この過酷な異世界は君だけには優しい~不死の力で生き抜く英雄~

東雲潮音

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第一章【プロローグ:旅立ち】

第一章10【初めての依頼】

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 無事にギルドカードを受け取ったシュウ達は、職員からギルドや、依頼について説明を受けていた。
 
 王国内において、ギルドカードは身分証明をするのに役に立つ。ギルドカードは、その冒険者の魔力にしか反応しないように作られている。
 カードを作成する魔導具はギルドにしかないので、偽造は不可能だ。このカードを見せることで、検問でフードを取る必要もなくなる。

「━━と、このように依頼を受けて頂き、ギルドが報酬を渡します。依頼の達成数や、功績が一定に達した場合、ランクがアップする仕組みとなっております。更に━━」

 ギルド内にある大型の掲示板にて依頼が貼られており、冒険者はその中から依頼を選ぶことができるようだ。依頼は薬草などの採取から、魔物の討伐まで様々だ。

 魔物討伐の依頼を受ける場合は、討伐した魔物の特定部位をギルドに持って帰る必要がある。この特定部位というのは、魔物が体内に魔力をためる際、特に魔力を多く集める部位の事で、その部位が魔石制作に当たって必要ということだ。

 依頼にはそれぞれランクがある。ランクは冒険者にもついていて上から順に、S、A、B、C、D、E、Fとなっている。自分達は当然ながらFランク冒険者だ。ちなみに父さんと母さんはBランク冒険者だったらしい。

「━━説明は以上となります。何か質問はありますか?」

「それじゃあ、私達って今はFランクじゃないですか?私達が受けれる依頼ランクの一番上は何ですか?」

「基本的に1つ上のランクまで受けることが可能となっています。ただし依頼の際の怪我、命を落とした場合も全て自己責任となるのでお気を付けください」

「はい、ありがとうございます!」


 * * * * *



 掲示板の前で貼られている依頼を眺めるが、どれを選べばいいのか正直分からない。無難に採取依頼が良いと思いもするが、今の自分達の実力を試すのであれば、簡単な討伐依頼を受けるのも悪くない。だが最初から討伐依頼をやるのは余りにもリスクが━━

「これ、お願いします!」

 色々と思考を巡らせていると、遠くからアンの声が聞こえてくる。声の方を向くと、ミラがこちらに歩いてきて、

「ほら、シュウ、依頼の受注済ませてきたよ」

「はぁ!?お前なに勝手に決めてんだよ!」

「まあまあ、気にしなーいで。いざ、しゅっぱーつ!」

「えぇ……」

 話も聞かずに、ギルドの外に出て行ったミラをシュウは呆れながら追いかけるのだった。



 * * * * *



「それで?なんの依頼受けたの?」

 現在シュウ達はヴァイグルを出て、森の中を進んでいる。森の名前はエストの森と言い、彼らの故郷のエスト村はこの森の名前にちなんで名付けられたのであった。

「討伐依頼、トフウルフ5匹よ」

 なるほど、一度は勝手に依頼を選んだミラに焦ったが、流石に最初の依頼には簡単なものを選んだようだ。
 トフウルフは狼の魔物で、森の人里に近い領域に現れる。家畜などを殺して、食べてしまうため、討伐依頼としてはよく見る部類だ。油断さえしなければ、自分達で簡単に倒せるだろう。

 シュウとミラの装備は、シュウの父親で元Bランク冒険者であったヴァンが用意したものだ。戦闘に慣れることを目的とするため、武器は扱いやすい剣、防具は動きやすさを重視した革の鎧。因みにシュウは鎧の上から認識阻害のローブを来ている。

「そのフード被ってると視界の邪魔にならないの?」

「今はミラもいるから大丈夫だよ。それに、このローブって防具としても結構優秀なんだ」

 他愛もない話をしつつ、警戒を怠らないように、しばらく歩いていると何かの鳴き声が聞こえ、こちらに近づいてきているようだった。

「っ!ミラ!」

「うん!わかってる!」

 戦闘態勢を整える。そこに2匹の魔物が現れた。トフウルフだ。
 先手必勝、一気に距離を詰めて首を刎ねて━━、

「シュウ!私に任せて!」

 
 シュウが接近する前にミラが魔法を放った。

 放たれた巨大な炎は、一直線にトフウルフの元へ向かっていき、彼らを業火に包むのであった。

「よし!これで2体討伐完了だね!」

「……」

「それじゃあ、特定部位を集めて、ってあれ?ねえ、シュウ、この魔物の特定部位ってどこだっけ?」

「……」

「あれ?シュウ?どうしたの?特定部位ってどーこー?」

「……歯だよ」

 一言だけ言って、その後は無言で燃えたトフウルフの死体を黙々と回収するシュウ。彼の父親から渡された剣は戦闘用だったのか。それとも解体用だったのか。少なくとも今の戦闘では、互いに戦闘で剣は使っていないのであった。


