92 / 98
まさか
羽田空港でスーツケースの受け渡し場所に来た。貴之と勇吏がベルトコンベアから次々とスーツケースを下ろした。
「忘れ物はないな?」と貴之が言った。
「大丈夫よ」と世羅が言った。
「それじゃ、春奈ちゃんは僕達と」と貴之が言うと、春奈は貴之とトキノの近くに行った。
「瑞希」と世羅が言うと、
「はいはい」瑞希は世羅の隣に行った。
「冗談でしょ?」」一人の勇吏は困惑した顔で言った。
貴之はゆっくりと勇吏に近づいた。
「父さん!」勇吏は嬉しそうに言った。
「ほら」貴之は手を差し出した。手にはオリオンがあった。
「おれはトランシーバーじゃねぇぞ」とオリオンは言った。
「ごめん。今回だけ」と貴之は申し訳なさそうに言った。
「しょうがねぇな」
勇吏がオリオンを受け取ると、
「早く行きなさい」と貴之が言った。
「マジかよ」と勇吏は呆れた顔をして、出口へと行った。
すぐに、キャ~ッと歓声が聞こえた。
「マジか・・・」貴之は小さい声で言った。
「春奈」世羅はサングラスを出して春奈に渡した。既に自分は掛けている。
先に世羅と瑞希が並んで、出口を出た。そこには、4、50人の一般人の他に、10台くらいのテレビカメラと数十人の記者やレポーターがいた。
世羅達は離れて、その集団の脇を通り過ぎた。少し離れて、貴之達も通り過ぎ、人集りができている所で止まった。
「こちらへ」と空港職員と思われる制服姿の男性に言われて、勇吏はついて行った。集団も移動し、貴之達も移動した。
「20分でお願いします」と制服を着た男性は言い、壁を背にした勇吏に向かって、記者達の手が上がった。
「こういうの分からないんで、端からお願いします」
一番端の一人が、
「日本歴代2位の記録おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「一晩明けて、今のお気持ちは?」
「出来過ぎた記録だと思っているのは今も変わりません。これからは、マグレだとか、皆さんをガッカリさせないように、もっと頑張らないとならないな、とも思っています」
その後は、北海道のことや今後のことについて質問された。
そして、
「彼女にメッセージを」
勇吏は遠くにいる春奈を見ながら、
「My heart is always with you,no matter how far apart we are.」
「すいません、意味は?」
「どんなに離れていても、心はいつも一緒だよ、という意味です」
「おぉ~」と記者達から歓声が上がる。
「彼女が大学生だという書き込みがSNSに出ていますが、本当ですか?」という質問が出た。
やっぱり来たか。あ~ちゃんの心配も強ち笑い話で済みそうもないな、と勇吏は思った。
「彼女のことを話すつもりはありません」
「あの競技場で言ったメッセージについて、彼女は何か言っていましたか?」と別の記者が言ってきた。
これはダメだな、と勇吏は思って、
「僕の彼女のことについて、今後詮索するようなことは止めて下さい。彼女は普通の生活をしているんです。もちろんこの記録のことは喜んでくれてます。でも、そのせいで、彼女の生活が脅かされるんなら、僕は2度と日本では走りません。北海道の沿道やスタジアムで応援してくれたような素敵な方々が、日本には大勢いるのが分かったので、とても残念ですが」
記者達に明らかな動揺が走った。
「ファンの方々は残念に思うと」
「先ほども言いましたが、僕も残念です。でも、彼女は家族です。家族を守ることよりも、大切なことって何ですか?僕はオリンピックの金メダルよりも彼女の安全をもちろん選びます。それに、僕はアメリカ国籍も選べるので、日本代表ではなく、アメリカ代表として金メダルを目指すこともできます」
記者達に更なる動揺が走った。
「ご両親のどちらかがアメリカ人?」
「両親とも日本人です。父の仕事の関係で、そういう選択権を持っています」
「お父さんのご職業は?」
「これ以上は、プライベートなことは一切話しません」
「アメリカにはいつ帰るのですか?」
「こういうことになると空港の方々にも他のお客さん達にも迷惑がかかりそうなので、言いません」
記者達に手詰まり感のような微妙な空気が立ち込めた。
「そろそろよろしいでしょうか?」制服を着た男性が言った。
「最後に、マラソンファンにひと言」
勇吏はホッとして、
