96 / 153
第一章
晩餐会-19-
しおりを挟む
が……俺はここまでの会話の内容を幸か不幸か全てわかっている。
俺はそのことを予想はしていたとはいえ、実際に英語が理解できていることに驚いていた。
俺は異世界に行くまでむろん英語に日常的に接していなかったし、話せるほどの理解力もなかった。
ところで、俺が異世界に転移した時に、当初からその地域の言語を理解できたし、話すことができた。
むろん異世界といっても、一つの言語だけが話されている訳ではない。
少なくとも俺の観測範囲では、言語はこの世界と同じほど……いやそれ以上に無数に存在していた。
異世界の全ての言語に接した訳では当然ないが、少なくとも俺が接触した限りの言語についてはそのどれもが理解することができた。
それは俺にとっては大変有り難いことではあったが、その理由、原理は最後まで不明であった。
俺なりに考えた推測としては、スキルと同じような何らかの『加護』のようなものが俺に働いているのではないかというものだ。
とはいえ、それがこの世界でも機能するかどうかは未知数であった。
まあ冷静に考えれば、俺が異世界で使用していた魔法がこの世界でも使えているのだから、異世界での『加護』も有効に作用していても不思議ではないか……。
そういう訳で俺は目の前で繰り広げられていた英語でのやりとりについて全て理解していた。
とはいえ、理解できると言っても、母国語でない以上、どうにも違和感を覚えるが。
異世界で俺が暮らし、ずっと使用してきた王国の主要言語ですら、25年間の月日の中でようやくしっくりときたのだから、当然といえば当然か……。
おそらく異世界でのことを考えれば、聞くだけではなく、話すこともできるのだろうが……。
俺が流暢な英語をしゃべっている姿はどうも変な気がする。
そういえば、他の人達は英語を解せるのだろうが。
俺が、そんなことを疑問に浮かべている間に、クラーク氏がもう一度、咳払いをして、簡単な自己紹介をし、ついで、マスイ氏とキャシー氏の二人を紹介する。
おそらく日系人と思われるマスイ氏が、それを日本語で通訳している。
そして、今度はこちらの番となった。
各々がそれぞれ短く自身の紹介を兼ねて、挨拶を交わすが、みな流暢な英語で話していた。
俺はその様子にいささか驚いてはいたが、よく考えて見れば、花蓮さんや鈴羽さん、それに美月さん、綾音さん、彼女たちはいずれもかなりの教養を要求される立場にある。
彼女たちがこの世界の共通言語たる英語を解せるのはある意味で当然なのかもしれない。
最後に俺の番となり、俺はどちらの言語で話すべきかいささか悩んでいたが、結局日本語で話すことにした。
おそらくみな俺が英語を話せるとは思っていないし、このままそう思われている方がなんとなく都合が良いと思ったからだ。
それに、俺はチートで英語を理解できているだけだから、後ろめたさもある。
なにより、やはり俺自身英語を話すことにどうにも違和感……というか気持ち悪さを覚えてしまう。
言語を理解できていることとそれが心情的に馴染んでいることととはやはり大分異なる。
その後、会は滞りなくというより、特段変わったことなく進行していった。
料理が来て、飲み物で喉を潤し、食事をする。
出席しているメンバーや料理、装飾の豪華さを除けばいたって普通のディナーに思えた。
麻耶さんが中心となり、相手方と簡単な談笑をしている。
そんなありふれたものなのだが、俺はこの世界における格式高い場には慣れていない。
そのため、主にテーブルマナーに悪戦苦闘しながら、おそらく今後あまり口にいれることがないであろう豪華な食事に俺は、なんとかありつこうとしていたから、まわりの話はあまり耳に入ってこなかった。
やがて、会がはじまってから小一時間ほど経ったころ、おもむろにクラーク氏が話を切り出す。
「ところで……今回の会にも出席して頂いている二見さんだが、彼と話させてももらってもいいですかな?」
今まで和やかな空気とうってかわって神妙な面持ちであった。
これまで両者は、特段「俺のこと」について、何ら触れていなかった。
俺は俺で、麻耶さんから極力喋るなと言明されていたから、何も喋っていなかった。
そもそも俺は人の前で話すことが得意ではない。
それに、豪華な料理を食べ、その味に感動していたから、それどころではなかった。
麻耶さんに言われるまでもなく黙々と食事をしていただけであった。
若干の沈黙の後で、麻耶さんが、
「もちろん、自由に話してもらって構いませんわ。彼もこの会に参加しているのですし。ただ、彼はただの冒険者ですし、英語も解せないので、うまく意思疎通ができるかどうか……」
と、言う。
「通訳はマスイがするので、その件は問題ない。ただどうにもこの場で、彼と話すのには色々とやりにくいようですな……」
と、クラーク氏は周りを見回してため息を漏らす。
というのも、花蓮さんと鈴羽さんが、あからさまと言ってよいほどに、かなりの剣呑な視線をクラーク氏に送っていたからだ。
「二見さんはよい仲間に恵まれているようですな……しかし、何やら誤解があるようですが、我々は二見さんの……いえあなた方の敵ではないのですが……」
「敵などとは思っていませんわ。ですが、あまりにも突然の要請……しかも、あなたのような高官が来るのであれば、こちらも身構えてしまうのは当然なのではありませんか?」
と、今まで沈黙を守っていた花蓮さんが言う。
