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第1章 魔の森編
第25話-1 母のうれい
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私の名前はリリィ。
アモーア帝国メディチ公爵家の正夫人です。
侯爵家の娘に産まれ、立場にふさわしい教育を受け結婚して、子どもを産み育ててきました。
しかし、ある朝、目覚めると「日本という国で生きていた記憶」が蘇ってきて驚きました。これは「前世」というものかしら? あきらかに私の生きているアモーア帝国の存在する世界とは違っています。
なんだか、自分の中にもう一人の人がいるみたいで不思議な感覚でした。
だって、そこでの暮らしも、常識も全く違っています。
魔法みたいなことがいっぱいあるのに、誰も魔法を使えないのです。主に電気という力を使っているんだそうです。
仕組みはよく分かりませんでしたが、世界が違うといろいろなやり方があるんだなと思いました。
一番不思議だったのは、その世界の私にも子どもがいたこと。
名前はどうしても思い出せないけど、通り魔に襲われた私たちの家族は、夫が庇ってくれて息子と私は救われたのでした。
それ以来、息子だけが私の生きがいでした。その愛する息子は中学の時にイジメを受けてしまいました。すぐさま私立に転校させたのですが、元々心臓の悪かったこともあって、高校の途中から家に引きこもってしまうようになりました。
森の番人小屋よりも狭いお家で息子とふたり暮らし。使用人ももちろんいない平民の生活です。
日々の暮らしだけでも大変でしたけれども、心に傷と病気を抱える息子に働けとも言えません。必死になって息子の治療費を稼ごうと働いていたら、ある日、息子は文筆家になったのだとハンカチを贈ってくれました。
なんだかとっても心が温かくて、温かくて、あの日の温かい涙をハッキリと覚えています。
息子の貯金通帳は、メディチ家のそれと比べればわずかなものですが、それまでの暮らしを考えれば、まさに別格。
一気に暮らしが楽になると思った矢先に、息子は急死しました。
悲しみ、などという言葉では言い表せなかった。自分の一部が無理やり剥ぎ取られた、いえ、それ以上の「痛み」をハッキリと覚えています
その後は、生きる気力を失ったまま、どんな風に生きたのか覚えていません……
そんな「記憶」を取り戻したけれども、ひょっとしたら全部夢かも知れませんね。でも、息子を亡くしたときの悲しみは本物だったし、けっして癒やせるものではなかったのです。
そして、気が付けば、私には息子が「二人」います。一人は確実に私が産んだ子どもです。
誰にも何にも説明してないけれども、兄と弟が6ヶ月違いで生まれているのだから、弟の出生の秘密は秘密ではありません。まあ、見かけが黒髪なので「隔世遺伝」と言うことになっていますが。
我が家が公爵家だからこそ誰も言わない、言えない公然たる秘密。そりゃあ、このことを喋ったら、本人どころか家族の命も危ないんだもの。分かっていても言わないお約束。
だからでしょう。我が家の誕生祝いパーティーは「弟」に合わせて行うのだとお館様がお決めになったこと。プレゼントを用意する他の貴族達のためだと強弁していますが、それに逆らうことはアモーアの女として許されないことでした。
アモーア帝国メディチ公爵家の正夫人です。
侯爵家の娘に産まれ、立場にふさわしい教育を受け結婚して、子どもを産み育ててきました。
しかし、ある朝、目覚めると「日本という国で生きていた記憶」が蘇ってきて驚きました。これは「前世」というものかしら? あきらかに私の生きているアモーア帝国の存在する世界とは違っています。
なんだか、自分の中にもう一人の人がいるみたいで不思議な感覚でした。
だって、そこでの暮らしも、常識も全く違っています。
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一番不思議だったのは、その世界の私にも子どもがいたこと。
名前はどうしても思い出せないけど、通り魔に襲われた私たちの家族は、夫が庇ってくれて息子と私は救われたのでした。
それ以来、息子だけが私の生きがいでした。その愛する息子は中学の時にイジメを受けてしまいました。すぐさま私立に転校させたのですが、元々心臓の悪かったこともあって、高校の途中から家に引きこもってしまうようになりました。
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息子の貯金通帳は、メディチ家のそれと比べればわずかなものですが、それまでの暮らしを考えれば、まさに別格。
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悲しみ、などという言葉では言い表せなかった。自分の一部が無理やり剥ぎ取られた、いえ、それ以上の「痛み」をハッキリと覚えています
その後は、生きる気力を失ったまま、どんな風に生きたのか覚えていません……
そんな「記憶」を取り戻したけれども、ひょっとしたら全部夢かも知れませんね。でも、息子を亡くしたときの悲しみは本物だったし、けっして癒やせるものではなかったのです。
そして、気が付けば、私には息子が「二人」います。一人は確実に私が産んだ子どもです。
誰にも何にも説明してないけれども、兄と弟が6ヶ月違いで生まれているのだから、弟の出生の秘密は秘密ではありません。まあ、見かけが黒髪なので「隔世遺伝」と言うことになっていますが。
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