一日一編

馬東 糸

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020217【目】

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 Aちゃんとは高校に入学してから知り合った。知り合ったと言っても話をした事はない。
 私はそれまで居た環境から抜け出したいと、自宅から遠い高校をわざわざ選んだため知り合いが一人もいなかった。内向的な私は例に漏れず独りきりで高校生活を持て余していた。そんな時、ふと自分のクラスに同じような境遇の女の子がいる事に気が付いた。ただ、境遇が同じというだけでAちゃんの睫毛は私の倍ほどもあった。私は独りにさせられているのに対して、Aちゃんは自ら独りを選んでいるような、そんな印象だった。
 教室では殆ど話さないAちゃんだったけれど、違うクラスに同い年の彼氏がいてお昼休みになると二人でどこかへ消えてしまうのだった。
 私は興味本位で二人に気が付かれないように後を付けてしまった事がある。
 二人は校舎裏の物置の影に入っていったのが見えて、そこからは到底私の想像に及ばない出来事が起きていた。
 そして、どきりとした。
 というのも、物置の影からこそこそと垣間見を行う私と一度だけ、たった一瞬間ではあったがAちゃんと目が合った。仄暗い場所ではあったけれど、その目は青白く見えるほど美しかった。
 Aちゃんはその後何事も無かったかのように振る舞い、私は自分が恥ずかしいことをしているような気持ちになって脱兎の如くその場を逃げ出した。
 お昼休みが終わる直前に教室に戻ってきて、平然と授業を受けているその綺麗な目を眺めていた。斜めからでも、いや、斜めからの方が分かるその睫毛は彼女が瞬きをする度にばさりと音が出そうな勢いで、一瞬彼女の瞬きに遅れるように動くのが印象的であった。
 それから数日が経った昼休みのことである。
 私は懲りずに二人の後を追っていた。
 前と同じように物置の影に入っていく。
 変わらずにこそこそと顔を出して、垣間見をしていると、今度は言い逃れが出来ないほどに目が合った。
 その瞬間、彼女は私に微笑んだ。母が我が子に向けるようなそれではなく、もっと挑発的で刺々しい微笑みであった。
 私は怖くなり、その場を逃げ出してしまいたくなったが、結局全てが終わるまで目を離すことは無かった。時折、その目は私を誘うように視線を交わらせて、まるでこの場に二人きりなのかと錯覚してしまうほどである。
 私は自分の奥底から湧き上がる感情に戸惑いながらも、ただ彼女と視線を交わらせる事に夢中になっていくのだった。
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