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美弥
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「えっ?辞めちゃうの?」と真由美が残念そうに言って、カウンターの向こう側に来た。
相変わらず耳は良いらしい。
「妹が一人で実家の店を切り盛りしてるんです。一人だと子供も産めません」
「そっかぁ、寂しくなるわ」
「房江さんには、まだ内緒にしてくださいね」
「大丈夫、今はコンプライアンスの時代だから」
「フフフッ、そうですね」
「何か食べる?」
「はい」
それから、カラオケも歌い、初めて閉店までいた。
「あら、珍しい」と真由美さんは意味ありげな顔をした。
「たまには」
「美弥ちゃん、今日はもうあがっていいから、若ちゃんを送ってあげて」
「えっ!そんないいですよ」若菜は慌てた。
「初日からこき使うのもねぇ。他のお客さん達にも気に入ってもらえたみたいだから、辞められても困るし」と真由美はもっともらしいことを言った。
若菜と本物の美弥は店を出た。朝日が昇って来ていた。
「お疲れ様、美弥ちゃん」
「明るい所だと恥ずかしい」
「何言ってるんだよ。昔と変わらず可愛いよ」と若菜は気分が良かったので、つい言ってしまった。
「えっ?」美弥は驚いた顔をした。
「あっ!ごめん。今日、もう昨日か。昨日、色んなことがあり過ぎて頭が上手く働かなくて、なんかお世辞とか言えなくて」
「フフフッ、若菜くん、言ってることが逆だよ。私のこと可愛いって言っておいて、お世辞が言えないって、変だよ」懐かしい美弥の笑顔だったが、
「えっ?僕、可愛いなんて言った?」若菜の顔は一気に赤くなった。
「言った。はっきり。ちょっとビックリした。そういうこと言わないタイプだと思ってたから。もしかして、今は女の子に言いまくってるのかしら?」
「そんなことない!全然そう思うことないから」
「じゃあ、私だけ?」
「そうだよ・・・」
「ふ~ん、ありがと。元気出た」
「あれ?そう言えば結婚して、子供いるんじゃ?昔の年賀状で写真が」
一気に美弥の顔が曇った。
「ごめん、詮索するつもりはなかったんだ」また若菜は慌てた。
「旦那がリストラされて。その後、新しい仕事を見つけてきても、すぐに辞めちゃって。だから、ずっと私が働いてたの。それでも育児をしてくれれば、昼間の仕事もできるんだけど、育児も全然ダメで。とうとう家を出てきちゃった」
「子供は?」
「慣れてるから、一人でアパートにいる」
「そうなんだ何歳?」
「5歳の男の子」
「そっか。家まで送るよ」
「えっ!いいよ」
「僕が話したいから」
「そう?」2人は歩き始めた。若菜のアパートとは逆の方だった。
「若菜くん、かっこよくなったね。高校の時もかっこよかったけど。大人の男って感じになった」
「そう?自分では高校から全く成長してない気がするんだけど」
「いきなりいなくなったから、みんなでビックリしたんだよ」
「ごめん。そこまで気が回らなかった。家出同然だったから」
「あの噂のこと?」
「うん、そう。家に迷惑かけたくなくて」
「でも、板前さんやってるんだ?」
「血筋なのかもしれないけど、他のことは何やってもダメで」
「不器用なのは変わってないんだね」
「自分でも嫌になるよ」
「ボクシングは?」
「あれから全然やってないし、見たりもしてない」
「三隅先生、本当に残念がってたわよ」
「本当に悪いことしちゃった。部の皆んなにも」
「みんな、若菜くんが悪いなんて思ってないから」
「そうだと嬉しいけど」
「ここが私のアパート」と美弥が止まった。
若菜が見ると、ドアが少し開いて、男の子が顔を出し、美弥の元に駆けてきた。
「ママ」
「こぉら、ちゃんと寝てたの?」
男の子は頷いて、
「ママが帰ってくる時間だから、目が覚めた」
そこでやっと若菜のことに気づいたらしく、
「誰?」と美弥の後ろに隠れた。
「ママのお友達。とっても強いのよぉ」
「えっ?」と若菜は思って、咄嗟に昔見たヒーローの変身ポーズをした。
「へん~しん」
そして、
「名前は?」男の子に向かって若菜は言った。
「悟史・・・」
「ほら、悟史くんも変身だ!」
悟史は前に出てきて、
「へん~しん!」とポーズを決めた。
若菜は悟史を抱き上げて、高い高いをした。
「ほら、悟史くん。変身したから、こんなに高くジャンプした!」
「キャハハハハッ」と悟史は声を上げた。
「よし、悟史くん、合体だ!」と肩車をした。
「凄~い!合体して、高くなった」と喜ぶ声が聞こえた。
「やっぱり男の人は力があるからいいわね。私なんか抱っこも辛いのに」
「ママより高~い」
「ほら、悟史。お兄ちゃん、疲れちゃうからオシマイ」
「もっとおっ!」
「大丈夫だよ」と若菜は言った。
「子供好きなんだ?」
「ずっと妹の面倒を見てたからね」
「悟史、ご飯にしよ」
「うん!」
若菜は悟史を下ろした。
「お兄ちゃん、またやってくれる?」
「もちろん。約束する。それまでママと仲良くするんだよ」
「うん!」
「若菜くん、ありがとう。気をつけてね」
「うん」と若菜は悟史に手を振った。
悟史も笑顔で手を振りながら、部屋の中に入っていった。
