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第3章 帝国学園 2年生編
第77話-2 夏の訪問、その傾向と対策
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しかし、本人の説明によれば、ごく浅い階層で「単独行の不利を悟って」引き換えしてきたのだという。
これを聞いたマーラウェルは烈火のごとく怒り、徹底的に叱りつけたのは事実だ。逆を言えば「それだけ」ですませたことに、本来、ガイウスは気付かねばならなかった。
ひょっとして、この後の父親の動きに気付いていれば、それはそれでご当主様の気持ちを変えていたのかもしれない。
結果的にガイウスは「いや~ 叱られただけですんだ! やっぱ、修行の旅に出ていたっていうのを、実は評価してくれちゃったんだね」とお気楽に考えてしまった。
父親は、密かに親族の中で「後継者」を探し始めたのはこの時からである。
息子としてはともかく「公爵家の後継者」としては完全に見限ったのである。
皮肉なことにガイウスの自由は、格段に大きくなった。後継者教育はなくなり、必要以上の家庭教師も来なくなった。義務としての社交も言われなくなる。
合わせて、嫡男としての予算は減らされたが「ガイア商会」の収入があるため、気にしなかったのだ。
片や見限り、片や評価されていると思い込む。
思えば、これがこの後の悲劇の始まりだったに違いない。
ともあれ「父親から評価されたから自由が大きくなった」と考えた嫡男としては、自身の婚約について話を進めたくなるのは、ある意味、当然であろう。
何しろ「元嫡男」は、既に結婚式の予定まで決まっているのであるし、高位貴族が在学中に婚約者を決めるのは、よくあること。むしろ「嫡男」という立場だと遅いとすら言えるのだ。
卒業と同時に非嫡男の結婚式に列席するとしたら、自分がエスコートすべきパートナーがいないのでは格好が付かないと思うのは当然だった。
『なぜか、父上が婚約の話を持ってこない以上、オレが自分で探すしかないんだ』
この場合、伯爵家の娘辺りから探すなら話は簡単であった。今までのやらかしはさておき、公爵家からの婚姻を断れる伯爵などいないのだから。
しかし「元嫡男」は王女と結婚するのである。嫡男としては、他に二人いる王女のどちらか、あるいはメディチ家と同等の家格から迎えたいと考えるのは貴族的な発想としては間違いではないのである。
ただ、その「内実」が決定的に不足しているだけではあったが……
ともあれ、ガイウスの考えでは「辺境伯領の娘」は、その美貌も家格も、そして貴族としての教養も己にふさわしい相手であると思えたのだ。
そういう思惑を乗せて、夏休みに入ると同時にシュールレアを招待したガイウス。
では、半ばガイウスの狙いを知りつつ招待されたシュールレアの思惑は、いかがなものであったのか?
悪辣孔明と呼ばれたはずの娘は、自分のために設えたような贅沢極まるガイウスの私室に招き入れられると、見たこともないほどに美しいカーテシーをしたのである。
「ガイウス様。実は、折り入って重要なお話をしたく、存じておりました。本日は、このような美しいお部屋にお招きくださって、心から感謝申し上げます」
心の色を一切見せない、その美しい唇。右の口角がクククッとわずかに上がった表情は、美しかった。
ガイウスがドキドキしてしまった時には、既に、勝負は見えていたのかも知れない。
これを聞いたマーラウェルは烈火のごとく怒り、徹底的に叱りつけたのは事実だ。逆を言えば「それだけ」ですませたことに、本来、ガイウスは気付かねばならなかった。
ひょっとして、この後の父親の動きに気付いていれば、それはそれでご当主様の気持ちを変えていたのかもしれない。
結果的にガイウスは「いや~ 叱られただけですんだ! やっぱ、修行の旅に出ていたっていうのを、実は評価してくれちゃったんだね」とお気楽に考えてしまった。
父親は、密かに親族の中で「後継者」を探し始めたのはこの時からである。
息子としてはともかく「公爵家の後継者」としては完全に見限ったのである。
皮肉なことにガイウスの自由は、格段に大きくなった。後継者教育はなくなり、必要以上の家庭教師も来なくなった。義務としての社交も言われなくなる。
合わせて、嫡男としての予算は減らされたが「ガイア商会」の収入があるため、気にしなかったのだ。
片や見限り、片や評価されていると思い込む。
思えば、これがこの後の悲劇の始まりだったに違いない。
ともあれ「父親から評価されたから自由が大きくなった」と考えた嫡男としては、自身の婚約について話を進めたくなるのは、ある意味、当然であろう。
何しろ「元嫡男」は、既に結婚式の予定まで決まっているのであるし、高位貴族が在学中に婚約者を決めるのは、よくあること。むしろ「嫡男」という立場だと遅いとすら言えるのだ。
卒業と同時に非嫡男の結婚式に列席するとしたら、自分がエスコートすべきパートナーがいないのでは格好が付かないと思うのは当然だった。
『なぜか、父上が婚約の話を持ってこない以上、オレが自分で探すしかないんだ』
この場合、伯爵家の娘辺りから探すなら話は簡単であった。今までのやらかしはさておき、公爵家からの婚姻を断れる伯爵などいないのだから。
しかし「元嫡男」は王女と結婚するのである。嫡男としては、他に二人いる王女のどちらか、あるいはメディチ家と同等の家格から迎えたいと考えるのは貴族的な発想としては間違いではないのである。
ただ、その「内実」が決定的に不足しているだけではあったが……
ともあれ、ガイウスの考えでは「辺境伯領の娘」は、その美貌も家格も、そして貴族としての教養も己にふさわしい相手であると思えたのだ。
そういう思惑を乗せて、夏休みに入ると同時にシュールレアを招待したガイウス。
では、半ばガイウスの狙いを知りつつ招待されたシュールレアの思惑は、いかがなものであったのか?
悪辣孔明と呼ばれたはずの娘は、自分のために設えたような贅沢極まるガイウスの私室に招き入れられると、見たこともないほどに美しいカーテシーをしたのである。
「ガイウス様。実は、折り入って重要なお話をしたく、存じておりました。本日は、このような美しいお部屋にお招きくださって、心から感謝申し上げます」
心の色を一切見せない、その美しい唇。右の口角がクククッとわずかに上がった表情は、美しかった。
ガイウスがドキドキしてしまった時には、既に、勝負は見えていたのかも知れない。
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