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私たちの前には小学校の卒業式以来のタイムカプセル。
ブリキ缶を開けるとその中にはさらに三つの缶の箱があった。
いわずもがな私たち三人分のタイムカプセルだ。
「懐かしいな。僕こんなもの入れてたんだ」
くーちゃんの箱にはアニメキャラのキーホルダーや缶バッジ、野球選手のブロマイドが入っていた。
私の箱も似たようなもの。
シール帳やおはじき、そして思い出のブレスレット。あとこれは面白かったが当時流行ったアイドルグループや漫画のメモを入れてあった。
「……」
まだ開いていない箱を見つめる。
本当はこの場に三人いるはずだった。
持ち主のいない箱はポツンと置かれ口を閉ざしている。
「真琴。開けてみなよ」
くーちゃんは言った。
「え……でも実琴のだし」
「僕は見ないから。妹の真琴なら実琴も怒らないよ。それに、これは僕の推測にすぎないけど、実琴は自分のタイムカプセルを開けてもらうために夢に出てまで伝えてきたんじゃないかな」
「どうして?」
「だから憶測だって。それがどうかは今から真琴が確かめる。もしかしたら実琴が伝えたかったことがこの中に入ってるかもしれないよ」
そんなロマン溢れるファンタジーな。
「ほら」とくーちゃんは閉じたタイムカプセルを渡してくる。
パンドラの箱を覗くように、私は片目を瞑りながら箱の中を覗く。
そこから見えたのは封筒だった。
「封筒……?」
箱の中には封筒が一つだけ入っていた。
「これだけ?」
封に貼られたリンゴのシールを剥がすと綺麗に折り畳まれた便箋が三枚綴られていた。
一番上に重ねられた便箋を広げる。
最初に入ってきた文字は【真琴へ】と書いてあった。
「え……?」
実琴が手紙? しかも私への?
【~真琴へ~】
『卒業おめでとう。
これからは中学生だね……って私もだけど。
中学生かぁ、わくわくするね。想像できないや。
中学校は小学校と違って部活や勉強に恋に大忙しになるのかな。高校受験とか嫌だなー。
でも青春真っ盛りじゃん? 恋とかしちゃって彼氏ができちゃったりするのかな?
彼氏なんて想像上の生き物だと思ってた。真琴に先越されたら落ち込むわ』
一枚目はここで終わっていた。
砕けた口調で喋っているような文字の羅列にいかにも実琴らしい文章で笑ってしまう。
「実琴って感じのする手紙だな」
久しぶりに姉と会話している感覚を思いだす。
懐かしい心地好さに心がじんわり熱くなる。
一枚目をめくり二枚目へ目を落とす。
『くーちゃんには小学校時代お世話になりっぱなしだったね。
中学生になっても真琴とくーちゃんと仲良し三人組でいたいな……いたかったな。
真琴には謝らなくちゃいけないね。
くーちゃんが違う中学、高校に進学すること、この町から引っ越してもうあんまり会えなくなっちゃうこと。
黙っててごめんなさい。
真琴には悪いと思ってたんだよ。罪悪感でいっぱいだったよ。でもそれには理由があったんだ』
「理由?」
『理由っていうか焼きもちなんだけどね。悔しかったんだ。
知ってた? くーちゃんって真琴のことが好きなんだよ。
それも筋金入り。だって私、幼稚園の卒園式でくーちゃんに告白してフラれてるの。「僕は真琴が好きだから」だって。
悔しかったな。でも私じゃなくて真琴を選ぶくーちゃん見る目あるなって思ったよ。私って人気者だからさ(笑)
皆が私を好きになってくれると思ってた。私は胡座かいてたんだ。
私が好きになった人は私を選ばなかったんだって初めての敗北だったよ。
だからずっと真琴が羨ましかった。私が真琴だったらって何度も思った。
でも真琴はいつも自信がなさげで。
私と比べて落ち込む姿を見てきたけれど、私こそ真琴が羨ましかった。隣の芝は青いって昔の人はよく考えたもんだよね』
「……」
知らなかった。
実琴は私を羨ましがってた。
実琴はくーちゃんのことが好きだったんだ。
ていうか。
(えっ? くーちゃんは私のことが好き? それってアイラブユーの!? 月が綺麗ですねの⁉)
思わず隣に立ってる少年を見る。
くーちゃんは箱の中身が見えないよう後ろを向いている。
「あ、雲が羊みたい」とかぼんやりしたことを発言している。
(もう実琴の奴! これから意識しちゃうじゃんか~!)
