ゲームの中の女主人公に本気で恋したら 第二部

ぱるゆう

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大会

大会の日となった。

校長の命令で、各社マスコミに連絡したと顧問は言った。

「そんな毎回、記録なんて出せませんよ」と一応抗議したが、顧問も

「大丈夫。みんなもそんなことは分かってるから」と申し訳なさそうに言った。

そう言われてしまうと、記録を出したくはなる。でも、やっぱりマズイものはマズイ。

「ナビちゃん、前回よりも速いペースで行く」

「分かりましたが、いいのですか?」

「最後の周回の時に、一気にペースを落として、前回よりも数秒遅いタイムにする」

「なるほど。気負ってしまった、ということですね?」

「そういうこと」

競技場に入ると、いつもより観客席の人達が多いような気がした。

端の方でアップを始める。一通り終えると、瑞希達の所に行った。

斉木さん達も興奮しているようだ。

自分の種目がアナウンスされ、集合場所に行った。他の選手達が、
「星野くんですよね」って声をかけてきた。

頷くと、みんなに握手を求められた。

そして、第1組がスタートした。
トラックを見回してみると、テレビカメラが何台かとカメラマンが十数人いるのが目に入った。

マジか、と心の中で思った。他の競技ではいなかったはずだ。明らかに自分
目当てのようだ。

いい所を見せたい所だが、少しは高校生らしい所も見せないとマズイ。

「ナビちゃん、予定通りで」

「はい、マスター」

そして、自分の組の順番が回ってきた。

スタートの合図と共に抜け出す。他の選手をどんどん引き離していく。

「マスター、少し抑えて」

「了解」少しだけペースを落とす。

そして、全員を周回遅れにする。

「マスター、前回よりも13秒速いです」

そのタイムのまま最終周回に入った。
競技場が異様な雰囲気に包まれる。また日本記録を更新するのかと。

そこで、僕は少しふらついた。両手をダラリと下げて、顔も険しくする。

徐々にペースを落としていく。またふらつく。

「マスター、力を解いてください」
僕は自力走行に切り替えた。

相変わらず身体が重い。一気にペースが落ちる。顔だけじゃなくて、全身を振りながら走る。

そして、何とかゴールした。寝転びたいが、まだみんな走っている。

フラフラしながら、コースから外れる。
「マスター、7秒遅れです」

「あぁ、丁度いい」とグラウンドに寝転んで、身体全体で呼吸した。

今度は競技場全体が落胆の雰囲気に包まれていく。

みんな申し訳ない。でも、記録ってそう簡単に破れないから偉大なんだ、と僕は思った。

当然、観客席で瑞希は呆れ返っでいた。斉木さん達は残念がってはいたが、よく頑張ったと言い合っていた。

寝転んでいる僕に、大会の関係者らしき人が声をかけて、カメラのある所に連れて行った。

僕は両手で汗を拭きながら、立った。
「今日の記録について、どう思う?」

「いやっ、ホントに、記録を出せた時は、調子が良かったので、やっぱり簡単には超えられないな、と思いました」

「今日は途中までは更新できるタイムだったけど」

「前半飛ばしすぎて、何とかそのペースを最後まで維持しようと思ったんですが、やっぱり速いペースだったので、最後、持ちませんでした」

「それでも最後まで走りきれた」

「まぁ、それは、今日来た意味がなくってしまうので、何とか最後気力でゴールしました、次は、最後にスタミナ切れしないように、また顧問の先生と話し合いながら練習したいと思います」

「他の選手と何処が違うと思いますか?」

「いや、それは、僕には分からないですけど、走るのが好きで、そして支えてくれる方々がいるので、その期待に応えたいと思って走ってるだけなので、本当にたくさんの方に感謝したい気持ちでいっぱいです」

「ご両親には何と伝えたいですか?」

「えっ」と僕は恥ずかしいという素振りを見せた。

「両親はとても仲がいいので、これからも仲良くして欲しいと思います。あっ!ごめんなさい。こういうことじゃないですよね。今のなかったことにしてください」と慌てた。

「ハッハッハッ」と記者達から笑い声が起こった。狙い通りだ。

「改めて、両親には僕を丈夫に産んでくれたことに感謝しています。まだ高校生なんで、親孝行もろくにできませんけど、少しでも自慢に思ってくれたら嬉しいです。こんな感じで大丈夫ですか?」

