クチナシの薫りは醒めない

ありま氷炎

文字の大きさ
69 / 91
第十二天 他的幸福―彼の幸せ(秀雄視点)

4

しおりを挟む
「………」
 寮に戻り、私は彼の後にシャワーを浴びる。
 熱いシャワーを浴びながら考えることは彼との別れだった。

 今なら私も大丈夫。
 彼と知り合ってから、僅か13日間。
 2週間にすぎない。
 
 だから大丈夫。

「秀雄(シュウシュン)。今日は俺ここで寝ますから。ベッドは使ってください」
 彼はテーブルを折りたたみながら、そう言う。
「勇(ヨン)……。あなたと一緒に寝たい。いいですか?」
「!」
 彼は真っ赤になって、私の顔を凝視する。
 しかし、こくんと頷いた。

 最後だ。
 彼と寝るのは。
 だから、彼のことを体に刻みつけよう。
 
「勇(ヨン)。我爱你(愛しています)」
 私は林檎のように顔を赤らめる彼にそっとキスをする。彼はぎこちないが、キスにゆっくりと答える。
 可愛い私の同僚、そして愛した人。

 愛しくてたまらなかった。彼のすべてを心に、体に刻み付けたい。
 
「我爱你(愛しています)」
 私と彼はそのまま、布団もひいていない畳の上になだれ込む。私は彼のTシャツを脱がせ、その首筋にキスを落とす。彼は快感を覚える自分を恥じているのか、声をあげようとするのを堪えているようだった。
「勇(ヨン)」
 意地悪だろうか。
 私はそんな彼に更なる快楽を与えたいと思って、彼の胸の小さなピンクの蕾に口付ける。
「んあ、秀雄(シュウシュン)。俺、それは嫌だ」
 彼はそう言うと私の腕を掴み、今度は私を畳の上に押し倒す。
「秀雄(シュウシュン)。あなたが好きです。ウォアイ、ニィ」
 照れ屋の彼が必死にそう言い、私のTシャツをめくり上げる。
「ヨ、ン。あぁん」
 ぺろりと乳首をなめられ、私は喜びで体を震わせる。
「秀雄(シュウシュン)。脱いで」
 彼にそう囁かれ、私はTシャツを脱ぎ捨てる。彼の顔は童顔の可愛らしいそれから、男の顔になっていた。彼は私の指に自分の指を絡ませて握りしめると、畳の上に両手を畳に押し付ける。そして再び私の乳首を舐め始めた。
「ん、あぁあん、不(いや)!勇(ヨン)!」
 それは執拗というほどで、ずきん、ずきんと訪れる快感に私は声をあげてしまう。
「秀雄(シュウシュン)静かに」
 彼は穏やかにそう言うと、私の口を自分の唇で塞ぐ。そして掴んでいた手を解放すると、今度は私の小さな二つの突起を指で刺激し始めた。
「……!」 
 喘ぎ声が彼にキスに殺される。私は出せない声の変わりに体を何度も震わせる。
 お互いにまだ下半身はさらしていない。しかし布越しに触れ合うペニスが徐々に熱を帯び、硬くなっていくのがわかった。
「あ、秀雄(シュウシュン)!」
 私が彼の短パンの中にするりと手滑り込ませると、彼がキスを止めて頬を赤らめる。
「もうかなり大きくなってますよ」
 私は彼のペニスに触れながら、そう囁く。
「あ。う、」
   羞恥心で顔をそむける彼が可愛くて、私は彼の頬に軽くキスをした。そして彼の短パンを一気に下ろすと、彼の腰を持ち上げた。
「秀雄(シュウシュン)!待って!ん、はっつ」
 彼のペニスを口に咥え、私は彼自身を味わう。つるつるとしたそれは、私の口の中で脈打っていた。舌で撫でる度に彼が体を震わせ、押し殺した声をあげる。
「秀雄(シュウシュン)、離してください。俺、俺、やばい!」
 彼が私から逃れようとするが、私は彼のすべてを味わいたくて悶える彼の腰を掴み、彼が私の中に性を放つまで彼を喰らい続けた。
「っつ、秀雄(シュウシュン)!すみません。俺……。吐いてください。今すぐ!」
 彼は体を起こして、私を心配そうに見つめる。
 彼はそうだ。私がしたことなのに、いつも自分から謝る。
「嫌です」
 彼のものは無駄にしたくない。この時も、彼自身も。
 私は喉を鳴らして飲み込むと、再度彼のペニスに喰らいつく。
「秀雄(シュウシュン)!嫌だ、俺ばっかり、だか…ら」
 彼はぐいと腰を動かし、私から逃れる。
「あなたにも感じて欲しい。だから」
 沸騰しそうなくらいに顔を真っ赤にさせ、彼が言葉を放つ。
「勇(ヨン)。あなたが気持ちいいと私も気持ちいいのです。だから心配しないで、」
「でも!」
「だったら、私の中に入れてください。あなたを体の中で感じたいのです」
 私は彼の返事を待たず、短パンを脱ぐ。そして入れやすいように唾液を使いアナルを緩め始める。潤滑油、せめてクリームなどを使いたかったが、そんな余裕はなかった。
 彼を待たせてなくないし、興ざめされそうで怖かった。
「秀雄(シュウシュン)……」 
 ぽつりと名を呼ぶ彼の声が小さく、私は心配になる。
 こんな姿見たくないだろうか?
 やはり男とセックスするなんて、嫌だろうか。
「駄目だ、俺。我慢できない!」
 彼は私の腰を持ち上げると、するりとペニスをアナルに当てた。
「すみません」
「あぁあん、勇(ヨン)」
 準備が完全にできてない私のアナルが彼のペニスを入り口の方で締め付ける。
「う、あ」
 彼がうめき声に近い声をあげ、私は息を吐いて彼を奥へ入れるように試みる。
「ううん、あぁん」
 彼のペニスが動くたびに、前立腺が刺激され私は声をあげる。彼のすべてを早く受け入れたくて私は彼の首に腕を絡ませると腰を上げる。
「秀雄(シュウシュン)?!はっ、あっつ」
「勇(ヨン)。我爱你(愛しています)。我就爱你(私は唯(ただ)あなたを愛しています)」
 彼のすべてが中に入り、私の中で彼のペニスが脈打つのがわかる。
 愛している。
 だから、これで最後だ。
 勇(ヨン)!
「秀雄(シュウシュン)!待っつ、あっつ」
 彼が声にならない声をあげる。
「はぁああん。勇(ヨン)、我爱你(愛している)、我爱你(愛している)」
 私は憑かれたように何度もそう言い、彼が私の中に性を放つまで腰を動かし続けた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます! 婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

処理中です...