「僕は長い間地道に努力して、急にこんな夢みたいな記録が出せました。皆さんもいつか思いがけない結果が出ることがあるかもしれないので、もちろん無理のない範囲ですけど、頑張って続けて欲しいなと思います。また、暖かい声援を送ってくださる皆さんの前で走れる日を楽しみにしています」
「それでは終了とします」
勇吏は、
「ご迷惑をお掛けしました」と制服の男性に言った。
男性は少し驚いた顔をした後、
「いえ、とんでもありません。皆様が快適に空港を利用できようにするのが私の務めですから。それに家族を守るよりも大切なことって何ですか?と、おっしゃっていましたが、私達にとってみれば、皆様の安全です」と微笑みながら言った。
「ありがとうございます。空港の皆さんのお陰で、いつも無事に飛行機を利用できています。では」勇吏は歩き始めた。
しばらくして、
『オリオン』
『大丈夫だ。誰もついてきていない』
すると、勇吏の頭に帽子が被らされた。ビックリして振り向くと、貴之だった。
「ビックリしたぁ。帰ったの?」
「あぁ、必要だと思ってな」と伊達メガネを出した。
勇吏はメガネを掛けて見ると、皆スーツケースがなかった。
「僕の荷物も」
「お前の荷物は、レンタカーを借りてからだ」
レンタカーを借りて、運転席に貴之、助手席にトキノ、真ん中に世羅と瑞希、後ろに勇吏と春奈が座った。
「じゃあ、出発!」車は走り出し、勇吏は荷物をアメリカの家に置いてきた。
「忘れ物はないな?」と貴之が言った。
「大丈夫よ」と世羅が言った。
「それじゃ、春奈ちゃんは僕達と」と貴之が言うと、春奈は貴之とトキノの近くに行った。
「瑞希」と世羅が言うと、
「はいはい」瑞希は世羅の隣に行った。
「冗談でしょ?」」一人の勇吏は困惑した顔で言った。
貴之はゆっくりと勇吏に近づいた。
「父さん!」勇吏は嬉しそうに言った。
「ほら」貴之は手を差し出した。手にはオリオンがあった。
「おれはトランシーバーじゃねぇぞ」とオリオンは言った。
「ごめん。今回だけ」と貴之は申し訳なさそうに言った。
「しょうがねぇな」
勇吏がオリオンを受け取ると、
「早く行きなさい」と貴之が言った。
「マジかよ」と勇吏は呆れた顔をして、出口へと行った。
すぐに、キャ~ッと歓声が聞こえた。
「マジか・・・」貴之は小さい声で言った。
「春奈」世羅はサングラスを出して春奈に渡した。既に自分は掛けている。
先に世羅と瑞希が並んで、出口を出た。そこには、4、50人の一般人の他に、10台くらいのテレビカメラと数十人の記者やレポーターがいた。
世羅達は離れて、その集団の脇を通り過ぎた。少し離れて、貴之達も通り過ぎ、人集りができている所で止まった。
「こちらへ」と空港職員と思われる制服姿の男性に言われて、勇吏はついて行った。集団も移動し、貴之達も移動した。
「20分でお願いします」と制服を着た男性は言い、壁を背にした勇吏に向かって、記者達の手が上がった。
「こういうの分からないんで、端からお願いします」
一番端の一人が、
「日本歴代2位の記録おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「一晩明けて、今のお気持ちは?」
「出来過ぎた記録だと思っているのは今も変わりません。これからは、マグレだとか、皆さんをガッカリさせないように、もっと頑張らないとならないな、とも思っています」
その後は、北海道のことや今後のことについて質問された。
そして、
「彼女にメッセージを」
勇吏は遠くにいる春奈を見ながら、
「My heart is always with you,no matter how far apart we are.」
「すいません、意味は?」
「どんなに離れていても、心はいつも一緒だよ、という意味です」
「おぉ~」と記者達から歓声が上がる。
「彼女が大学生だという書き込みがSNSに出ていますが、本当ですか?」という質問が出た。
やっぱり来たか。あ~ちゃんの心配も強ち笑い話で済みそうもないな、と勇吏は思った。
「彼女のことを話すつもりはありません」
「あの競技場で言ったメッセージについて、彼女は何か言っていましたか?」と別の記者が言ってきた。
これはダメだな、と勇吏は思って、
「僕の彼女のことについて、今後詮索するようなことは止めて下さい。彼女は普通の生活をしているんです。もちろんこの記録のことは喜んでくれてます。でも、そのせいで、彼女の生活が脅かされるんなら、僕は2度と日本では走りません。北海道の沿道やスタジアムで応援してくれたような素敵な方々が、日本には大勢いるのが分かったので、とても残念ですが」
