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理科準備室

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行きたくない場所に行かなくちゃ行けない時があって。理科準備室なんですけど。

動物のホルマリン漬けとか人体模型とか、気味が悪いものばっかりで。

クラスには授業が始まる前に用具を準備をしなければいけない当番があって、だいたい順番で二人か三人でやるんですけど、その日の準備は思ってたよりも早く終わってしまった。

余裕ができたからか普段開けない扉の中に何が入っているんだろう、って話しになって。鍵がかかっていない所は危険も無いだろうから開けてみよう、って事になった。

準備室は角部屋の理科室の奥にあって黒いカーテンのかかった窓が一つだけあって、壁にはたくさんの棚と冷蔵庫が一台並んでいるんです。

鍵付きの扉や引き出しとかもあってそこは開かなかったけど、開くかどうか試しながら順番にのぞいてました。

まぁ、教科書に載っているような薬品や器具ばかりでしたけど。

変わった物がないかねー、なんて話したその時、

「カツン」

と音がして、何か落としたのかと思いました。

でも、床には何も落ちていなくて。

しばらくすると同じ方向からまた「カツン」と音がした。

やっぱり何かが落ちているのかと思って、かがんで見たりした。

窓際の棚まできた時、窓ぎわの棚から

「カツン」

と聞こえた。棚の扉を爪か硬い物で叩いているようだ。
そう思っていたら、

「カッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッ」

連続して鳴り出した。


こういう時って意外と悲鳴って出ないもんですね。

三人とも無言で部屋を出て、人がいるところまで速攻で走った。

とにかく先生に報告しようって一人が言ったら、もう一人の子がそれを止めたんです。

準備はしてあるからこのまま一度準備室の出入口をきちんと閉めて終わろうって。
そこで遊んでたことがバレたら怒られるし、アレが何かはわからないけど言わない方が安全だから、って。

私も怒られるのは嫌なのでその子の言う通りにしました。

ねんのため、戻ってこっそり開けて中をのぞいたけれどもう、音はしていなかった。

授業中も何事もなく、下校時間になった。

帰り道は報告するのを止めた子と同じ方向だったので準備室の事を話し出した。

扉の中にいたものが音を出しているわけだから普通は虫または生き物なわけでしょ。

でも、生き物を使って実験とか研究なんてウチの学校ではやってはいないし、中の見えない棚に生き物を入れないでしょ。

ネズミなら可能性がある?でもあんな音はさせないと思う。虫ならどこからか飛んできたとかはあるけど一匹でも大量でもそんな音は出せないし。

人間だったら?誰がどうしてそこに入れたのって話になる。

先生に言って確認してもらうにしたって、信じてもらえる?先生がそこに何があるのか知っていた場合は?とか、何にしても簡単に先生に言えば解決するわけじゃない。


その他にも色々考えて説明してくれた。
頭がいい子なんです。その子。

私は全然そんなことまで考えられなくて
とにかく準備室にはもう行きたくないと思ってるだけでした


でも、いつかは順番回って来るんですよね。
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