スリーピング・サーガ~世界が眠りに堕ちる前に~

秋月流弥

文字の大きさ
13 / 39
第2章:【ナマケモノの爪の垢】

13.【ナマケモノの爪の垢】ゲット!

しおりを挟む
ナマケモノの町に到着する頃にはとっぷり夜が更けていたので長老の勧めで長老宅に一泊させてもらうことにした。

長老宅には住民たちが感謝の気持ちとダミ子たちに次々とプレゼントを渡した。
町で作った野菜、果物、毛皮(まさか自分たちの……脱皮?)その他諸々。
料理の得意な住民がエビグラタンと野菜のグリルをふるまってくれた。
えらい待たされた。

「ぐがーっぐごごごっ」

「うるせぇぇ……」

和やかな食事時間を終え就寝時間。
客室の隣部屋の長老のイビキがうるさすぎて熟睡できなかったダミ子は耐えきれずベッドから出て外の空気を吸いに行った。

「……お」

同じだったのか長老宅の前の庭先でマースが夜空に浮かぶ月を見つめていた。

「ダミ子さん」

「君もあのイビキにやられたか」
「長老さんも疲れたんでしょう。僕たちが訪れる前からひとり頑張ってたし。安心したんでしょうね」
「心配するほど無呼吸なんだが」

『zzz……』

ナマケモノの町には長老のイビキと共に健やかな寝息が木霊している。

「全員無事でよかったですね」
「ああ。もう盗賊団に誘拐されることもないしな」
就寝前ダミ子はグゥスカ王国の警備部門宛に手紙を書いた。
コックリ盗賊団が行った悪事についてだ。
ナマケモノの町は郵便が通っているし比較的グゥスカ王国までの距離も近い。
数日の間に王国から警備隊が動くだろう。

「ぬかりないですねぇ」
「再発防止が一番大事だろう」
「まあともかく、ひとつ目の材料は手に入りそうですね」
「こちらとしてはやっとひとつという感じだ」

誰が爪の垢を貰うのに盗賊団と戦うと予想しただろう。

ダミ子は小さくため息を吐く。

「ドラゴンとか魔女とかつく材料はどうなるんだ……」
「なるようになりますよ。案ずるより産むが易し。ダミ子さんは僕が守ってみせます」
「カッコいいこと言うじゃないかマースくん」
「たまには僕だってカッコつけたいです。時折こうやって弱々しいイメージを払拭していかないと貧弱ポイントが貯まってしまいますから」
「ポイント貯まったら粗品と交換しようか?」
「要りませんよ!  だから貯めないようにしてるんですって。もう、からかってるでしょう!」
「ははは」

二人は夜空を見上げしばらくお互い無言でいた。
これから起こる未知の未来に思いを馳せて。



「助けてくれてありがとうな。約束通り爪の垢じゃ。受け取ってくれ」
翌朝、長老宅の前にはズラリとナマケモノたちが縦一列に並んでいた。

ダミ子とマースの手には爪やすりが握られている。長老に渡された。

「お、おい、まさか全員分コレで削れと?」

「安心せい。捕まっとったから充分に伸びておる。たんと貰っていけ」
「いやそういうことじゃ……」

二人で行儀よく並ぶ住民たちを見る。全員いる。ぶっちゃけ全員から採集する必要もないのだが立ち並ぶナマケモノたちはほくほくと心なしか嬉しそう。削ってもらうのを楽しみにしている。

「今度はネイルサロンの仕事かよ……」
「よかったですね副業が見つかって」
「……」

ナマケモノたちの爪を研ぎ終わる頃には夕方になっていた。

「もう一泊するか~?」
「「近くの宿屋に寄るので結構だ(です)」」

ダミ子とマースは盗賊団潜入時の時よりやつれた面持ちでナマケモノの町を出発するのだった。

【ナマケモノの爪の垢を手に入れた!】

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...