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第2章 帝国学園 1年生編
第14話-2 剣術は黄色い声の前で
しおりを挟む平民の場合、帝国学園の卒業生は兵役義務がある。
騎士団では見所のある子に早くから声をかけておくものらしい。
なにしろ、帝国学園の生徒は卒業と同時に各国教沿いの「戦線」に派遣されて下士官候補となるのだ。だからこそ授業料が必要ない。
と言っても、平民にとっての兵役はマイナスばかりではない。5年間の兵役期間があるけど(騎士団に入団すると、その先は免除)、この三十年間は大きな戦は起きなかったし、最近の数年間では小競り合いすらほとんどない。
だから、兵役とは言え、お仕事は地方にはびこる犯罪者対応ばかりなんだ。
おまけに、能力が認められて下士官になれば給料もそれなりになる。なによりも、勤務した土地でつながりができているから、そこで商売をする人間も多いし、上級士官の貴族に認めらると騎士団や側仕えに取りたてられることも珍しくない。
事実、メディチ家の家宰や執事長クラスは、すべて、そうやって取りたてられた人間だから、平民からしたら「出世コース」の一つとして認められているんだ。
それだけに、みんなが本気モードを出していた。貴族は身体強化も含めて魔法禁止。武術場には「攻撃魔法感知器」が備えられているが、それはオマジナイ程度しか意味がない。
体内で最小限に使う魔法は、この感知器ではチェックできない。だから「魔法の使用禁止」は、貴族の紳士協定のようなモノだ。
と言っても、貴族達が弱いことは意味しない。むしろ、レベルが違う。まあ、マルスの身体がすごいんだけどね。
「次」
「お、お願いします」
バキッ
スローモーションのような袈裟掛けに、手首の動きだけで木剣を合わせるのは簡単なこと。そのまま、ほんのわずかに下向きの力を加えて右手首を巻き込むと、磁石でくっついたように相手の木剣が巻き取られる。
いわゆる「巻き上げ」だ。
そのまま、肘の動きで右へ放り出すように剣を振れば、またしても剣が飛んでいった。さっきから剣を振り上げることすらしていない。
「力の入れすぎだ。それでは動きが硬くなる。握る時はタマゴを掴むように。当たる瞬間だけ小指と薬指に力を入れろ」
テストというよりも、既に「指導」しちゃってるけど、まあ、力の差がありすぎだからね。
さっきから、まともに剣を打ち合えた平民はゼロ。オレが強いのもあるけど、貴族と平民の差は、この辺りに出る。事実、伯爵家の苦労人君も、あの身体付きなのに、平民の木剣を身体に触れさせもしない。
まあ、ちょっと汗をかいているみたいだけどね。あれは、剣術の問題というよりも、走り込みとダイエットが必要なんだろうな。
「次」
「お願いします」
で、最初の一振りで、巻き上げてお終い。
『こうやってみると、ウチの騎士団って強かったんだね』
別荘で訓練を付けて上げた時と比べると、素人に近い。実技テストという名の下に、ひとわたり、木剣を交えた。
最後の二人は、騎士団長の息子らしい。父の教えなのか、さすがに持ち手が柔らかくて、巻き上げるのに失敗した。
って、なんか、不良が駅でカツアゲしてるみたいな話に聞こえるけど違うからね!
とりあえず、相手の打ち込んでくるタイミングに合わせて(その瞬間だけは、絶対に力が入るから狙う)数センチだけ押し込む形で相手の軌道を変更。
剣の真ん中を3センチ押し込むだけで、円運動を描く剣先は綺麗に身体の中心からズレてくれる。
そこに正面から打ち込んで、寸止め。
「参った!」
よろしい。これで、参ったをしてくれないと、連続技でマジで袈裟切りをかける所だったからね。それが分かる程度の技量はあるらしい。
またしても黄色い声が響き渡る。
とまあ、平民達にだいたい稽古を付けた後、残るは貴族同士なんだけど、伯爵家令息は、既にブルブルと顔を振ってるし。
まあ、しょうがないか。
「では、ガイウス様。見本試合を行いましょうか」
そうやって「ご嫡男様」に声をかけると、忿怒の表情で顔を真っ赤にしているガイウスだった。
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