原作を書いたオレはラスボスになるのを全力で拒否してモフモフ達とのんびりします!

新川 さとし

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第2章 帝国学園 1年生編

第52話-3 キャバレー辺境伯領

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 一方で、ただでさえ腰の低いガイウスが緊張ぎみに低姿勢なのは「死にカン」の愛読者として、辺境伯が特殊な立場であることを知っていたからだ。

 その特殊性とは、イスム家は「伯爵」の位ではあるが、家格は公爵家と同等か、それ以上とされていることにある。

 なにしろ宿敵アランビュー神聖国への備えとして先々代から国への納税を免除されている。そして「戦争の自由」が保証されているという点では並の公爵家よりも上だという見方がなされているのだ。

 帝国は、キャバレー領を支えるため、税を納めさせるよりも、むしろ食糧援助を始め、あらゆる文物を積極的に援助してきたのが歴史であった。

 これは、国の中枢部から遠く離れた場所で敵対国家と対峙する貴族家への配慮とされた。特に「戦争の自由」については地政学上の必要による権利だ。

 しかし、中央に税を納めず、援助をもらい、自由に戦争して良い、ということは国家に準じた立場と言って良い。辺境伯領が半独立国と見なされているはこのためでもある。

 キャバレー辺境伯に課されている数少ない義務。それは子どもたちを帝国学園に入学させることと、自領の人間ではなく他の貴族家と婚姻を結ぶこと。そして当主となった後は速やかに皇帝と面会することだけである。

 逆を言えば「血の結びつき」以外は、独立しても構わないという扱いに近いのである。

 ただし、辺境伯側も帝国から独立すれば良いというわけではないし、早く独立した方が良いという考えも、今のところ、公には存在しない。

 そのため、皇帝に対しての配慮はしてはいた。帝都に広大な屋敷を構え、そこで嫡男か妻を生活させている。代々の当主は「家族には息抜きをさせませんと」とうそぶいていたが、事実上の人質を差し出しているのと同じである。

 そんな屈折した関係性があるため、ガイウスも普通の貴族と接するのとは違った緊張せざるをえなかったのだ。

 そのくせ、ガイウスは自ら望んでここにやって来たのである。そのお供にはレヴァント商会主がいる。というよりも「日頃のお世話に感謝を込めて」とレヴァント商会が全ての経費を持ってのご招待旅行なのだ。

 ガイウスとしても「出入りの商会との関係も確かめる必要があり、夏休みにしかできない」と主張すれば、正々堂々と「今の境遇」から抜け出す口実になる。

『いや~ いくらなんでも、夏休み一杯、家庭教師漬けってありえないでしょ。水着回とかラッキースケベは諦めたけど、来る日も来る日もオッサンの顔を見ているのは無理! 辺境伯領に行けば美女がよりどりみどりでご接待してくれるらしいし』

 ということで「辺境伯領に行かざるを得ない」という理由を押し立てて、なんとか作り出したのがこの2週間だった。

 もちろん、馬車の旅路には世話役のメイドがつきっきり。前世で言えば「宴会のコンパニオン」的にお世話をしてくれる。あれも、これも、である。

 ゆえに、イスムに対して目一杯緊張しつつも「甘い期待」に満ちた訪問となったワケである。

 メディチ家の基準から言っても、相当に豪華な貴賓室でイスムと向かい合った。キョロキョロと落ち着き無く部屋を見回す態度で、完全に見切られてしまったことに気付かなかった。

 貴族とは相手次第で「取り引きか、利用か」を決めるものなのである。

 最初に貴族的な修辞での挨拶をすませる程度にはガイウスも学んでいた。

 二杯目の紅茶を注がれたところでイスムは人払いをした。

「さて、メディチ家ご嫡男であらせられるガイウス様におかれましては、この田舎貴族めでは役不足とは承知の上で、ぜひとも協力関係を結びたく」
「協力関係、ですか?」
「はい。お互いに益のある関係を作るのはいかがでしょうか?」

 イスムは相変わらず、人の良いおっさん顔に笑顔全開で「利用」に踏み切ったのだった。

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