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第2章 帝国学園 1年生編
第16話-3 つみのあとさき
しおりを挟む「そうなると、フレイムに観覧スペースが含まれたのは事故ではないということになってしまうが?」
「そ、それは、そのぉ、ドロシー先生は防御魔法を使えるし、ちゃんと防げることも分かっていたので」
「ミス・ドロシーが防御魔法で防ぐから攻撃範囲に含めた、と言っているように聞こえるが? 我々の聞き間違いだね? あれは事故、君の失敗だった」
「だから! 失敗なんかじゃないです。フレイムに入れたのは事実ですけど、でも、危険性は全くなかったんです」
セイラム氏が、大げさなため息をついた。え? 何だよ、一体何が悪いんだ! 防げるんだぜ? そんなことも知らないのかよ。
「え~っと、すまない。もう一度確認させてもらうよ。君が使った魔法はフレイム・ドラゴン・インフェルノ。最上級の範囲攻撃魔法だと、分かっているんだよね?」
「えぇ。でも、ドロシー先生なら防げるんです! ちゃんと知っています。何の危険もなかった。防げる魔法なんです」
「あぁ…… ガイウス君?」
なぜか、困惑した顔のセイラム氏は片手で目頭をグイグイと押してから、オレの方を向いた。
「防げるかどうかの前に、攻撃魔法を人に向けたことが問題になっている。それも最上級の攻撃魔法を使っていて、それを皇女殿下に向けるのがどんな意味を持つのか、さすがに知らぬ訳がないと思うのだが?」
「でも! 魔法テストで魔法を撃って、防げる魔法の範囲に入ったくらいで、なんで大逆だとか、殺人未遂だなんて話になるのか。おかしいです! 事実、先生は、オレの魔法をコントロールして、いっさい観覧スペースに被害はありませんでした」
チラッとセイラム氏は父上と校長の方を見てから言った。
「防げるかどうかは関係ない。人に対して攻撃魔法を使ったこと自体を問題にしているのだがね? それに、既に証言は取ってあるぞ。魔法の被害範囲をコントロールしたのはお兄様だそうだ」
「え? マルスが?」
「ミス・ドロシーは、自分の張っていた防御魔法では無理だと思い、慌てて、使ったことのない高度な防御魔法を再構築すべく努力したが、間に合わなかったと証言している。被害範囲を抑えるべく高度な技を見せてくれたのは、自分では無いとも証言した。そして、マーウォルス君は被害が出ないように自分がコントロールしたことを認めている。これは、ご自身もフレイムの範囲にいらっしゃった第二皇女殿下も、同様の証言をなさっていらっしゃるんだ」
なんだって? ドロシー先生は、あれ、防げるだろ。
オレは知っていた。
あの魔法は第三章の番外編みたいなSSに出てくるやつだ。
一行を取り囲んだ吸血性の血みどろスライムの群れを一気に殲滅するため、ドロシー先生は自分を囮にしてワザとオレに撃たせるんだ。だから、絶対に防げるんだぜ。オレはちゃんと知っているんだ。
だが、あの沼の事件は、まだ起きてない。だから、そこからいくら弁明しても分かってもらえなかった。
セイラム氏は、オレの言ってることをちっとも理解せず、最後にこう言った。
「今回は、お兄様からの嘆願もある。未熟な弟の魔法はコントロールしてみせた。寛大な処置を願うとのこと。それに、第二皇女殿下も婚約者候補であるマーウォルス様のお立場を考えて、事件を公にすることを望まれていらっしゃらない」
チラッと学園長の方を見ると、その学園長は、さらに父上を見てから、重々しく言った。
「学園長の決定として君には3ヶ月間の停学を命じる。ただし、被害に遭われたみなさまに、それぞれ示談が成立することが条件だ。停学期間終了までに、全ての家との示談が成立しなければ、自動的に退学処分に切り替わる」
そこで、また父上の意向を気にした感じの視線を送ってから、学園長が言った。
「いろいろと反省してもらうこともあるが、ともかく、被害に遭われた方に誠意を込めて謝罪しなさい。それと、くれぐれも第二皇女殿下に感謝することだな。なるべく内々で収めるように仰っておられる。なお、学園としては最大限、君のご実家に敬意を払い、寛大な処分としたつもりだ。この処分に不満があるなら、公の事件として扱うこともできるが?」
オレが何かを言う前に、素早く父上が身を乗り出して頭を下げた!
「めっそうもありません。学園の寛大な処置に心から感謝いたします。息子ともども誠意を込めて謝罪いたします」
チラッとオレを見る父上の目には、見たことも無いほどの怒りが籠もってる。
「も、申し訳ありませんでした!」
何で、オレが頭を下げなくちゃイケないんだよ! 防げたんだぞ!
頭を下げながらも、オレは、不満一杯だったんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
作者より
念のため、追記します。ドロシー先生のショックはすごく大きかったです。しかし、エリザベスとサマンサのショックが少なかったのは、ラックの防御魔法を知っていたお陰と、マルス様への信頼からです。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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