原作を書いたオレはラスボスになるのを全力で拒否してモフモフ達とのんびりします!

新川 さとし

文字の大きさ
18 / 310
第1章 魔の森編

第13話-1 騎士の感謝と生温かい目

しおりを挟む
「なんということだ」

 騎士としては、最悪の失態だ。

 お嬢様をお守りし切れなかった。

 魔の森を甘く見すぎていた。やはり伯爵様のおっしゃる通り騎士団全軍二千が必要だったのだ。

 しかし、お嬢様の「これ以上お家に迷惑を掛けたくない」というお気持ちは大切にしたかったのだ。

 お小さい頃から、ワガママを言っているように見せかけて、いつも周りを気遣い続けてきたエリザベス様のご意向だからだ。

 貴族家のご令嬢が外出する時の護衛隊と同じ人数でお守りするというミッションに挑んだ。

 隣領の「魔の森」は有名だ。生きて帰れぬ可能性というよりも、帰れる可能性があるのかよってレベルの話だ。だが、お嬢様のために命を捨てれば何とかなるはず。オレ達は家族に遺言して護衛の旅に祈る気持ちで出発した。

 しかし、予想に反して魔物らしい魔物は一切出て来なかった。これはいけるかと思ったら、それはフラグというやつだ。

 最悪の魔物と言われるゴブリンの大群に囲まれた。しかも前後を塞がれ、初っぱなから毒矢攻撃を受けてしまうと言う大失態。

 お嬢様を命に換えても守る、などと言うどころの話ではなかった。

 だが、そこに現れたのが「帝国の麒麟児」「将来の帝国魔法院のトップに立つ男」そして「狂乱の貴公子」と数々の異名を持つマルス様だった。

 驚いたのなんの。

 半数が毒矢を受けて動けなくなり、残りもなぶり殺されていくしかない状態だった。

 それなのに、いきなりゴブリンどもが「爆発」した。驚いたという言葉では言い表せないほどの驚きだった。

 しかも、驚くほど普段と何も変わらぬ……そう、まるで「この程度は当然である」というご様子のマルス様。なんと、腕組みしたまま空から降りていらっしゃった。

 正直「助かった」という安堵以上に「なぜ」が先だった。飛空魔法フライは、ただでさえ魔力を消耗させる。マルス様は百体以上のゴブリンを魔法で殲滅した上に、フライまで使ってらしたのだ。一体いつから? あるいは、どこから飛んでいらっしゃったのか。

 マルス様は、至って平然としていらっしゃった。
 
 驚くべき魔法だったし、何よりも、これだけの魔法を使い続けられる魔力がすごい。 

 さらに、驚くべきことがあった。

 俺も含めて、毒矢にやられている。ゴブリンの毒は有名だ。解毒剤も効きが悪い。すぐに毒消しを飲んでも助かるのは半分ほどと言われている。まして、我々は毒矢を受けてから、さんざんに戦っているので回復は難しい。

 しかも連中は槍の先にも毒を塗るので有名だ。

 全員がどこかしらに傷を負ったようだ。恐らく、誰一人助からないだろう。

「部下を集めよ」

 そうお命じになるマルス様には、お嬢様がピタリと吸い付いた形だ。平然と片手で抱きしめられていらっしゃる。

 お嬢様、良かったです。これで安心して死ねます。

「ありがとうございます。生き残りのうち、毒でやられてない者は数人です。我々も恐らく、もうすぐ命を失うことかと。もしもかなうことなら、お嬢様だけでもお連れいただければ、ありがたく」
「まだ、どこかおかしいのか?」
 
 心から不思議そうな声を出されるマルス様だ。

「え?」
「もう解毒は終わっているぞ。傷も塞いでおいたから問題ないはずだ。なお、体調がおかしいモノがいたら、申し出るが良い」
「え?」

 ついさっきまで、目がくらみ、寒気がし、身体がフラついていたはずだ。だが、言われてみれば、ピンピンしてやがる。

 ついさっきまでの「死」が隣にいた感覚は遠のいて、むしろ、寝起きの元気さって感じだ。

「これは、メディチ様のお力で?」

 ありえない!

「そんなに大したことはしてない。だが、身体の問題である以上、確認は必要だ。ゆえに部下を集めよと伝えたのだ」
「ありがとうございます。大至急行います!」

 そこから、部下を集めて尋ねても、全く問題なしだった。

 十人以上もいて、しかもお貴族様でもない一介の騎士全員に解毒魔法に、回復魔法を使うだと?

 ありえないほどのご厚意だ。

 いや、それ以前に、それを可能とする魔力と魔法の技術に唖然とする。これでは帝国一、いや、この大陸広しと言えども匹敵する人物などいると思えなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

伯爵令息は後味の悪いハッピーエンドを回避したい

えながゆうき
ファンタジー
 停戦中の隣国の暗殺者に殺されそうになったフェルナンド・ガジェゴス伯爵令息は、目を覚ますと同時に、前世の記憶の一部を取り戻した。  どうやらこの世界は前世で妹がやっていた恋愛ゲームの世界であり、自分がその中の攻略対象であることを思い出したフェルナンド。  だがしかし、同時にフェルナンドがヒロインとハッピーエンドを迎えると、クーデターエンドを迎えることも思い出した。  もしクーデターが起これば、停戦中の隣国が再び侵攻してくることは間違いない。そうなれば、祖国は簡単に蹂躙されてしまうだろう。  後味の悪いハッピーエンドを回避するため、フェルナンドの戦いが今始まる!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】憧れの異世界転移が現実になったのですが何か思ってたのと違います

Debby
ファンタジー
【全話投稿済み】  私、山下星良(せいら)はファンタジー系の小説を読むのが大好きなお姉さん。  好きが高じて真剣に考えて作ったのが『異世界でやってみたい50のこと』のリストなのだけど、やっぱり人生はじめからやり直す転生より、転移。転移先の条件として『★剣と魔法の世界に転移してみたい』は絶対に外せない。  そして今の身体じゃ体力的に異世界攻略は難しいのでちょっと若返りもお願いしたい。  更にもうひとつの条件が『★出来れば日本の乙女ゲームか物語の世界に転移してみたい(モブで)』だ。  これにはちゃんとした理由があって、必要なのは乙女ゲームの世界観のみで攻略対象とかヒロインは必要ないし、もちろんゲームに巻き込まれると面倒くさいので、ちゃんと「(モブで)」と注釈を入れることも忘れていない。 ──そして本当に転移してしまった私は、頼もしい仲間と共に、自身の作ったやりたいことリストを消化していくことになる。  いい年の大人が本気で考え、万全を期したハズの『異世界でやりたいことリスト』。  なんで私が転移することになったのか。謎はいっぱいあるし、理想通りだったり、思っていたのと違ったりもするけれど、折角の異世界を楽しみたいと思います。 ---------- 覗いて下さり、ありがとうございます! 2025.4.26 女性向けHOTランキングに入りました!ありがとうございます(๑•̀ㅂ•́)و✧ 7時、13時、19時更新。 全48話、予約投稿しています。 ★このお話は旧『憧れの異世界転移が現実になったのでやりたいことリストを消化したいと思います~異世界でやってみたい50のこと』を大幅に加筆修正したものです(かなり内容も変わってます)。

処理中です...