身体を起こすと転倒したオートバイが転がっている。近くにいる運転手の怪我はたいしたことなさそうで、いてて、とずれたヘルメットを直していた。
 すぐ横に倒れているなにかの物体があった。
 その物体は毛の塊のようなもので。
「……!」
 鈴のついた赤いリボンを首に巻いていた。その姿を忘れるはずがない。
「なんで……どうしてっ」
「……」
 一穂の隣に一匹の猫が横になっていた。
 一穂とオートバイの間に割り込んで跳ねられたのだろう。
 猫が先にオートバイに衝突しクッションになったことで一穂への衝撃が和らいだのだ。
「どうして! 私はあんたにひどいことばっかしたのに」
「ナー」
 猫は雨降る路上に倒れ伏し弱々しい声で鳴き、前足で何度も首に巻かれたリボンを触った。まるでなにかを伝えるように。
「ナー」
「まさか、リボンのお礼……?」
 猫はうなずくようにもう一度鳴いた。
「そんなの気まぐれじゃん!  私はあんたにひどいことばかりしたのに……!」
「ナー」

 最初猫に優しくしたのはただの気まぐれだった。
 貰ったばっかで気分が高揚していたから。自分が浮き足立ってたから猫にも優しくできただけだった。

 それなのに。
 そんなたった一瞬の一穂の気まぐれを猫は恩に感じていた。
「ごめん、ごめんね……っ!!」
 一穂は猫を抱き締めた。
「ナー……」
 しかし猫の鳴き声はだんだん小さくなっていく。
「ダメ! 死んじゃダメ! 絶対助けるから」
 雨で濡れる冷たい体温を必死で抱えて温める。
 とにかく助けを呼ばないと。
 誰か、誰か……助けて!

「一穂ちゃん?」

 座り込む一穂に声をかけたのは傘をさした友人だった。

 あの後偶然居合わせた綾羽が猫の応急措置をして近くにある動物病院まで付き添ってくれた。
「おお、これは……」
 獣医は一穂の抱える猫の姿を見ると驚いた顔をし、すぐに手当てをするため治療室へ猫を連れていった。
 祈るように手を合わせ涙する一穂の肩に綾羽はそっと手を置いた。


***


 後日。綾羽は一穂の家に遊びに来ていた。

「猫ちゃん元気になってよかったね」
「もう元気でイタズラしまくりで困っちゃうよ」
 綾羽が部屋を這う猫を撫でると一穂は嬉しそうに答えた。
 部屋の中の本棚もクローゼットも猫の爪痕でいっぱいだ。

「それと、猫じゃなくてマミ。可愛い名前があるんだからちゃんと呼んであげて」
「そうだった。マミちゃんね」
「ナー」
「ふふ」
 あれから猫……マミは事故にあったことが嘘のように元気になった。
 一穂もマミが完治するまでつきっきりで看病していたし、治ってからもずっとマミと遊んでいる。
 一穂の中でマミに対する気持ちの変化があったんだろう。
 学校でも一穂はマミの話を嬉しそうに綾羽に話す。今日もこうしてマミに会わせるため綾羽を部屋へ招待してくれた。
「私今度は飼育係になろうかな」
「え、一穂ちゃん飼育係は地味で面倒くさいって……」
「だって動物大好きになったもん!  今はこうしてお世話してるのが一番楽しいし」
 ね、とお腹を見せて寝転がるマミの腹を撫でると、マミは満足そうに喉を鳴らした。






    ペットと楽しそうに遊ぶ友人を見て私は複雑な気持ちになった。

 ねえ一穂ちゃん。私知ってたの。
 でも一穂ちゃんは知らないんだよね。

 マミが本当はじゃなくて、未確認生物・・・・・だってこと。

 先生と一穂ちゃんの両親が死なない未確認生物を使って優しさに欠けた一穂ちゃんを再教育しようとしていたことも。

 ねえ知ってる一穂ちゃん。
 今、死なない未確認生物を使って命の尊さを教育させるのが巷では流行ってるんだって。
 なんだか矛盾してるみたい。
 でもいいや。これで一穂が優しい思いやりある子になってくれるなら。
 今度一緒に飼育係として活動できるの楽しみにしてるね。

「ナー」

 硝子玉のような目がこちらを見ている。
 お腹を出して寝そべるソレに私は微笑みを見せた。


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