原作を書いたオレはラスボスになるのを全力で拒否してモフモフ達とのんびりします!

新川 さとし

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第2章 帝国学園 1年生編

第8話-2 朝の風景

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 まあ、そう言いつつも侍女さんだってそれなりに気を使う。普段からの王女の言葉や無言の意向も汲み取って動くのが信頼できる良い侍女さんってことになる。これ、ちょっと覚えておいてね。

 ともかく、朝、サマンサが馬車に乗る時には、オレがエスコートするのがマナーだし、学校までの道のりで会話を楽しむのも、お互いを大切に思っている婚約者なら普通のことなんだ。

 お陰で、まっすぐ行けば20分の道のりも、1時間早く出る必要がある。オレが公爵邸を出る時点で、ガイウスはこれから朝食になるくらいだ。

 これで学園に着くのはガイウスの方が早くなるんだから、どれだけ時間が必要か分かるだろ?

 ちなみに、これは王女に限らないけど、れっきとした貴族なら「寝坊で遅刻」は絶対にない。そんなことになったら侍女やメイドが片っ端から首になるよ。

 ってことで、3日目の朝、馬車の中で王女がピタリとくっついているんだが……

 チラッと侍女を見ると、全くこちらに関心がないという表情で窓のカーテンを細く開けて外を観察するフリをしてる。

 ということは、この状態が侍女的に「あり」ということ。どこまでが「あり」判定なのかは知らないけど、こっちの世界でペタッとくっつくのは恋人同士だけのはずなんだけどな。婚約者候補に許しちゃっていいんだろうか? まあ、オレからくっついているわけじゃないけどね。

 かる~く、脚を伸ばして侍女の靴に触れて合図しているのに、一切、こっちを向く気が無いらしい。

 それなら、ちょい、イタズラしてみようかな。腹黒第二王女の腹の内を探る意味もあるしね。

 そこまでの間、学園長のヅラが高級品だという話から、皇宮に咲いたカヅの花の美しさの話をちょうどしていたのを利用してやろうっと思ったんだ。

「そう言われてみると、サマンサ様の今日の唇は、とりわけお美しく感じますね。思わず魅入られてしまいそうです」
「まあ、お上手ですこと。でも、さすがですわ。ちゃんと分かってくださるんですね」
「え?」

 そこでサマンサがイタズラっぽく笑った。

「実はリップを今朝からは変えてみましたの。ほのかに薔薇の香りが入っておりまして。我が愛を捧げし方に誉められてしまったら、ぜひとも、お確かめいただくしかありませんわね」

 え? マジ? これって、持って回った言い方に聞こえるかもだけど、貴族式の言い方としては、猛烈に露骨な表現だよ。だって、確かめるっていうのは「触れていいですよ」ってことだ。しかも唇を指で触るのは、もっとエッチぃことになるので、確かめるなら、こっちも唇を使うしかない。

 つまり「あなたを愛しているからキスして良いですよ」って言ったのと同じ事。

『この女、どこまで腹が据わってるんだよ。好きでも無い男なのに、落とすためならキスもありか?』

 チラッと侍女の方を確かめると、王女のセリフは聞こえていたはずなのに、こっちを見ようともしない。むしろ、さっきより窓に顔を近づけて「絶対に前なんて見ません。外を確かめてますからね!」と全身で訴えているみたいだ。

 スッと唇を差し出して目を閉じているサマンサ。

 自分から仕掛けておいて、ビビってるオレ。

 その時、侍女が窓の外を見たまま独り言を言った。

「あぁ、もうすぐ学園に着きますわ。あと五分くらいかしら」

 くっ、やられた……

 腹黒第二王女だけに、この程度は計算の内だったか。侍女まで手を回してあるのかよ。

 見事に今回はやられたぜ。

・・・・・・・・・・・

 3日目の登校において、馬車からエスコートされたお姫様が、なぜか、扇で顔をパタパタと仰いでいる姿が目撃されたのである。


 確かに、薔薇の香りだった……



※カズラの花:日本で言う葛ではなくて、この世界のバラに似た植物。花びらのツヤが讃えられ、昔から貴婦人の唇の美しさにたとえられる。ただし、維持管理が難しいため専属の庭師が腕自慢で植えていることが多い。皇宮のカヅラは有名。 



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