俺はそのことを予想はしていたとはいえ、実際に英語が理解できていることに驚いていた。
俺は異世界に行くまでむろん英語に日常的に接していなかったし、話せるほどの理解力もなかった。
ところで、俺が異世界に転移した時に、当初からその地域の言語を理解できたし、話すことができた。
むろん異世界といっても、一つの言語だけが話されている訳ではない。
少なくとも俺の観測範囲では、言語はこの世界と同じほど……いやそれ以上に無数に存在していた。
異世界の全ての言語に接した訳では当然ないが、少なくとも俺が接触した限りの言語についてはそのどれもが理解することができた。
それは俺にとっては大変有り難いことではあったが、その理由、原理は最後まで不明であった。
俺なりに考えた推測としては、スキルと同じような何らかの『加護』のようなものが俺に働いているのではないかというものだ。
とはいえ、それがこの世界でも機能するかどうかは未知数であった。
まあ冷静に考えれば、俺が異世界で使用していた魔法がこの世界でも使えているのだから、異世界での『加護』も有効に作用していても不思議ではないか……。
そういう訳で俺は目の前で繰り広げられていた英語でのやりとりについて全て理解していた。
とはいえ、理解できると言っても、母国語でない以上、どうにも違和感を覚えるが。
異世界で俺が暮らし、ずっと使用してきた王国の主要言語ですら、25年間の月日の中でようやくしっくりときたのだから、当然といえば当然か……。
おそらく異世界でのことを考えれば、聞くだけではなく、話すこともできるのだろうが……。
俺が流暢な英語をしゃべっている姿はどうも変な気がする。
そういえば、他の人達は英語を解せるのだろうが。
俺が、そんなことを疑問に浮かべている間に、クラーク氏がもう一度、咳払いをして、簡単な自己紹介をし、ついで、マスイ氏とキャシー氏の二人を紹介する。
おそらく日系人と思われるマスイ氏が、それを日本語で通訳している。
そして、今度はこちらの番となった。
各々がそれぞれ短く自身の紹介を兼ねて、挨拶を交わすが、みな流暢な英語で話していた。
俺はその様子にいささか驚いてはいたが、よく考えて見れば、花蓮さんや鈴羽さん、それに美月さん、綾音さん、彼女たちはいずれもかなりの教養を要求される立場にある。
彼女たちがこの世界の共通言語たる英語を解せるのはある意味で当然なのかもしれない。
最後に俺の番となり、俺はどちらの言語で話すべきかいささか悩んでいたが、結局日本語で話すことにした。
おそらくみな俺が英語を話せるとは思っていないし、このままそう思われている方がなんとなく都合が良いと思ったからだ。
それに、俺はチートで英語を理解できているだけだから、後ろめたさもある。
なにより、やはり俺自身英語を話すことにどうにも違和感……というか気持ち悪さを覚えてしまう。
言語を理解できていることとそれが心情的に馴染んでいることととはやはり大分異なる。
その後、会は滞りなくというより、特段変わったことなく進行していった。
料理が来て、飲み物で喉を潤し、食事をする。
出席しているメンバーや料理、装飾の豪華さを除けばいたって普通のディナーに思えた。
麻耶さんが中心となり、相手方と簡単な談笑をしている。
そんなありふれたものなのだが、俺はこの世界における格式高い場には慣れていない。
そのため、主にテーブルマナーに悪戦苦闘しながら、おそらく今後あまり口にいれることがないであろう豪華な食事に俺は、なんとかありつこうとしていたから、まわりの話はあまり耳に入ってこなかった。
やがて、会がはじまってから小一時間ほど経ったころ、おもむろにクラーク氏が話を切り出す。
「ところで……今回の会にも出席して頂いている二見さんだが、彼と話させてももらってもいいですかな?」
今まで和やかな空気とうってかわって神妙な面持ちであった。
これまで両者は、特段「俺のこと」について、何ら触れていなかった。
俺は俺で、麻耶さんから極力喋るなと言明されていたから、何も喋っていなかった。
そもそも俺は人の前で話すことが得意ではない。
それに、豪華な料理を食べ、その味に感動していたから、それどころではなかった。
麻耶さんに言われるまでもなく黙々と食事をしていただけであった。
若干の沈黙の後で、麻耶さんが、
「もちろん、自由に話してもらって構いませんわ。彼もこの会に参加しているのですし。ただ、彼はただの冒険者ですし、英語も解せないので、うまく意思疎通ができるかどうか……」
と、言う。
「通訳はマスイがするので、その件は問題ない。ただどうにもこの場で、彼と話すのには色々とやりにくいようですな……」
と、クラーク氏は周りを見回してため息を漏らす。
というのも、花蓮さんと鈴羽さんが、あからさまと言ってよいほどに、かなりの剣呑な視線をクラーク氏に送っていたからだ。
「二見さんはよい仲間に恵まれているようですな……しかし、何やら誤解があるようですが、我々は二見さんの……いえあなた方の敵ではないのですが……」
「敵などとは思っていませんわ。ですが、あまりにも突然の要請……しかも、あなたのような高官が来るのであれば、こちらも身構えてしまうのは当然なのではありませんか?」
と、今まで沈黙を守っていた花蓮さんが言う。
83
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる