上 下
72 / 101

家庭科室のロッカー

しおりを挟む
家庭科室は家庭科が五年からなのでそれまでは入ることはありませんでした。

後ろは細いドア付きロッカーで中にはハンガーが1つ入っていて、実習の時は上着とか脱いでエプロンとか着けたり、必要なもの以外はそこに入れておくんです。

ナンバーが振ってあって、出席番号順に入れていくようになっていて。
1番から教室の手前から奥に並んでいて。俺、11番でした。

あの日は俺を含めた係の子が調理実習の材料を冷蔵庫に入れに行くことになっていて、朝、学校についてみんなの持ってきた材料が集まってから家庭科準備室の冷蔵庫へ持って行ったんです。

家庭科準備室は家庭科室の奥にドアで仕切られてるんです。

冷蔵庫に材料を入れてからすぐに家庭科準備室から出ずにしゃべっていたんです。
その時は準備室の出入口のドアは開けっ放しになっていました。

俺のいた位置から、そのドアの向こうの家庭科室の中が見えてて、1番向こうはロッカーだったんだけど、しゃべってる途中バンッ!とロッカーが閉まる音がしたんです。

誰か来たのかと思ったけれどぱっと見る限り、誰も入ってきた様子は無かったので皆なんだろう、って顔してて。

ロッカーのドアは家庭科室に入る時には全部閉まっていたと思ったのでおかしいなと思ったんだけど。

誰かが教室の前を通って人の気配があったから驚かそうとしたのかな?なんて話していて、そろそろ戻ろうか~ってことになったんです。


家庭科室を出ようとした時、またバンッ!という音がした。

びっくりして振り返った。
間違いなく、ロッカーから音がした。


内側から鳴ってる?と思って、俺と友達の男子一人がガンガンロッカーを開けて確認したんだけど、
奥の30番のドアを開けた時、友達の動きが止まった。

女子二人がどうしたの?って聞いた瞬間、こっちを見たと思ったら勢いよくロッカーのドアをバンッ!と閉めて俺や女子の間を駆け抜けてクラスの方へ走って行ってしまった。

俺もすぐ開けてたロッカーを閉めて、女子達もその後を追った。

クラスに戻るとめちゃくちゃ怖がっているそいつに何があったのか聞いた。


ロッカーを開けたら中が真っ黒でそこの奥から白い手が伸びていた。
ドアを開けた開けた自分の手のそばギリギリに伸びてたんだって。

だから言葉も出ないくらい怖くなって逃げたって言ってました。

とりあえず先生に話して、あんまりにもそいつが怖がってるから先生もすぐ家庭科室を見に行ってくれたけど何もなかったって。

何かを見間違えたんじゃないかって言ってて、3時間目が家庭科だったけどそいつ2時間目で早退してったんです。


それからは家庭科室での授業にあいつはいなかったな。


あの後、そのロッカーの話で先生に何番だったか他の子達に言わないようにって言われたけど、俺たちが卒業するまでは確か壊れたとか言って使用禁止になってましたね。
しおりを挟む

処理中です...