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第2章 帝国学園 1年生編
第56話-1 前日点検
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9月19日 文化祭前日の夕方。
生徒会室に集まった役員にサマンサが笑顔を見せていた。
「みんなの活動予定を考慮して作っておきました。はい、これでいいかしら?」
渡された紙を手にサラが「これは?」と小さく声を上げて、コテンと首を傾けた。
「「くぅ、かわぃ」」
双子が思わず声を漏らした。
このあたりの仕草の可愛らしさは天然なのか、あざとさだか分からない。何気ない動き一つで双子の心を奪ってしまったらしい。今までは「エリシア命!」一筋だった二人をあっさりと宗旨変えさせるあたり、凄まじい破壊力と言えよう。
さすが正ヒロインだけはある。
もちろん「高位貴族の先輩」から好意が寄せられるなんて、ヒロインは簡単に気付かないのがお約束である。
「会長、これは何の分担ですか?」
「サラちゃんは初めてだもんね。これは巡回のシフトよ。生徒会役員が一人と、各クラスから選ばれる文化祭実行委員からの3人でチームを作って、4人ひと組になって巡回するの。トラブル予防と、ちょっとしたことなら早めに解決できるように問題を早期発見するのが仕事よ」
「でも、本物の皇宮騎士様が来てくださるのでは?」
これは誤解による疑問だが、サラは責められない。
なにしろ帝国学園の文化祭は皇宮騎士達が警備するのである。これは王族の子弟が通う学園ならではの伝統になっているらしい。
彼らは「警備」のプロだ。それで十分でしょって思ってしまうんだよね。特に、帝都に住む平民から「皇宮騎士はジェントルマン」として知られていて、しかも一人ずつが才能で選別され、全員が不断の努力によって一糸乱れぬ動きをする。その活躍ぶりは高い信頼を得ているんだ。
何かあれば巡邏の騎士達よりも、一段も二段も格上の扱いを受ける王宮騎士達の大半は卒業生でもあるし、志願制での警備任務は大人気なのである。
何事もなくて当たり前の「文化祭警備」を、彼らは手抜きせず懸命に役割を果たそうとする点は信頼性抜群。しかし、彼らの役割はあくまでも不審者に対するためのモノ。文化祭を実施する上での様々なトラブルには対応しないんだ。
トラブル処理はあくまでも生徒会と文化祭実行委員の仕事だというのが伝統だった。もちろん、もめ事に対して生徒会が要請すれば皇宮騎士達も手伝ってくれるけど、原則は生徒が独自に解決すべきだとされている。
そのために生徒会役員1名と文化祭実行委員3名がチームを作って、校内のあらゆる時間、あらゆる場所を見回りするシフトが組まれている。
この生徒会・文実のタスクフォースチームが事実上の「文化祭の番人」なんだよ。
とはいえ平民出身のサラが一人で文実を率いるのも厳しいだろうと、これは特例としてエリシアと組むことになった。
最終下校30分前となった今、これから点検作業をしようということなのだ。
生徒会室に集まった役員にサマンサが笑顔を見せていた。
「みんなの活動予定を考慮して作っておきました。はい、これでいいかしら?」
渡された紙を手にサラが「これは?」と小さく声を上げて、コテンと首を傾けた。
「「くぅ、かわぃ」」
双子が思わず声を漏らした。
このあたりの仕草の可愛らしさは天然なのか、あざとさだか分からない。何気ない動き一つで双子の心を奪ってしまったらしい。今までは「エリシア命!」一筋だった二人をあっさりと宗旨変えさせるあたり、凄まじい破壊力と言えよう。
さすが正ヒロインだけはある。
もちろん「高位貴族の先輩」から好意が寄せられるなんて、ヒロインは簡単に気付かないのがお約束である。
「会長、これは何の分担ですか?」
「サラちゃんは初めてだもんね。これは巡回のシフトよ。生徒会役員が一人と、各クラスから選ばれる文化祭実行委員からの3人でチームを作って、4人ひと組になって巡回するの。トラブル予防と、ちょっとしたことなら早めに解決できるように問題を早期発見するのが仕事よ」
「でも、本物の皇宮騎士様が来てくださるのでは?」
これは誤解による疑問だが、サラは責められない。
なにしろ帝国学園の文化祭は皇宮騎士達が警備するのである。これは王族の子弟が通う学園ならではの伝統になっているらしい。
彼らは「警備」のプロだ。それで十分でしょって思ってしまうんだよね。特に、帝都に住む平民から「皇宮騎士はジェントルマン」として知られていて、しかも一人ずつが才能で選別され、全員が不断の努力によって一糸乱れぬ動きをする。その活躍ぶりは高い信頼を得ているんだ。
何かあれば巡邏の騎士達よりも、一段も二段も格上の扱いを受ける王宮騎士達の大半は卒業生でもあるし、志願制での警備任務は大人気なのである。
何事もなくて当たり前の「文化祭警備」を、彼らは手抜きせず懸命に役割を果たそうとする点は信頼性抜群。しかし、彼らの役割はあくまでも不審者に対するためのモノ。文化祭を実施する上での様々なトラブルには対応しないんだ。
トラブル処理はあくまでも生徒会と文化祭実行委員の仕事だというのが伝統だった。もちろん、もめ事に対して生徒会が要請すれば皇宮騎士達も手伝ってくれるけど、原則は生徒が独自に解決すべきだとされている。
そのために生徒会役員1名と文化祭実行委員3名がチームを作って、校内のあらゆる時間、あらゆる場所を見回りするシフトが組まれている。
この生徒会・文実のタスクフォースチームが事実上の「文化祭の番人」なんだよ。
とはいえ平民出身のサラが一人で文実を率いるのも厳しいだろうと、これは特例としてエリシアと組むことになった。
最終下校30分前となった今、これから点検作業をしようということなのだ。
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