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未来を掴むため

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『ただ、一つ問題というか、してもらわないといけないことがある』

金色のドラゴンが、少し低い声で言う。
私は、気を引き締める。

「何かしら?」

『マーガレットは、魂が2人分入ってなお余裕がある、稀有な身体うつわを持っている。だから、僕たちも受け入れることができるんだけど、それでも少し身体うつわを作り変えないといけないんだ。

僕たちを受け入れるために、少し強化させてもらう。

強化しても、見た目や動かす時の感覚とかは変わらないはず。

ただ、作り変えるのに、人間の単位で半年から1年ほど眠ってもらわないといけないんだ』

——まぁ、うん、そうだろう。
普通の人間が、いきなりドラゴンコアを持つ赤ちゃんは産めないだろう。

むしろ、そういう準備がある方が納得できる。

……あ、でも。

身体カラダを作り変えるのはわかったわ。大丈夫。

でも、あなたたちの『お父さま』に、事情を説明する時間はもらえるかしら?

凄く心配すると思うから、私自身で説明しておきたいの」

『うん、大丈夫だよ!
僕たちも、その方が安心だしね。

——それじゃ、転移させるね、お母さま』

銀色のドラゴンが、楽しそうに言う。
私もつられて、笑顔になる。

「ええ、また逢えるのを楽しみにしているわ」

そう言った瞬間、視界が一瞬真っ白になり、慌てて目を瞑った。

すぐにフワッと大好きな香りがして目を開けると、すぐ目の前には驚いたウィン。

——何でお膝の上に転移させるかな⁉︎

執務室のソファに腰掛けていたウィンは、私を膝に乗せたまま固まっている。

「ウィン?」

私が声をかけると、彼は私をかき抱いた。


「良かった、無事だったんだねレティ」

「ええ、心配かけてごめんなさい。
宝珠はこれよ」

私は、ウィンの掌に玉を落とす。

そしてウィンのを見つめて、大切なことを告げる。
精一杯、想いを込めて。

「ウィン、私、貴方を愛してるわ。
私と結婚してくださるかしら」

驚いたように見開いたから、一雫の涙。

「愛してるよ、レティ。
他の何も要らないくらいね」

見事に微笑んで。
私の手を取り、掌にキスを落とすウィン。
くすぐったくて、嬉しくて、ふふって笑った。

「あとね」

ごめんねウィン、ちょっと酷なことを言うかも。

「私、私たちの子どもを受け入れるために、少し眠らないといけないみたい」

「え?」

ものすごく怪訝そう。
ふふ、分からないわよね、当然。

「宝珠を守ってたドラゴンさんたちにね、お父さまとお母さまになって、って言われたの。
そうしたら、凄く幸せになる未来が見えてね、いいよって言ったの」

あふ、段々眠くなっていく。
眠たすぎて説明をだいぶ端折っちゃったけど、起きてから詳しく話そう。

「だからね、半年から一年、眠らないといけないみたい。

ミクは、起きたらすぐに迎えに行きたいわ。
ベル達には、暫く待っててねって伝えてね」

「ち、ちょっとレティ?
意味がよく……」

「私たちの子どもなの……
楽しみね……

まっててね、ウィン
大好き…愛してるわ……」

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