 * * * * *


「いいか?次、また魔物が現れたら、今度は俺にも戦わせろよ」

「えー」

「えー、じゃないっ!」

 少し不満げに口を尖らせるミラ。なんでこんなことになってしまったのか。こんなんで自分は本当に英雄になれるのか?少なくとも、仲間に魔物を倒させているようでは無理だ。次の戦闘では何としてでも、自分の力で魔物を倒さなければ。

しばらく辺りを探索すると、トフウルフの群れを発見した。

「……4匹か、こっちには気付いてないみたいだな」

「どうする?また魔法で攻撃する?」

「いや、それだとさっきの二の舞になるから勘弁してくれ」

 自分が奇襲を行うことを告げ、ミラがその援護を行うことを承諾。

 茂みを利用し、群れの背後に潜む。フードを外し、周りに他の魔獣がいないことを確認。一気に接近する。1匹がこちらに気付いた。もう遅い。一番近くにいたトフウルフの頭を一気に剣で突き刺し、そのまま引き抜く。残り3匹。距離を取ってトフウルフ達に警戒をさせ、

「ミラ!今だ!」

「はぁぁぁ!!!」

 ミラがトフウルフの背後から飛び出し、炎を放つ。放たれた炎は、離れていた1匹を除いた、2体を焼き尽くす。自分達の後ろから現れ、仲間を2匹燃やした敵に警戒を移し、飛び掛かろうとするが、

「遅いっ!!!」

 ミラに警戒が向いた瞬間、距離を詰めたシュウがトフウルフの首を刎ねる。こうして2度目の戦闘は無事に終了した。


 * * * * *


「へえー、シュウ凄いじゃん。ヴァンおじさんとの特訓の成果ってやつ?」

「奇襲も成功したわけだし、油断しなければ、こんな魔物には負けないよ」

 戦闘が終わりフードを再び被ったシュウは特定部位の回収を始めた。「周りに見てる人がいないのに几帳面だなー」とミラは思う。一方で、自分が放った炎はまだ消えてないので、炎が消えるのを待つしかない。

「あー、炎が消えないと特定部位の回収ができないじゃーん。私も今度から剣で倒そっかなー」

(もしかしたら、こういう時のために水魔法の魔札を用意した方が良いのかも?)

 呑気に考えながら腰を下ろし、焚火を眺めるように、燃えるトフウルフを見ていたミラだが、一瞬、違和感を感じた。何かが炎の中で動いたような、

「シュウ!!!危ない!!!」

 次の瞬間、炎の中でまだ何とか生きていた1匹が、解体のため背を向けていたシュウに飛び掛かった。

(だめっ!間に合わない!!!)

 助けられない距離から、見ることしかできないミラが自分の詰めの甘さを痛感する。背後から襲われ、傷を負うことを免れられない幼馴染。そこから一瞬、目をそむけたくなるが、

「……え?」

 背を向けていたシュウが、そのまま腕を伸ばし背後から迫っていたトフウルフの首を剣で貫いたのだ。

 予想外のシュウの動きに脚を止めるが、急いで駆け寄ってシュウに謝罪を、

「シュウ!大丈夫!ごめんね、私のせいで……」

「いや、問題ない。大丈夫だ」

 シュウは問題ないと言っているが、自分のミスのせいで危険な目に合わせたとなっては、自分にとっては心配しない方が無理な話だ。

「でも、シュウ、凄いね!後ろから来たトフウルフを、振り向きもせずに突き刺しちゃうなんて。これも特訓の成果ってやつ?やっぱり、おじさんの教え方が上手なんだね!だってあんなの普通できな━━」

 思わず声を止めてしまった。気になったのはシュウの異様な雰囲気だ。フードを被っているので表情は見れないが、普段だったら今みたいな、それこそ英雄みたいな凄い動きをすれば、少しは何か言うはずなのだが、

「シュウ?どうしたの?」

「━━いや、なんでもない」

 じっと手を見つめるシュウは静かに返答して、

「よし!それじゃあ、帰ろうか!特定部位の回収も済んだし、依頼完了だ!」

 ゆっくりとヴァイグルへの帰路を歩み始めたのだった。
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