若菜は時間を確認しようとスマホを見た。
「うわっ!」ユリから何回も着信があった。
相変わらず耳は良いらしい。
「妹が一人で実家の店を切り盛りしてるんです。一人だと子供も産めません」
「そっかぁ、寂しくなるわ」
「房江さんには、まだ内緒にしてくださいね」
「大丈夫、今はコンプライアンスの時代だから」
「フフフッ、そうですね」
「何か食べる?」
「はい」
それから、カラオケも歌い、初めて閉店までいた。
「あら、珍しい」と真由美さんは意味ありげな顔をした。
「たまには」
「美弥ちゃん、今日はもうあがっていいから、若ちゃんを送ってあげて」
「えっ!そんないいですよ」若菜は慌てた。
「初日からこき使うのもねぇ。他のお客さん達にも気に入ってもらえたみたいだから、辞められても困るし」と真由美はもっともらしいことを言った。
若菜と本物の美弥は店を出た。朝日が昇って来ていた。
「お疲れ様、美弥ちゃん」
「明るい所だと恥ずかしい」
「何言ってるんだよ。昔と変わらず可愛いよ」と若菜は気分が良かったので、つい言ってしまった。
「えっ?」美弥は驚いた顔をした。
「あっ!ごめん。今日、もう昨日か。昨日、色んなことがあり過ぎて頭が上手く働かなくて、なんかお世辞とか言えなくて」
「フフフッ、若菜くん、言ってることが逆だよ。私のこと可愛いって言っておいて、お世辞が言えないって、変だよ」懐かしい美弥の笑顔だったが、
「えっ?僕、可愛いなんて言った?」若菜の顔は一気に赤くなった。
「言った。はっきり。ちょっとビックリした。そういうこと言わないタイプだと思ってたから。もしかして、今は女の子に言いまくってるのかしら?」
「そんなことない!全然そう思うことないから」
「じゃあ、私だけ?」
「そうだよ・・・」
「ふ~ん、ありがと。元気出た」
「あれ?そう言えば結婚して、子供いるんじゃ?昔の年賀状で写真が」
一気に美弥の顔が曇った。
「ごめん、詮索するつもりはなかったんだ」また若菜は慌てた。
「旦那がリストラされて。その後、新しい仕事を見つけてきても、すぐに辞めちゃって。だから、ずっと私が働いてたの。それでも育児をしてくれれば、昼間の仕事もできるんだけど、育児も全然ダメで。とうとう家を出てきちゃった」
「子供は?」
「慣れてるから、一人でアパートにいる」
「そうなんだ何歳?」
「5歳の男の子」
「そっか。家まで送るよ」
「えっ!いいよ」
「僕が話したいから」
「そう?」2人は歩き始めた。若菜のアパートとは逆の方だった。
「若菜くん、かっこよくなったね。高校の時もかっこよかったけど。大人の男って感じになった」
「そう?自分では高校から全く成長してない気がするんだけど」
「いきなりいなくなったから、みんなでビックリしたんだよ」
「ごめん。そこまで気が回らなかった。家出同然だったから」
「あの噂のこと?」
「うん、そう。家に迷惑かけたくなくて」
「でも、板前さんやってるんだ?」
「血筋なのかもしれないけど、他のことは何やってもダメで」
「不器用なのは変わってないんだね」
「自分でも嫌になるよ」
「ボクシングは?」
「あれから全然やってないし、見たりもしてない」
「三隅先生、本当に残念がってたわよ」
「本当に悪いことしちゃった。部の皆んなにも」
「みんな、若菜くんが悪いなんて思ってないから」
「そうだと嬉しいけど」
「ここが私のアパート」と美弥が止まった。
若菜が見ると、ドアが少し開いて、男の子が顔を出し、美弥の元に駆けてきた。
「ママ」
「こぉら、ちゃんと寝てたの?」
男の子は頷いて、
「ママが帰ってくる時間だから、目が覚めた」
そこでやっと若菜のことに気づいたらしく、
「誰?」と美弥の後ろに隠れた。
「ママのお友達。とっても強いのよぉ」
「えっ?」と若菜は思って、咄嗟に昔見たヒーローの変身ポーズをした。
「へん~しん」
そして、
「名前は?」男の子に向かって若菜は言った。
「悟史・・・」
「ほら、悟史くんも変身だ!」
悟史は前に出てきて、
「へん~しん!」とポーズを決めた。
若菜は悟史を抱き上げて、高い高いをした。
「ほら、悟史くん。変身したから、こんなに高くジャンプした!」
「キャハハハハッ」と悟史は声を上げた。
「よし、悟史くん、合体だ!」と肩車をした。
「凄~い!合体して、高くなった」と喜ぶ声が聞こえた。
「やっぱり男の人は力があるからいいわね。私なんか抱っこも辛いのに」
「ママより高~い」
「ほら、悟史。お兄ちゃん、疲れちゃうからオシマイ」
「もっとおっ!」
「大丈夫だよ」と若菜は言った。
「子供好きなんだ?」
「ずっと妹の面倒を見てたからね」
「悟史、ご飯にしよ」
「うん!」
若菜は悟史を下ろした。
「お兄ちゃん、またやってくれる?」
「もちろん。約束する。それまでママと仲良くするんだよ」
「うん!」
「若菜くん、ありがとう。気をつけてね」
「うん」と若菜は悟史に手を振った。
悟史も笑顔で手を振りながら、部屋の中に入っていった。
若菜は時間を確認しようとスマホを見た。
「うわっ!」ユリから何回も着信があった。
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