旦那様は、パーフェクト高校生

ぱるゆう

文字の大きさ
124 / 165

詩織と優一と師範 3

しおりを挟む
「詩織ちゃん、今日はありがとう。最後もよくできてた」師範は楽しそうに言った。

「久しぶりにやったけど、お兄ちゃんとなら息ぴったりにできた」詩織も笑顔で言った。

「おいおい、いい加減、お兄ちゃんは止めてくれよ」

「フフフッ、いいじゃん。私にはずっとお兄ちゃんなんだから」詩織は嬉しそうに言った。

「全くしょうがないな。詩織ちゃんは。まぁ、先生はちゃんとやってるみたいだから、安心したよ」

「あっ!」と詩織は言って、すっかり忘れていたことを思い出した。

ゆっくりと振り返ると、やっぱり不貞腐れた顔があった。

「じゃあ、着替えてきます」と詩織は奥へと行った。




詩織がいなくなった後の師範の所に、優一が来た。

「師範、ありがとうございました」

「退屈だっただろ」

「いえ、技から逃げて、相手に掛けかえるのは同じことです。やっぱり反復練習って大事なんだと思いました」

「まぁ、格闘技とは違って、日常生活の中での出来事を考えてるからね。普通なら、服を掴まれたら、反射的に身を引いて離そうとしてしまう。それだと後ろに倒れたり、相手の身体を近くに引き込んでしまう。それを回避する方法の一つだよ」

「横に飛ぶのも?」

「あれは、手首の関節を絞められるのを逃げる動作だよ。格闘技みたいに負傷覚悟でやらないんだ。自分は無傷で終わらせる。あわよくば相手の手首を絞め返すこともできるし、投げることもできる」

「先を考えてるんですね。僕は試合はしないので、そこまで考えて練習してないので」

「なんだ。試合してないのか?」

「えぇ、ウエイトトレーニングだけだと、目的のない身体になってしまうので、使える身体にしたくて、やってるんです」

「他にスポーツは?」

「昔はやってましたけど、今は本格的にはやってません」

「そっか、なんか勿体ないような気がするな。その身長で、その体なら、何でもやれそうな気がするけど」

「見かけ倒しです。結局、全部中途半端になってしまって」

「まぁ、また気が向いたら来てよ」

「はい、ありがとうございます」と優一は会釈をした。

師範も着替えるためか控室の方に言った。

優一は、話しやすいと思った。自分の意見を押しつけるわけでもなく、ちゃんとこっちの話も聞いて、話を進めてくれる。こういう人に相談したら、自分の考えがまとまって、いい結論に導いてくれるような気がした。




詩織が戻ってきた。

「また余計なこと言ってないでしょうね?」詩織は眉間にシワを寄せた。

「そんなことより、サトシって師範のことなの?」

「はぁ?」詩織は顔が真っ赤になって、

「何で名前知ってるのよ!」詩織は怒りながら言った。

「もしかしてと思って・・・」優一は後ずさりながら言った。

「とにかく出るわよ!」詩織は優一を置いて出口に向かって早歩きで歩いた。

「待ってよ。し~ちゃん!」




喫茶店に入り、注文を済ませた。

「サトシと師範は関係ない」と詩織は言った。

「ホントに?」

「嘘言ったってしょうがないでしょ」詩織は呆れながら言った。

「それはそうだけど」

「師範は、私のお父さんが師範をやってた頃に通ってたの。だから、私がヨチヨチ歩きの頃から、私のこと知ってる。結婚してて子供もいるし。それに歳も離れ過ぎてるわよ」

「僕とし~ちゃんだって」

「普通は、これだけ離れてたら、恋愛対象にならないの」

「それは、し~ちゃんが魅力的なんだから、しょうがないだろ」

「はいはい。こういう所で、よく恥ずかしくなく言えるわよね」詩織はまた呆れた。

「事実だし」

「分かった、分かったわよ。とにかく名前で選んだわけじゃないから。ただの偶然」

「分かった」優一は少し不満だったが、そう言った。

「あっ、そうそう、野球の大会なんだけど」

「何?」

「ピッチャーよね?」

「分かんないけど、投げることはあると思う」

「フフフッ。ねぇ、来週、キャッチボールしよっか?」詩織は楽しそうに言った。

「えっ!し~ちゃん、できるの?」

「小学生の時、兄達と近くの野球倶楽部に入ってたから」

「そうなんだ」

「まぁ、必要ないと思うけど、私の必殺技を教えてあげる」

「必殺技?何?」

「来週のお楽しみよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる

鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳―― それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。 公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。 だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、 王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。 政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。 紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが―― 魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、 まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。 「……私が女王? 冗談じゃないわ」 回避策として動いたはずが、 誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。 しかも彼は、 幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた―― 年を取らぬ姿のままで。 永遠に老いない少女と、 彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。 王妃になどなる気はない。 けれど、逃げ続けることももうできない。 これは、 歴史の影に生きてきた少女が、 はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。 ざまぁも陰謀も押し付けない。 それでも―― この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

憧れのあなたとの再会は私の運命を変えました~ハッピーウェディングは御曹司との偽装恋愛から始まる~

けいこ
恋愛
15歳のまだ子どもだった私を励まし続けてくれた家庭教師の「千隼先生」。 私は密かに先生に「憧れ」ていた。 でもこれは、恋心じゃなくただの「憧れ」。 そう思って生きてきたのに、10年の月日が過ぎ去って25歳になった私は、再び「千隼先生」に出会ってしまった。 久しぶりに会った先生は、男性なのにとんでもなく美しい顔立ちで、ありえない程の大人の魅力と色気をまとってた。 まるで人気モデルのような文句のつけようもないスタイルで、その姿は周りを魅了して止まない。 しかも、高級ホテルなどを世界展開する日本有数の大企業「晴月グループ」の御曹司だったなんて… ウエディングプランナーとして働く私と、一緒に仕事をしている仲間達との関係、そして、家族の絆… 様々な人間関係の中で進んでいく新しい展開は、毎日何が起こってるのかわからないくらい目まぐるしくて。 『僕達の再会は…本当の奇跡だ。里桜ちゃんとの出会いを僕は大切にしたいと思ってる』 「憧れ」のままの存在だったはずの先生との再会。 気づけば「千隼先生」に偽装恋愛の相手を頼まれて… ねえ、この出会いに何か意味はあるの? 本当に…「奇跡」なの? それとも… 晴月グループ LUNA BLUホテル東京ベイ 経営企画部長 晴月 千隼(はづき ちはや) 30歳 × LUNA BLUホテル東京ベイ ウエディングプランナー 優木 里桜(ゆうき りお) 25歳 うららかな春の到来と共に、今、2人の止まった時間がキラキラと鮮やかに動き出す。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~

けいこ
恋愛
密かに想いを寄せていたあなたとのとろけるような一夜の出来事。 好きになってはいけない人とわかっていたのに… 夢のような時間がくれたこの大切な命。 保育士の仕事を懸命に頑張りながら、可愛い我が子の子育てに、1人で奔走する毎日。 なのに突然、あなたは私の前に現れた。 忘れようとしても決して忘れることなんて出来なかった、そんな愛おしい人との偶然の再会。 私の運命は… ここからまた大きく動き出す。 九条グループ御曹司 副社長 九条 慶都(くじょう けいと) 31歳 × 化粧品メーカー itidouの長女 保育士 一堂 彩葉(いちどう いろは) 25歳

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

処理中です...