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第3章 帝国学園 2年生編
第98話-2 大宰公爵
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アモーア帝国に予期せず持ち上がってしまった大問題。
堕とすべきか、持ち上げられるべきか、それが問題だ。
もしもこの世界にハムレットがあれば、あの名セリフを皇帝は口にしたに違いない。それほどに悩みは深い。
どうしよう?
しかも、現実問題として「今のメディチ家には嫡男がいない」のだ。ピンチヒッター的に数名はリストアップされている。しかし、宿敵・アランビュー神聖国の状態を考えると、今は国家の非常事態とも言うべき時である。
筆頭公爵家を背負える人材は限られていた、というよりも最大の戦力である「龍神君」を引退させている余裕など、今の帝国にはなかった。
よって、皇帝は極めて現実的な対応であり、しかもマーラウェルに対しての「ご褒美」を渡すやり方を取った。
マルスの献言により祝賀の儀は当面行われないが、論功行賞だけは先に示す必要があった。特に皇太子の活躍に湧き立つ帝都民は待ち望んでいるのだから。
よって皇帝は布告を先にしたのである。見れば見るほどに魔術的な布告であった。
1 「メディチ・ド・マーラウェルのメディチ家家督継承権を没収する」
2「メディチ公爵家の家督決定権を皇太子に与えるものとする」
3「最大級の英雄となったマーウォルスを育て上げた功績により、メディチ・ド・マーラウェルを昇爵させ一代限りの大宰公爵(Grand Archduke)とする」
つまり、マーウォルスは「メディチ家の後継者を決める権利」を持ったということになる。自分の子どもでも孫でも、帝国筆頭公爵家の跡継ぎを自由に決めて良い。
同時に、マーラウェルは継承権を放棄しろという「罰」を受けつつも、実質的には実子に継承権を公の形で与えるという現実的なご褒美をもらう。
なおかつ、皇太子殿下の活躍に合わせて「父には名誉を」という形の太宰公爵となったのであった。
なお、帝都民は「太宰公爵」がなんなのかよく分からなかったし、貴族ですら意味が分からなかった。だだ庶民からしたら「公爵様に何か付いたんだし、きっとすごいんだろ」的に理解できた。貴族としては「筆頭公爵家と意味は変わらないではないか」と納得できる。
これなら帝都の盛り上がりに水を差すことがないのは当然の結果だった。
そして、帝都から遙か彼方。
魔の森のダンジョンに入ろうとしていたマルスは知ってしまった。
帝都での騒ぎと、皇帝の決定を正確に聞きだしてきたドラゴン達がマスターへと報告したからである。
「なんでそうなるの!」
またしても、厄介ごとが降りかかったとしか思えない、悲痛な叫びだ。
哀しげな悲鳴を聞いたドラゴンたちは心から同情したのだろう。
特に、参加を認めらたばかりのブラックとレッドは張り切っている。
「ちょっと行って、帝都を更地にして来ましょうか?」とブラック
「あたしだったら建物の中の生き物だけまっさらにできますよ」とレッド
「え……」
絶句したマスターにブルーは言った。
「さっき、野営地の周り五十キロの魔物を全部、狩っておきました」
二つの「提案」は退けられ、一つの「報告」は誉められたのであった。
ぼくは やるぜ!
ぼくは やるぜ!
ぼくは やるぜ!
ケッ……
チッ。
三者三様のドラゴンたちであった。
堕とすべきか、持ち上げられるべきか、それが問題だ。
もしもこの世界にハムレットがあれば、あの名セリフを皇帝は口にしたに違いない。それほどに悩みは深い。
どうしよう?
しかも、現実問題として「今のメディチ家には嫡男がいない」のだ。ピンチヒッター的に数名はリストアップされている。しかし、宿敵・アランビュー神聖国の状態を考えると、今は国家の非常事態とも言うべき時である。
筆頭公爵家を背負える人材は限られていた、というよりも最大の戦力である「龍神君」を引退させている余裕など、今の帝国にはなかった。
よって、皇帝は極めて現実的な対応であり、しかもマーラウェルに対しての「ご褒美」を渡すやり方を取った。
マルスの献言により祝賀の儀は当面行われないが、論功行賞だけは先に示す必要があった。特に皇太子の活躍に湧き立つ帝都民は待ち望んでいるのだから。
よって皇帝は布告を先にしたのである。見れば見るほどに魔術的な布告であった。
1 「メディチ・ド・マーラウェルのメディチ家家督継承権を没収する」
2「メディチ公爵家の家督決定権を皇太子に与えるものとする」
3「最大級の英雄となったマーウォルスを育て上げた功績により、メディチ・ド・マーラウェルを昇爵させ一代限りの大宰公爵(Grand Archduke)とする」
つまり、マーウォルスは「メディチ家の後継者を決める権利」を持ったということになる。自分の子どもでも孫でも、帝国筆頭公爵家の跡継ぎを自由に決めて良い。
同時に、マーラウェルは継承権を放棄しろという「罰」を受けつつも、実質的には実子に継承権を公の形で与えるという現実的なご褒美をもらう。
なおかつ、皇太子殿下の活躍に合わせて「父には名誉を」という形の太宰公爵となったのであった。
なお、帝都民は「太宰公爵」がなんなのかよく分からなかったし、貴族ですら意味が分からなかった。だだ庶民からしたら「公爵様に何か付いたんだし、きっとすごいんだろ」的に理解できた。貴族としては「筆頭公爵家と意味は変わらないではないか」と納得できる。
これなら帝都の盛り上がりに水を差すことがないのは当然の結果だった。
そして、帝都から遙か彼方。
魔の森のダンジョンに入ろうとしていたマルスは知ってしまった。
帝都での騒ぎと、皇帝の決定を正確に聞きだしてきたドラゴン達がマスターへと報告したからである。
「なんでそうなるの!」
またしても、厄介ごとが降りかかったとしか思えない、悲痛な叫びだ。
哀しげな悲鳴を聞いたドラゴンたちは心から同情したのだろう。
特に、参加を認めらたばかりのブラックとレッドは張り切っている。
「ちょっと行って、帝都を更地にして来ましょうか?」とブラック
「あたしだったら建物の中の生き物だけまっさらにできますよ」とレッド
「え……」
絶句したマスターにブルーは言った。
「さっき、野営地の周り五十キロの魔物を全部、狩っておきました」
二つの「提案」は退けられ、一つの「報告」は誉められたのであった。
ぼくは やるぜ!
ぼくは やるぜ!
ぼくは やるぜ!
ケッ……
チッ。
三者三様のドラゴンたちであった。
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