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どこの組だ?
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「この店は高い金取る割には虫が入ってるのか?」と店の中で騒いでいる大きな声が聞こえた。
僕は他の板前と目を合わせてから、1人で座敷に駆けつけた。
「申し訳ございませんが、お代は結構ですので、お引き取りください」と僕は少し頭を下げた。
「はぁ?こっちは不快な思いをしたんだ。分かってるんだろ?」
「今すぐにお引き取りください」と頭を下げながら僕は繰り返した。
「だ、か、らぁ、こっちはせっかく、こちらの方に楽しく食事をしてもらおうと思ったら、こんなことされたんだ。そっちの誠意を見せろって言ってんだよ」
「お引き取りください」
「お前じゃ話にならねぇ、責任者連れてこい」
「お引き取りください」姿勢は変えず、再び言った。
すると、
「何だ?高級料理店だって聞いたのに、騒がしいな」と男が入ってきた。
顔を上げると、僕は目を見開いた。
「加藤さん!」
「何だ、坊主、ここにいたのか?」
「どうして?」
「こっちでな、大がかりな手入れがあって、呼び出されたんだ。ニュースにもなってただろ」
「えっ、もしかして、暴力団の?」
「そうだ。今、そっち系の所にいる」
「何だ、お前!」
「お前、話聞いてなかったのか?どこの組か知らねぇが、素直に金払って帰らねぇんなら、お前んとこの会長をしょっぴくぞ。そうなったら、お前達は半殺しじゃ済まねえだろうな」
「警察!」
「おぅ、文句があるなら、警視庁の暴対におるから、いつでも来い」
「おい、行くぞ」と2人は出ていこうとした。
加藤はついて行って、金を払うまで見届けた。
「加藤だ!よく覚えとけ!次見つけたら、会長しょっぴくからな」
2人は何も言わずに帰って行った。
「加藤さん、ありがとうございます」僕は深く頭を下げた。
「気にするな。でも、大層な店でビックリした。まさかこんな所で働いてるとはな」
「はい、オーナーと板長にはとても良くしていただいて」
「そうか、それは良かった」
そこに、
「ありがとうございました」とオーナーが現れた。
「いえ、これも仕事ですから」加藤は真面目な顔で言った。
「ぜひ、お礼をさせていただきたいと思いますので、こちらへ」
「あなたは?」
「この店のオーナーをやっております」
「あぁ、そうですか。いえ、今日は帰ります。坊主のこと」と言って、加藤さんはチラリと僕を見た。
「よろしくお願いします」と加藤は少し頭を下げて、店の出口を出ていった。
「あのぉ」
引き留めようとしたオーナーを振り返らず、加藤は門を出て行った。
「坊主?」オーナーは不思議そうに言った。
「すいません、オーナー。僕が昔お世話になった方で」
「あぁ、そうなのか。次来たら絶対に教えてくれ」
「はい、必ず」
オーナーが各部屋に騒がしくなったことを詫びて回っている姿を見た。
「騒いだ2人は、どうやって店に来たんだ?」と僕は不思議に思って受付の人に聞いてみた。
「棚橋さんのご紹介と予約に書いてありますね」
「電話番号は?」
「棚橋さんで間違いありません」
「そうなんだ。ありがとう」
棚橋さん?僕が来てからは聞いたことがないな。昔の常連さんなのかな?
仕事が終わって店を出ると、
「よう、坊主」と声がかかった。
「加藤さん、こんな時間まで待っていてくれたんですか?」
「いや、ついさっきまで他の店で飲んでた。そろそろかと思ってな。実はお前に大事な話があって、来たんだ」
「大事な話?分かりました。ここでは何ですから。どこにいたんですか?」
「この先の焼き鳥屋だ」
「分かりました」僕は房江さんとのスナックに行った。
「あら、いらっしゃい。若ちゃん、房ちゃんは?」
「今日は別で」僕は中に入り、加藤さんも中に入った。
「あら?いい男じゃないの」
ママの真奈美さんは、ニッコリと微笑んだ。
「なんだ、お前、こんな所に通ってるのか?」と加藤は言った。
「こんな所ですけど、どうぞ」と真奈美さんは道を開けた。
加藤さんはこめかみをかいた。
僕は店の中でも静かなカウンターの奥を選んで座った。店内が見えるように加藤を奥に座らせて、僕は手前に座った。
「店の女の人に誘われて、たまにくるんです。女の人って言っても、母親くらいの年齢の人ですけど」
「そんな相手とまさかお前?」と加藤はワザと驚いた顔をした。
「フフフッ。そういう関係は全くありません」僕は笑顔で言った。
真奈美さんが来たので、飲み物を頼んだ。
「女の子は?」と真奈美さんは言った。
「今日は話したいので」
「分かった」真奈美は店の奥に行った。
加藤は店内を見回した。
「女の子なんて、どこにいるんだ?」と小さい声で言った。
「止めてください。真奈美さんは耳がいいんです」と僕も小声で言った。
「そうなのか?気をつけるよ。それでな、話と言うのは・・・」
加藤は話しづらそうな顔をした。
「加藤さんでも、そんな顔するんですね」
「まぁな。あっ、それより、坊主、大人になったな」
「そうですか?僕は全く成長してる感じがしないんですけど」
「さっきのチンピラの対応は完璧だった。自分たちのミスを認めず、ひたすら帰るように言ってたな」
「見てたんですか?早く助けてくださいよ」
「また手を出すんじゃないかと思ってな」加藤はタバコを出して、火をつけた。
「加藤さんと約束しましたから」
