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取り戻すために
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しおりを挟むそして迎えた、面会の日。
ナナの希望で、うちのサロンではなく、近くのレストランに部屋を取った。
ナナ曰く、うちのサロンに変な思い出を残したくないそうだ。
ちょっと納得。
私とナナが待つ部屋へ指定した時間通りに現れたアルバート様に、ナナと私は息を呑む。
ナナは、アルバート様の変わりように。
私は、アルバート様の横にいるエドウィン様に。
「「何をなさっているのですか⁉︎」」
ハモった。見事に。
ナナとアルバート様をレストランの部屋へ残して、私はエドウィン様を外に連れ出した。
私たちがいたら、話したいことも話せないだろう。
アルバート様に2時間与えた私たちは、憧れの屋台食い倒れツアーと洒落込む事にした。
「デートだね」
ウキウキと、エドウィン様が言う。
一応ワルター王子に話は通したらしいが、お忍びという形だ。
「ソウデスネ」
感情の乗らない声で、私は答える。
まさかアルバート様についてくるとは思わなかった。
それを言うと、彼は少し笑って答えた。
「レティに、早くアピールしたくてうずうずしてるんだ。
機会は逃さないよ?」
そうだ、この人こういう人だった。
私は正論を吐くのを諦め、屋台を楽しむことに決めた。
串焼き肉、一口ケーキのようなもの、フルーツのドリンク……私たちは、時々シェアしながら、目につく屋台をハシゴして回った。
美味しくて、思わず顔が綻ぶ。
それを、ウィンは嬉しそうに見ている。
ポツポツと、離れている間にあったことを話すと、彼は少し寂しそうに微笑った。
「レティは、私が居なくても大丈夫なんだね……」
私は、苦笑した。
そうなるように、頑張ったからね。
貴方がああなることは、『知って』いたのだから。
「そうですね、大丈夫です」
ニヤリと笑って言ってやる。意地悪だなぁ、と、彼は笑う。
そこにはでも、暗さは一切無くて。
「私は無理だからね、レティ。
何度でも言うよ。君が必要なんだ。
——だから、君の隣に在れるよう、頑張るよ」
絶対諦めないという決意が、その眸に見える。
「以前、君と話していた孤児院の運営方法、私の領地で試したんだ」
私たちが座っているベンチの前には、大きな噴水があって、子どもたちが、はしゃぎながら水遊びしている。
その音を心地よく聞きながら、目線で続きを促す。
「学校との併設で、近くの貧民街の子供達と一緒に教育する方法だよ。
貧民街の子供達は、学校に来ると、親兄弟も炊き出しを食べれるようにしたら、通ってくれる子が増えたよ。
君の言う通りだった」
「そうですか。良かったですわ」
私は、心から微笑う。
その笑みを眩しそうに見て、彼は言い募った。
「私も、頑張ったよ」
「はい。分かっておりますわ」
「じゃ、ご褒美を貰ってもいい?」
あっ、久々に見る黒い微笑み。
私の意志を確認する前に、左手を取られる。
そのまま立ち上がらせられると、手を握ったまま歩き出す。
「そろそろ時間になるよね。
店まで、このままでね」
——あんまり嬉しそうに笑うから。
しょうがない。許してやるか。
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