衝撃の二枚目をめくりいよいよラストの三枚目。
『いつか母さんが話した双子の奇跡の話覚えてる?
あの話を聞いた時真琴は言ったよね。「それって半人前ってことでしょ」って。
私それから考えたんだよ。なんで双子って存在があるのかって。
私が思うにはね真琴、片方ができなかったことをもう片方が叶えてくれるからだと思う。
ほら。二年生の頃私が熱をだして学校を休んだ時、真琴が私に成りすましてプリンを二個貰ってきたときがあったでしょ。
そこまでプリン好きじゃないからって私に二つくれた。
どうやって私に成りすましたのって聞いたら、トイレで着替えて私のふりをして他クラスに入ったって! 真琴って時々大胆になるよね』
「そんなことあったな」
あの時はプリンを届けたくて必死だったから。
『だからもし真琴に何かあったら今度は私が真琴の代わりになってあげる。
私は絶対真琴を助けるよ。私たち双子は二人で一つ。支え合うために二人として生まれたんだから! 改めて、卒業おめでとう』
【~優しい姉より~】
手紙はそこで終わっていた。
「実琴……っ」
夢の中で会った実琴の顔を思いだす。
きっとこれを伝えたくて会いに来てくれたんだね。
片方にできなかったことをもう片方が叶える。
それは両方が常に一緒にいなくても、見えないところでも互いが互いを支えることができる。
片方の力で片方を支えるから飛べるんだ。
それはただの解釈の違いなのかもしれない。
でも真相は同じところへ辿り着いた。
“君がいるからここまで頑張ってこれた”
私はもう一度空へ飛び込める。
今度は私が実琴のために、もう片方を支える翼になる。
「ありがとう実琴」
もう一度、空へ。
ブリキ缶を開けるとその中にはさらに三つの缶の箱があった。
いわずもがな私たち三人分のタイムカプセルだ。
「懐かしいな。僕こんなもの入れてたんだ」
くーちゃんの箱にはアニメキャラのキーホルダーや缶バッジ、野球選手のブロマイドが入っていた。
私の箱も似たようなもの。
シール帳やおはじき、そして思い出のブレスレット。あとこれは面白かったが当時流行ったアイドルグループや漫画のメモを入れてあった。
「……」
まだ開いていない箱を見つめる。
本当はこの場に三人いるはずだった。
持ち主のいない箱はポツンと置かれ口を閉ざしている。
「真琴。開けてみなよ」
くーちゃんは言った。
「え……でも実琴のだし」
「僕は見ないから。妹の真琴なら実琴も怒らないよ。それに、これは僕の推測にすぎないけど、実琴は自分のタイムカプセルを開けてもらうために夢に出てまで伝えてきたんじゃないかな」
「どうして?」
「だから憶測だって。それがどうかは今から真琴が確かめる。もしかしたら実琴が伝えたかったことがこの中に入ってるかもしれないよ」
そんなロマン溢れるファンタジーな。
「ほら」とくーちゃんは閉じたタイムカプセルを渡してくる。
パンドラの箱を覗くように、私は片目を瞑りながら箱の中を覗く。
そこから見えたのは封筒だった。
「封筒……?」
箱の中には封筒が一つだけ入っていた。
「これだけ?」
封に貼られたリンゴのシールを剥がすと綺麗に折り畳まれた便箋が三枚綴られていた。
一番上に重ねられた便箋を広げる。
最初に入ってきた文字は【真琴へ】と書いてあった。
「え……?」
実琴が手紙? しかも私への?
【~真琴へ~】
『卒業おめでとう。
これからは中学生だね……って私もだけど。
中学生かぁ、わくわくするね。想像できないや。
中学校は小学校と違って部活や勉強に恋に大忙しになるのかな。高校受験とか嫌だなー。
でも青春真っ盛りじゃん? 恋とかしちゃって彼氏ができちゃったりするのかな?
彼氏なんて想像上の生き物だと思ってた。真琴に先越されたら落ち込むわ』
一枚目はここで終わっていた。
砕けた口調で喋っているような文字の羅列にいかにも実琴らしい文章で笑ってしまう。
「実琴って感じのする手紙だな」
久しぶりに姉と会話している感覚を思いだす。
懐かしい心地好さに心がじんわり熱くなる。
一枚目をめくり二枚目へ目を落とす。
『くーちゃんには小学校時代お世話になりっぱなしだったね。
中学生になっても真琴とくーちゃんと仲良し三人組でいたいな……いたかったな。
真琴には謝らなくちゃいけないね。
くーちゃんが違う中学、高校に進学すること、この町から引っ越してもうあんまり会えなくなっちゃうこと。
黙っててごめんなさい。
真琴には悪いと思ってたんだよ。罪悪感でいっぱいだったよ。でもそれには理由があったんだ』
「理由?」
『理由っていうか焼きもちなんだけどね。悔しかったんだ。
知ってた? くーちゃんって真琴のことが好きなんだよ。
それも筋金入り。だって私、幼稚園の卒園式でくーちゃんに告白してフラれてるの。「僕は真琴が好きだから」だって。
悔しかったな。でも私じゃなくて真琴を選ぶくーちゃん見る目あるなって思ったよ。私って人気者だからさ(笑)
皆が私を好きになってくれると思ってた。私は胡座かいてたんだ。
私が好きになった人は私を選ばなかったんだって初めての敗北だったよ。
だからずっと真琴が羨ましかった。私が真琴だったらって何度も思った。
でも真琴はいつも自信がなさげで。
私と比べて落ち込む姿を見てきたけれど、私こそ真琴が羨ましかった。隣の芝は青いって昔の人はよく考えたもんだよね』
「……」
知らなかった。
実琴は私を羨ましがってた。
実琴はくーちゃんのことが好きだったんだ。
ていうか。
(えっ? くーちゃんは私のことが好き? それってアイラブユーの!? 月が綺麗ですねの⁉)
思わず隣に立ってる少年を見る。
くーちゃんは箱の中身が見えないよう後ろを向いている。
「あ、雲が羊みたい」とかぼんやりしたことを発言している。
(もう実琴の奴! これから意識しちゃうじゃんか~!)
衝撃の二枚目をめくりいよいよラストの三枚目。
『いつか母さんが話した双子の奇跡の話覚えてる?
あの話を聞いた時真琴は言ったよね。「それって半人前ってことでしょ」って。
私それから考えたんだよ。なんで双子って存在があるのかって。
私が思うにはね真琴、片方ができなかったことをもう片方が叶えてくれるからだと思う。
ほら。二年生の頃私が熱をだして学校を休んだ時、真琴が私に成りすましてプリンを二個貰ってきたときがあったでしょ。
そこまでプリン好きじゃないからって私に二つくれた。
どうやって私に成りすましたのって聞いたら、トイレで着替えて私のふりをして他クラスに入ったって! 真琴って時々大胆になるよね』
「そんなことあったな」
あの時はプリンを届けたくて必死だったから。
『だからもし真琴に何かあったら今度は私が真琴の代わりになってあげる。
私は絶対真琴を助けるよ。私たち双子は二人で一つ。支え合うために二人として生まれたんだから! 改めて、卒業おめでとう』
【~優しい姉より~】
手紙はそこで終わっていた。
「実琴……っ」
夢の中で会った実琴の顔を思いだす。
きっとこれを伝えたくて会いに来てくれたんだね。
片方にできなかったことをもう片方が叶える。
それは両方が常に一緒にいなくても、見えないところでも互いが互いを支えることができる。
片方の力で片方を支えるから飛べるんだ。
それはただの解釈の違いなのかもしれない。
でも真相は同じところへ辿り着いた。
“君がいるからここまで頑張ってこれた”
私はもう一度空へ飛び込める。
今度は私が実琴のために、もう片方を支える翼になる。
「ありがとう実琴」
もう一度、空へ。
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