記者達に明らかな動揺が走った。
「ファンの方々は残念に思うと」
「先ほども言いましたが、僕も残念です。でも、彼女は家族です。家族を守ることよりも、大切なことって何ですか?僕はオリンピックの金メダルよりも彼女の安全をもちろん選びます。それに、僕はアメリカ国籍も選べるので、日本代表ではなく、アメリカ代表として金メダルを目指すこともできます」
記者達に更なる動揺が走った。
「ご両親のどちらかがアメリカ人?」
「両親とも日本人です。父の仕事の関係で、そういう選択権を持っています」
「お父さんのご職業は?」
「これ以上は、プライベートなことは一切話しません」
「アメリカにはいつ帰るのですか?」
「こういうことになると空港の方々にも他のお客さん達にも迷惑がかかりそうなので、言いません」
記者達に手詰まり感のような微妙な空気が立ち込めた。
「そろそろよろしいでしょうか?」制服を着た男性が言った。
「最後に、マラソンファンにひと言」
勇吏はホッとして、
「僕は長い間地道に努力して、急にこんな夢みたいな記録が出せました。皆さんもいつか思いがけない結果が出ることがあるかもしれないので、もちろん無理のない範囲ですけど、頑張って続けて欲しいなと思います。また、暖かい声援を送ってくださる皆さんの前で走れる日を楽しみにしています」
「それでは終了とします」
勇吏は、
「ご迷惑をお掛けしました」と制服の男性に言った。
男性は少し驚いた顔をした後、
「いえ、とんでもありません。皆様が快適に空港を利用できようにするのが私の務めですから。それに家族を守るよりも大切なことって何ですか?と、おっしゃっていましたが、私達にとってみれば、皆様の安全です」と微笑みながら言った。
「ありがとうございます。空港の皆さんのお陰で、いつも無事に飛行機を利用できています。では」勇吏は歩き始めた。
しばらくして、
『オリオン』
『大丈夫だ。誰もついてきていない』
すると、勇吏の頭に帽子が被らされた。ビックリして振り向くと、貴之だった。
「ビックリしたぁ。帰ったの?」
「あぁ、必要だと思ってな」と伊達メガネを出した。
勇吏はメガネを掛けて見ると、皆スーツケースがなかった。
「僕の荷物も」
「お前の荷物は、レンタカーを借りてからだ」
レンタカーを借りて、運転席に貴之、助手席にトキノ、真ん中に世羅と瑞希、後ろに勇吏と春奈が座った。
「じゃあ、出発!」車は走り出し、勇吏は荷物をアメリカの家に置いてきた。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに
家紋武範
恋愛
となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。
ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
俺をガチ推ししていた鬼姫と付き合うことになりました ~鬼ヶ島に行ったら巨乳で天然すぎる彼女ができた件~
月城琴晴
恋愛
おとぎの国で流行っているSNS
――「美女革命ランキング」。
そこには絶世の美女たちがランキング形式で掲載されている。
団子屋の青年・桃太郎は、ランキング三位の鬼姫が気になり、
友人たち(犬・猿・雉)と一緒に鬼ヶ島へ行くことにした。
「どうせ写真は盛ってるだろ?」
そう思っていたのだが――
実際に会った鬼姫は
想像以上の美人で、しかも巨乳。
さらに。
「桃太郎様、ずっとファンでした。」
まさかのガチ推しだった。
そのまま流れで――
付き合うことに。
しかも鬼姫の部屋には桃太郎のポスターが貼られ、
恋愛シミュレーションまで済んでいるらしい。
天然で可愛すぎる鬼姫と、
初彼女に戸惑う桃太郎。
これは――
俺を推していた鬼姫が彼女になったラブコメである。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
なぜかラブコメの主人公に転生したら幼馴染じゃなくて、友達のお母さんから好かれまくるし、僕の体を狙ってくる
普通
恋愛
ラブコメの主人公に転生した少年。それなのに幼馴染や後輩や先輩たちに好かれるよりも、その母親たちに好かれてしまっている。こんなはずじゃないのに、母親たちは僕の遺伝子を狙ってくる。
もうどうすればいいんだ!!!
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。