「あぁ、ちゃんと守れてた。もう坊主なんて言えないな」
「坊主でいいです。調子が狂いますよ」
「そうか。でもな、そうも言ってられなくなったんだ。お兄ちゃん」
僕は他の板前と目を合わせてから、1人で座敷に駆けつけた。
「申し訳ございませんが、お代は結構ですので、お引き取りください」と僕は少し頭を下げた。
「はぁ?こっちは不快な思いをしたんだ。分かってるんだろ?」
「今すぐにお引き取りください」と頭を下げながら僕は繰り返した。
「だ、か、らぁ、こっちはせっかく、こちらの方に楽しく食事をしてもらおうと思ったら、こんなことされたんだ。そっちの誠意を見せろって言ってんだよ」
「お引き取りください」
「お前じゃ話にならねぇ、責任者連れてこい」
「お引き取りください」姿勢は変えず、再び言った。
すると、
「何だ?高級料理店だって聞いたのに、騒がしいな」と男が入ってきた。
顔を上げると、僕は目を見開いた。
「加藤さん!」
「何だ、坊主、ここにいたのか?」
「どうして?」
「こっちでな、大がかりな手入れがあって、呼び出されたんだ。ニュースにもなってただろ」
「えっ、もしかして、暴力団の?」
「そうだ。今、そっち系の所にいる」
「何だ、お前!」
「お前、話聞いてなかったのか?どこの組か知らねぇが、素直に金払って帰らねぇんなら、お前んとこの会長をしょっぴくぞ。そうなったら、お前達は半殺しじゃ済まねえだろうな」
「警察!」
「おぅ、文句があるなら、警視庁の暴対におるから、いつでも来い」
「おい、行くぞ」と2人は出ていこうとした。
加藤はついて行って、金を払うまで見届けた。
「加藤だ!よく覚えとけ!次見つけたら、会長しょっぴくからな」
2人は何も言わずに帰って行った。
「加藤さん、ありがとうございます」僕は深く頭を下げた。
「気にするな。でも、大層な店でビックリした。まさかこんな所で働いてるとはな」
「はい、オーナーと板長にはとても良くしていただいて」
「そうか、それは良かった」
そこに、
「ありがとうございました」とオーナーが現れた。
「いえ、これも仕事ですから」加藤は真面目な顔で言った。
「ぜひ、お礼をさせていただきたいと思いますので、こちらへ」
「あなたは?」
「この店のオーナーをやっております」
「あぁ、そうですか。いえ、今日は帰ります。坊主のこと」と言って、加藤さんはチラリと僕を見た。
「よろしくお願いします」と加藤は少し頭を下げて、店の出口を出ていった。
「あのぉ」
引き留めようとしたオーナーを振り返らず、加藤は門を出て行った。
「坊主?」オーナーは不思議そうに言った。
「すいません、オーナー。僕が昔お世話になった方で」
「あぁ、そうなのか。次来たら絶対に教えてくれ」
「はい、必ず」
オーナーが各部屋に騒がしくなったことを詫びて回っている姿を見た。
「騒いだ2人は、どうやって店に来たんだ?」と僕は不思議に思って受付の人に聞いてみた。
「棚橋さんのご紹介と予約に書いてありますね」
「電話番号は?」
「棚橋さんで間違いありません」
「そうなんだ。ありがとう」
棚橋さん?僕が来てからは聞いたことがないな。昔の常連さんなのかな?
仕事が終わって店を出ると、
「よう、坊主」と声がかかった。
「加藤さん、こんな時間まで待っていてくれたんですか?」
「いや、ついさっきまで他の店で飲んでた。そろそろかと思ってな。実はお前に大事な話があって、来たんだ」
「大事な話?分かりました。ここでは何ですから。どこにいたんですか?」
「この先の焼き鳥屋だ」
「分かりました」僕は房江さんとのスナックに行った。
「あら、いらっしゃい。若ちゃん、房ちゃんは?」
「今日は別で」僕は中に入り、加藤さんも中に入った。
「あら?いい男じゃないの」
ママの真奈美さんは、ニッコリと微笑んだ。
「なんだ、お前、こんな所に通ってるのか?」と加藤は言った。
「こんな所ですけど、どうぞ」と真奈美さんは道を開けた。
加藤さんはこめかみをかいた。
僕は店の中でも静かなカウンターの奥を選んで座った。店内が見えるように加藤を奥に座らせて、僕は手前に座った。
「店の女の人に誘われて、たまにくるんです。女の人って言っても、母親くらいの年齢の人ですけど」
「そんな相手とまさかお前?」と加藤はワザと驚いた顔をした。
「フフフッ。そういう関係は全くありません」僕は笑顔で言った。
真奈美さんが来たので、飲み物を頼んだ。
「女の子は?」と真奈美さんは言った。
「今日は話したいので」
「分かった」真奈美は店の奥に行った。
加藤は店内を見回した。
「女の子なんて、どこにいるんだ?」と小さい声で言った。
「止めてください。真奈美さんは耳がいいんです」と僕も小声で言った。
「そうなのか?気をつけるよ。それでな、話と言うのは・・・」
加藤は話しづらそうな顔をした。
「加藤さんでも、そんな顔するんですね」
「まぁな。あっ、それより、坊主、大人になったな」
「そうですか?僕は全く成長してる感じがしないんですけど」
「さっきのチンピラの対応は完璧だった。自分たちのミスを認めず、ひたすら帰るように言ってたな」
「見てたんですか?早く助けてくださいよ」
「また手を出すんじゃないかと思ってな」加藤はタバコを出して、火をつけた。
「加藤さんと約束しましたから」
「あぁ、ちゃんと守れてた。もう坊主なんて言えないな」
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