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第2章 帝国学園 1年生編
第65話-5 婚約者
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サマンサにとって、ただいまからの発言する言葉は、これまでと変わらざるを得ない。
マルスは正式な婚約者であり、皇太子を予定される立場となったのだから。
「マーサ、マーウォルス様のお部屋をお願い」
「かしこまりました」
皇宮内のマーウォルスの待遇について、サマンサが自分に与えられた予算内で自由に指揮を執る権利が生まれたのである。
これは結婚後の家庭において内向きは女主人が全権を持つという慣習から来ている。
いわば「マーウォルス家内の女主人(仮)」とでも呼ぶべき立場だ。
女性の実家において、婚約者のお部屋を用意して「いつでもいらしてください」という形式を作るのは最上のおもてなしであるし、マナーでもある。
もちろん「フラリと現れる婚約者」などというものはありえないが、形式上、男性は「我が家のように思って」いつ婚約者の家に来ても良いし、時間と理由を作って泊まっていくのは、むしろ礼儀とされた。
義理の息子として、婚家と仲良くやりますよと言うパフォーマンスでもある。
そして、今回の場合、婚約発表の日程が例のないほどに短期間である。なるべくなら皇宮に泊まってもらい、いつでも打ち合わせできるようにしないと間に合わなくなる可能性があった。
もちろん「寝る時」は厳しく分けられてしまうのだが、そのあたりのマナーを守れないマルスではなかった。
「それと、もう一つ」
「はい」
ここからマルスは「婚約者」にだけ話す形を取らねばならない。
「卒業後、直ちに結婚式となる」
「はい!」
サマンサは目を輝かせた。
侍女達は、嬉しそうな表情を作りながらも、今度こそ顔を引き攣らせた。
腹の中で「皇女様の結婚なのに時間がなさ過ぎだろ!」と悲鳴を上げていたのであった。
なにしろ「皇太子との結婚」である。
ドレスだけでも一年以上掛けて作り上げるモノだ。それに合わせて特別なジュエリーも靴も用意する。壁に飾られる花一つとっても特別な用意が必要だった。
ある程度の下準備がしてあるから良いようなモノの、やはり「卒業と同時」は侍女達にとっては悲鳴モノのスケジュールなのである。
マーサは『こうなった以上、事実上、マーウォルス様には皇宮に住んでいただかないと無理だわ』と判断し、この交渉をどのように進めるべきか、頭を動かしていた。
・・・・・・・・・・
その深夜、皇宮内に設けられた「自室」に入ったマルスが悲鳴を上げる番だった。
待っている間に、ぶるちゃんと連絡を付けていたチカから「大活躍」の話を聞いたからである。
そこでマルスは初めて父親達との会話の意味がわかってしまった。
村を襲うデイノニクスの群れを、姿も見せずに一瞬で全滅させる魔法使い。そんなヤバいヤツと向き合うのは、いくら父親や皇帝であっても嫌に決まってる。
『これ、ぜったいに、取り込んでおかないとヤバいって思われたからだよね』
そして、原作者としての知識が「物語の強制力か」と頭を悩ますことになったのである。
帝都の夜は、こうして明けていったのであった。
夜明けの光が満ちる大空を、ブルードラゴンは嬉しそうに飛んでいた。
♫ぼっく は ぶる~♪
♫はった ら き ♪も~ の~ さ~♪
♪ひっさしぶりに~ 役に たてたよ~♪
♫ほめて ♪もらっちゃった~♪
あまりの嬉しさゆえだろう。「ドラゴンの鼻歌」には、魔力がダダ漏れで載っていたのである。
その朝、魔力検知に長けた者は不思議なメロディーを聴いたという。
マルスは正式な婚約者であり、皇太子を予定される立場となったのだから。
「マーサ、マーウォルス様のお部屋をお願い」
「かしこまりました」
皇宮内のマーウォルスの待遇について、サマンサが自分に与えられた予算内で自由に指揮を執る権利が生まれたのである。
これは結婚後の家庭において内向きは女主人が全権を持つという慣習から来ている。
いわば「マーウォルス家内の女主人(仮)」とでも呼ぶべき立場だ。
女性の実家において、婚約者のお部屋を用意して「いつでもいらしてください」という形式を作るのは最上のおもてなしであるし、マナーでもある。
もちろん「フラリと現れる婚約者」などというものはありえないが、形式上、男性は「我が家のように思って」いつ婚約者の家に来ても良いし、時間と理由を作って泊まっていくのは、むしろ礼儀とされた。
義理の息子として、婚家と仲良くやりますよと言うパフォーマンスでもある。
そして、今回の場合、婚約発表の日程が例のないほどに短期間である。なるべくなら皇宮に泊まってもらい、いつでも打ち合わせできるようにしないと間に合わなくなる可能性があった。
もちろん「寝る時」は厳しく分けられてしまうのだが、そのあたりのマナーを守れないマルスではなかった。
「それと、もう一つ」
「はい」
ここからマルスは「婚約者」にだけ話す形を取らねばならない。
「卒業後、直ちに結婚式となる」
「はい!」
サマンサは目を輝かせた。
侍女達は、嬉しそうな表情を作りながらも、今度こそ顔を引き攣らせた。
腹の中で「皇女様の結婚なのに時間がなさ過ぎだろ!」と悲鳴を上げていたのであった。
なにしろ「皇太子との結婚」である。
ドレスだけでも一年以上掛けて作り上げるモノだ。それに合わせて特別なジュエリーも靴も用意する。壁に飾られる花一つとっても特別な用意が必要だった。
ある程度の下準備がしてあるから良いようなモノの、やはり「卒業と同時」は侍女達にとっては悲鳴モノのスケジュールなのである。
マーサは『こうなった以上、事実上、マーウォルス様には皇宮に住んでいただかないと無理だわ』と判断し、この交渉をどのように進めるべきか、頭を動かしていた。
・・・・・・・・・・
その深夜、皇宮内に設けられた「自室」に入ったマルスが悲鳴を上げる番だった。
待っている間に、ぶるちゃんと連絡を付けていたチカから「大活躍」の話を聞いたからである。
そこでマルスは初めて父親達との会話の意味がわかってしまった。
村を襲うデイノニクスの群れを、姿も見せずに一瞬で全滅させる魔法使い。そんなヤバいヤツと向き合うのは、いくら父親や皇帝であっても嫌に決まってる。
『これ、ぜったいに、取り込んでおかないとヤバいって思われたからだよね』
そして、原作者としての知識が「物語の強制力か」と頭を悩ますことになったのである。
帝都の夜は、こうして明けていったのであった。
夜明けの光が満ちる大空を、ブルードラゴンは嬉しそうに飛んでいた。
♫ぼっく は ぶる~♪
♫はった ら き ♪も~ の~ さ~♪
♪ひっさしぶりに~ 役に たてたよ~♪
♫ほめて ♪もらっちゃった~♪
あまりの嬉しさゆえだろう。「ドラゴンの鼻歌」には、魔力がダダ漏れで載っていたのである。
その朝、魔力検知に長けた者は不思議なメロディーを聴いたという。
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