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020114【駅舎】
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終電だったけれど、寝ていたため乗り過ごしてしまった。聞いたことのない駅だった。痛いけれどタクシーを見つけるか、安いホテルでも見つけなければならないと思い改札を抜ようとしたところ持っていたICカードは使えないようなので、駅員に尋ねた。
「すみません、乗り過ごしてしまって、 精算をしたいのですが」
見慣れない青色の制服と帽子を被った駅員は答える。
「これは使えませんよ。切符はお持ちですか」
「いえ、ICカードで入ったので」
すると駅員は事務室の中へ入ってしばらく出てこなくなってしまった。事務室の中は途端に騒々しくなった。
出てくるのを待っていると、膝あたりを規則的に二回叩かれた。下を見ると、女の子が立っていた。
「ねえ、お姉ちゃん、切符持ってないの?」
突然のことで戸惑ったが返答する。
「ええ、切符は持ってないわ」
少女は俯く。
「それじゃあ、出られないよ。これ、あげるわ。弟の分だったけど必要なくなったから」
そう言って、肩から下げていたポーチのような物からチケットを一枚差し出した。
「ありがとう。でも、貰えないよ。お金はあるから大丈夫だよ」
「いいから早くしないと戻ってきちゃう」
そう言って私の靴と靴下の間に切符をねじ込んで改札を出て行ってしまった。
駅員が焦ったような表情で戻って来たので、仕方なくそのくしゃくしゃの切符を渡すとすんなりと改札から出ることが出来た。
改札を抜けると天井の高い、広場のような場所に出た。駅舎はバロック様式で、いたるところに彫刻や絵画があった。煌びやかな駅舎である。また、多くの人で賑わっているため騒々しかった。私はただその人波に流されるまま、遂には外に出たと思ったら、一つの大きな建物に入ろうとしていた。
「招待状の確認を」
そう言ったのは大きな門に立っている体格の良い男性だった。
「あ、いえ、招待状はないんです」
男性が怪訝な顔をするのと同時に、私の後ろに並んでいた行列からもどよめきが起こった。もう少ししたら罵倒の言葉を浴びせかけられそうな、そんな雰囲気が漂っている。
「それでは何をしにこちらへ」
男性は私に質問する。
「私も分かりません。ただ、帰ろうと思って」
今度はどよめきも起きなかった。
皆一同にして口を締め、張り詰めた空気だ。
私はずっと握りしめていたスイッチを押した。
すると、途端にゴシック様式の駅舎から濁流が溢れ出し、人々を一斉に流した。勿論、私もその濁流になすすべはなく、翻弄され、地の果てまで流されていった。
人は残らず消え去ったけれど、依然として光り輝く静かな駅舎は、変わらずに存在を続けていたのだった。
「すみません、乗り過ごしてしまって、 精算をしたいのですが」
見慣れない青色の制服と帽子を被った駅員は答える。
「これは使えませんよ。切符はお持ちですか」
「いえ、ICカードで入ったので」
すると駅員は事務室の中へ入ってしばらく出てこなくなってしまった。事務室の中は途端に騒々しくなった。
出てくるのを待っていると、膝あたりを規則的に二回叩かれた。下を見ると、女の子が立っていた。
「ねえ、お姉ちゃん、切符持ってないの?」
突然のことで戸惑ったが返答する。
「ええ、切符は持ってないわ」
少女は俯く。
「それじゃあ、出られないよ。これ、あげるわ。弟の分だったけど必要なくなったから」
そう言って、肩から下げていたポーチのような物からチケットを一枚差し出した。
「ありがとう。でも、貰えないよ。お金はあるから大丈夫だよ」
「いいから早くしないと戻ってきちゃう」
そう言って私の靴と靴下の間に切符をねじ込んで改札を出て行ってしまった。
駅員が焦ったような表情で戻って来たので、仕方なくそのくしゃくしゃの切符を渡すとすんなりと改札から出ることが出来た。
改札を抜けると天井の高い、広場のような場所に出た。駅舎はバロック様式で、いたるところに彫刻や絵画があった。煌びやかな駅舎である。また、多くの人で賑わっているため騒々しかった。私はただその人波に流されるまま、遂には外に出たと思ったら、一つの大きな建物に入ろうとしていた。
「招待状の確認を」
そう言ったのは大きな門に立っている体格の良い男性だった。
「あ、いえ、招待状はないんです」
男性が怪訝な顔をするのと同時に、私の後ろに並んでいた行列からもどよめきが起こった。もう少ししたら罵倒の言葉を浴びせかけられそうな、そんな雰囲気が漂っている。
「それでは何をしにこちらへ」
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「私も分かりません。ただ、帰ろうと思って」
今度はどよめきも起きなかった。
皆一同にして口を締め、張り詰めた空気だ。
私はずっと握りしめていたスイッチを押した。
すると、途端にゴシック様式の駅舎から濁流が溢れ出し、人々を一斉に流した。勿論、私もその濁流になすすべはなく、翻弄され、地の果てまで流されていった。
人は残らず消え去ったけれど、依然として光り輝く静かな駅舎は、変わらずに存在を続けていたのだった。
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