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きっかけはクリスマス
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俺は男が好きだ。
いつからなんてわからない。
気がついたら女が苦手、男ばかりを目で追うようになっていた。
でも俺の好みはいつも可愛いか、綺麗……。
だからまさか、俺があの人を好きになるなんて思わなかった。
先輩の友達で、全然俺の好みじゃない彼。
少し自己中心で、さびしがりやの彼。
始まりはどこだった?
そう、始まりは多分クリスマスパーティーだ。
§ § §
「うちでクリスマスパーティーを開こう!」
「えっ?!」
クリスマスを控えた1週間前、灘さんと飲んでると彼は不意にそう言った。
いや、うちって。
っていうか灘さんと二人で?
ありえないでしょ?
動揺してる俺の前で彼はにっこりを笑う。
「もちろん、勇と王さんも一緒に誘おうぜ。俺が勇を誘うから、王さんのほうのほう頼むな」
「………」
俺は無理、無理ですと言いかけたが、灘さんの笑顔を見て言葉を飲み込んだ。
灘さん、会社の取引先で、会社の実田勇先輩の友達だ。
俺は今年の4月、ケイラという照明器具の会社に就職。ケイラを選んだのは実田先輩がいたからだ。
1年前、中国に旅行に行った俺は凄く綺麗な中国人に会った。その彼の相手――好きな人が実田先輩で、俺は最初興味本位で彼に近づいた。でも先輩の可愛らしさに心奪われ、襲ってしまった。で、その現場に現れた恐ろしくて、綺麗な中国人・王王秀雄に返り討ちにあってしまった。
そんなわけで、仲たがいしていた彼らは、俺のおかげでハッピーエンドなわけだが、その頃から俺は灘さんに誘われるようになった。灘さんは実田先輩とよくつるんでいたけど、秀雄と付き合い、同棲するようにまでなってしまい、付き合いが悪くなったようだ。
それで俺が先輩の代わりに誘われるようになっていた。
俺がゲイであることは知っているはず、でも彼は俺を誘う。
たまに、彼が俺に気があるのかと思うのだが、いかんせん、彼は完全ノーマル。
そんなネタ振ることはできない。
ましては、彼は俺の好みではない。
俺は美しいものか可愛いものが好きだ。
灘さんはブ男ではない、でも可愛いわけでもないし、美しいわけでもない。
3枚目と2枚目の間のような、微妙な顔をしている。
でもブ男ではないから、彼女はよくできているようだけど、いつも振られている可哀そうな人だ。
イヤ、俺も人のことは言えない。
そういう俺も恋人に振られたばかりだった。
『忠史。僕やっぱりもっと大人の人と恋がしたいんだ。だからごめん』
そう言って俺の可愛い恋人は俺を振った。
くそっつ。
どうやら俺の老け顔は俺の性格まで間違った印象を与えるらしい。
だから、そのギャップで恋人の気持ちは冷えてしまうらしい。
「日本はさあ、クリスマス休みじゃないからむかつくよな。しょうがないから23日、忠史(ただし)、買い物付き合ってな」
灘さんは、俺がそんなことを考えている間に一人でクリスマス計画を立ててらしい、俺の肩を叩きながらそう言った。
クリスマス。
それは恋人達が仲良く過ごす日。
そんな日にクリスマスパーティーを開き、二人を誘うなんて無理だ。無謀すぎる!
秀雄は結構怖い人だ。
絶対に乗らないのと思うんだけど。
俺は重い気持ちを抱えながら翌日出社した。
しかし、神様は俺の味方をしたようで、俺のミッションは昼食時間に片が付いた。
「紀原くん。灘が、クリスマスパーティー開くんだって?本当自分勝手だよな。紀原くん悪いけど、まあ付き合ってやってよ。俺達も行くからさ」
「……来てくれるんですか!」
「もちろん。去年、一人の時は灘に誘ってもらったからなあ。今年は奴一人でさびしそうだし。秀雄もそれでOKって言ってたから」
神様、ありがとう!
俺は思わず絶叫しそうになったが、踏みとどまり、実田先輩に頭を下げる。
「あ、でも秀雄が女の子はうるさいから呼ばないでくれって言ってんだよな。紀原くんはそれでOKだよな?」
「……ええ」
俺も女の子、特に灘さんが好む女の子は好きじゃない。
俺も女友達いるけど、だいたいさばさばしてる子ばかりだ。
女の子、女の子してるのは好きじゃない。
そういう可愛いのは男の子と十分。
「……紀原くん。まさかとは思うけど。灘とかにちょっかい出してないよな?」
「!あったり前ですよ!」
俺は思わず飲んだコーヒーを気管に詰まらせた。
あり得ない。
灘さんにちょっかいだすなんで、天地がひっくりかえってもない。
「だったらいいんだけど」
実田先輩はごほごほと咳をする俺に安心した笑顔を浮かべる。
まったく失礼極まりない。男だったら誰でもいいわけじゃない。
俺が実田先輩に手を出したのも、可愛かったからだし。
本当、単純なところとか、目が大きくて感情がわかりやすいところとか可愛いよな。
今でも時折ドキドキするけど、秀雄のことを思い出すとその気持ちは一気に冷める。
秀雄はああ見えて嫉妬深い。
会社の付き合いで飲んでるというのに、俺が先輩にちょっかいを出さないかと、心配し恐ろしいメールを送ってくる。
実田先輩は知らないだろけど、彼はかなり秀雄に愛されている。
あそこまで愛されると少し怖いなと思うけど、まあ、実田先輩が幸せそうなので、それでいいかな。
いつからなんてわからない。
気がついたら女が苦手、男ばかりを目で追うようになっていた。
でも俺の好みはいつも可愛いか、綺麗……。
だからまさか、俺があの人を好きになるなんて思わなかった。
先輩の友達で、全然俺の好みじゃない彼。
少し自己中心で、さびしがりやの彼。
始まりはどこだった?