「あぁ。最後に、次の大会に向けて一言」

「また一生懸命練習して、この前の自分を越えられるようにしたいと思います」

「はい、ありがとう。最後に写真を撮るから」

とカメラマンが前に集まった。
カメラマン全員に目線を送り、終了となった。

更衣室に行く途中で、顧問に会った。
「飛ばし過ぎだ」

「すいません。ちょっといい所を見せようとしてしまって」

「まぁ、これから先があるんだ。今日のことをちゃんと反省して、次に生かしなさい」

「はい」

「俺は校長に報告してくるから、気を付けて帰るんだぞ」

「はい」

着替えて外に出ると、瑞希達がいた。
「お疲れ様」と斉木さんが言った。

「なんか恥ずかしい所を見せちゃったかな」

「そんなことないよ。他の人達より全然速かったじゃん」

それから喫茶店に入って話し、瑞希と帰った。
「何話してたの?」

「えっ?」

「カメラに囲まれて」

「それっぽいこと」

「本当に白々しいわ」

「しょうがないだろ。人間っぽくしないと」

「へぇ~、自覚あるんだ?」

「当たり前だろ。僕みたいな生き物がいたら、本当はダメなんだから」

「ふ~ん。少しは安心したわ。まぁ、明日からまたキャーキャー言われる日が来るのね」

「僕は瑞希だけだよ」

「私は違うから」

「はいはい。素直に諦めます。元はと言えば僕が悪いんだから」

「へぇ~、自覚あるんだ?」

「はい、心から反省してます」

「そんなこと言っても、もうダメだからね。私もお母さんに悪いと思ってるんだから」

「まぁ、部長なら、瑞希のこと泣かせるようなことはないと思うしね。逆に部長が泣くことはあっても」

「どういう意味よ!」

「冗談だよ。2人なら上手くいくよ」

「あなたもお母さんのこと泣かせたらダメだからね」

「そんなことはしません。もう懲りた」

「はいはい、その言葉忘れないようにね」



家に帰ってスマホを見ると、『高校生日本記録更新ならず』と記事になっていた。

更新しなくて記事になるのか?と思ったが、他のスポーツ新聞でも記事を上げていた。

斉木さん達からもラインで知らせてきた。

『また駅で大変なことになるのかな?』

『どうだろう?でも今回は記録更新してないから』

夜のスポーツニュースでも、少し取り上げられたが、コメントも『しっかり練習して頑張りたい』くらいしか放送されなかった。

「ご両親にメッセージって言われたのは、放送されなかった」と両親に向かって言った。

「何て言ったの?」

「仲がいいので、これからも仲良くしてほしいって」

「はぁ?何でそんなこと言ったのよ。走るのと関係ないじゃない」と母が言った。

「だから、放送されなかったんだよ」

「恥ずかしいから止めて」

「別にいいじゃん。実際そうなんだし」

「それはそうだけど。ねぇ」と母は父に言った。

「まぁ、父さんも会社で言われるからな。ほどほどにしてくれよ」と父は満更でもない様子で言った。

「分かった。次は気をつけるよ」



月曜日に駅に行ってみると、少しは多そうだったが、そんなに変わりはなかった。斉木さん達と学校に向かった。
 
「あと2か月か。こうして星野君と通えるのも」

「別に遠くに行くわけじゃないからね」

「でも、わざわざ連絡しなくても、こうやって会えるのって貴重じゃない?」

「確かにそう思う。そう言えば、みんな進路はどうするの?」

「まだ決まんない」みんながそう言う中、
「私は料理学校に通うわ」と瑞希は言った。

「お店継ぐの?」と貴之は言った。

「継ぐかどうかは弟次第ね。まぁ、頭悪いから、弟は継ぐしかないと思うけど。それまでは店を手伝うつもり」

「その後、瑞希ちゃんはどうするの?」

「相手が就職したら、すぐに結婚するつもりよ」

「あぁ、彼氏持ちは言うことが違うわね」と斉木さん達は、ため息をついた。

相変わらず潔い決断をするな、と貴之は思った。

「星野君は?」

「僕は走るのを頑張るしかないから。大学から誘われればいいなってところかな」と言いながら、僕は相変わらず他人任せだな、と少し自己嫌悪に陥った。

その後は、詩織の所で雇ってもらうしかない。セラフィの父親との約束を果たさないとならないような気もするが、その頃は走る方はフェードアウトしたい。詩織との生活を考えたら、あんまり目立つのも良くない。怪我をしたとか適当な理由を考えよう。

「なるほどね」と瑞希を除く斉木さん達は納得したようだ。


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