そう、始まりは多分クリスマスパーティーだ。
§ § §
「うちでクリスマスパーティーを開こう!」
「えっ?!」
クリスマスを控えた1週間前、灘さんと飲んでると彼は不意にそう言った。
いや、うちって。
っていうか灘さんと二人で?
ありえないでしょ?
動揺してる俺の前で彼はにっこりを笑う。
「もちろん、勇と王さんも一緒に誘おうぜ。俺が勇を誘うから、王さんのほうのほう頼むな」
「………」
俺は無理、無理ですと言いかけたが、灘さんの笑顔を見て言葉を飲み込んだ。
灘さん、会社の取引先で、会社の実田勇先輩の友達だ。
俺は今年の4月、ケイラという照明器具の会社に就職。ケイラを選んだのは実田先輩がいたからだ。
1年前、中国に旅行に行った俺は凄く綺麗な中国人に会った。その彼の相手――好きな人が実田先輩で、俺は最初興味本位で彼に近づいた。でも先輩の可愛らしさに心奪われ、襲ってしまった。で、その現場に現れた恐ろしくて、綺麗な中国人・王王秀雄に返り討ちにあってしまった。
そんなわけで、仲たがいしていた彼らは、俺のおかげでハッピーエンドなわけだが、その頃から俺は灘さんに誘われるようになった。灘さんは実田先輩とよくつるんでいたけど、秀雄と付き合い、同棲するようにまでなってしまい、付き合いが悪くなったようだ。
それで俺が先輩の代わりに誘われるようになっていた。
俺がゲイであることは知っているはず、でも彼は俺を誘う。
たまに、彼が俺に気があるのかと思うのだが、いかんせん、彼は完全ノーマル。
そんなネタ振ることはできない。
ましては、彼は俺の好みではない。
俺は美しいものか可愛いものが好きだ。
灘さんはブ男ではない、でも可愛いわけでもないし、美しいわけでもない。
3枚目と2枚目の間のような、微妙な顔をしている。
でもブ男ではないから、彼女はよくできているようだけど、いつも振られている可哀そうな人だ。
イヤ、俺も人のことは言えない。
そういう俺も恋人に振られたばかりだった。
『忠史。僕やっぱりもっと大人の人と恋がしたいんだ。だからごめん』
そう言って俺の可愛い恋人は俺を振った。
くそっつ。
どうやら俺の老け顔は俺の性格まで間違った印象を与えるらしい。
だから、そのギャップで恋人の気持ちは冷えてしまうらしい。
「日本はさあ、クリスマス休みじゃないからむかつくよな。しょうがないから23日、忠史(ただし)、買い物付き合ってな」
灘さんは、俺がそんなことを考えている間に一人でクリスマス計画を立ててらしい、俺の肩を叩きながらそう言った。
クリスマス。
それは恋人達が仲良く過ごす日。
そんな日にクリスマスパーティーを開き、二人を誘うなんて無理だ。無謀すぎる!
秀雄は結構怖い人だ。
絶対に乗らないのと思うんだけど。
俺は重い気持ちを抱えながら翌日出社した。
しかし、神様は俺の味方をしたようで、俺のミッションは昼食時間に片が付いた。
「紀原くん。灘が、クリスマスパーティー開くんだって?本当自分勝手だよな。紀原くん悪いけど、まあ付き合ってやってよ。俺達も行くからさ」
「……来てくれるんですか!」
「もちろん。去年、一人の時は灘に誘ってもらったからなあ。今年は奴一人でさびしそうだし。秀雄もそれでOKって言ってたから」
神様、ありがとう!
俺は思わず絶叫しそうになったが、踏みとどまり、実田先輩に頭を下げる。
「あ、でも秀雄が女の子はうるさいから呼ばないでくれって言ってんだよな。紀原くんはそれでOKだよな?」
「……ええ」
俺も女の子、特に灘さんが好む女の子は好きじゃない。
俺も女友達いるけど、だいたいさばさばしてる子ばかりだ。
女の子、女の子してるのは好きじゃない。
そういう可愛いのは男の子と十分。
「……紀原くん。まさかとは思うけど。灘とかにちょっかい出してないよな?」
「!あったり前ですよ!」
俺は思わず飲んだコーヒーを気管に詰まらせた。
あり得ない。
灘さんにちょっかいだすなんで、天地がひっくりかえってもない。
「だったらいいんだけど」
実田先輩はごほごほと咳をする俺に安心した笑顔を浮かべる。
まったく失礼極まりない。男だったら誰でもいいわけじゃない。
俺が実田先輩に手を出したのも、可愛かったからだし。
本当、単純なところとか、目が大きくて感情がわかりやすいところとか可愛いよな。
今でも時折ドキドキするけど、秀雄のことを思い出すとその気持ちは一気に冷める。
秀雄はああ見えて嫉妬深い。
会社の付き合いで飲んでるというのに、俺が先輩にちょっかいを出さないかと、心配し恐ろしいメールを送ってくる。
実田先輩は知らないだろけど、彼はかなり秀雄に愛されている。
あそこまで愛されると少し怖いなと思うけど、まあ、実田先輩が幸せそうなので、それでいいかな。
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