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終章
18
「アレナ、よく戻ってきた」
ハランデンの国王は王室へ辿り着いたリーディアにそう労いの言葉をかける。
王女アレナが偽者であり、本当の王女はフラングス男爵家の使用人のリーディアである。
その知らせがハランデンに伝わり、王宮を始め国に混乱をもたらした。
悲劇の王女として国民に慕われる王女アレナが偽者だったのだ。
騙されたとラウラを罵るもの、己の娘の真偽もわからない国王への不満も高まる。その反面、「英雄」と謳われた騎士ボフミル・アデミツが黒幕で、彼がラウラを騙していたのだという彼女に好意的な見方をする者も多かった。
そのように国民の反応は様々であったのだが、王の彼女への態度は熾烈であった。
かの王は帰国した彼女を投獄したまま、一度も会おうとしなかった。その上、何も裁きを受けさせないまま死刑を執行しようとした。
リーディアは、ハランデン国王が自身の本当の父親と分かっているが、どうしても好ましい印象をもてなかった。
けれども、彼女は付け焼刃で身につけた王族らしさを持って、国王に頭を垂れる。
「ただいま戻りました。父上」
リーディアに対してハランデンの国民を含め、貴族たちは複雑な思いを抱く。降って沸いてきた王女、その印象が大きかった。けれども国王と対面した彼女を見た貴族たちは、その容貌、特に緑色の瞳に王族の血を見て、平伏する。
「まだ体調が万全ではないと聞いておる。部屋で休むがよい」
「そうさせていただきます」
父と娘の対面はそれで終わる。
リーディアの異母兄の王太子ラデクが国王の傍に控えていたが、彼は終始複雑な表情をしていた。けれども彼女はそれを不快に思う事はなかった。
ラデクはリーディアの計画を知っている者であり、協力者。しかも今でも姉のことを妹として思っているようで、彼女はラデクに好意を持っていた。
大好きな姉の兄、そんな気分で彼を眺める。
「エリアス様」
準備された部屋に戻ると、エリアスが訪ねてきてくれて、それまでの緊張が嘘のようになくなった。他国への正式訪問でもあるので、彼は礼服に身を包み、赤色のマントを身につけている。
普段でも見目がいい彼は目立つ。
王室までエリアスが傍についてくれたが、王女である彼女より目を引いていた。時に女性たちは溜息をこぼしていたのをリーディアは横目で確認していた。
単なる使用人であった時はエリアスとの関係は諦めており、一方的に想うだけであった。けれども王女と身分が保証された今、エリアスとの関係も変わってきている。
リーディアが以前のように接してくれと願ったため、態度は前と変わらない。変わったのは彼女の意識で、そんな自分が少し浅ましく思える時もあった。
(手が届かないと思っていて、遠くで見てるだけでいいと思ったのに)
今はとてもエリアスは近い距離にいる。
「リーディア。どうした?緊張したか?」
「ええ。とても緊張しました」
そんな場合ではないのに、彼の眼差しに胸を高まらせる。
(……お姉ちゃんが大変な時に、私は……)
「どうした。気分が悪いか?」
「いいえ。大丈夫です」
本当のことなど言って軽蔑されたらと思って、リーディアは必死に平静を取り繕った。
「リーディア。作戦はうまくいっているぞ。反感をもっていた貴族たちもお前の存在を認め始めたらしい」
「そうですか。よかった。頑張った甲斐がありました」
ラウラは、王女として立派に役目を果たしていたと聞いている。それもあって、リーディアを王女として認めない動きがあることを知った。
姉を目標に彼女は王女を演じてみせたつもりだった。
それが功を奏したようで、リーディアは安堵した。
ハランデンで、彼女は王女として認められ、発言力を高める必要があった。自身の王女としての影響力を持って、姉ラウラを救う。そのつもりで彼女は努力してきた。
「もう一ついい知らせがある。ラウラと会う算段もついた」
「本当ですか!」
一度気を失って倒れたリーディアは、姉を救いたいと訴えた。それはヴィートも同じ考えだったため、エリアスが架け橋になり、計画を立てた。
彼は父のドミニクにも協力を仰ぎ、この計画を推し進めた。
ハランデンの情報は王太子(ラデク)からヴィートに伝えられ、ラウラの死刑を止めるためにまずはリーディアが動いた。嘆願書を作成し、伝令に化けたヴィートがハランデンの国王に届ける。
ラウラが死ぬつもりだとわかったヴィートは、ハランデンに残ることを決めて、次の計画に移る。リーディアは体を休めながら王族の仕草、礼儀を学び、ハランデンへの帰還に備えた。
彼女に同行するのはエリアスで、これはハランデンの王女の希望として突き通した。
そうして本日、ハランデンに到着し、リーディアが希望していたラウラとの対面が実現しようとしていた。
ハランデンの国王は王室へ辿り着いたリーディアにそう労いの言葉をかける。
王女アレナが偽者であり、本当の王女はフラングス男爵家の使用人のリーディアである。
その知らせがハランデンに伝わり、王宮を始め国に混乱をもたらした。
悲劇の王女として国民に慕われる王女アレナが偽者だったのだ。
騙されたとラウラを罵るもの、己の娘の真偽もわからない国王への不満も高まる。その反面、「英雄」と謳われた騎士ボフミル・アデミツが黒幕で、彼がラウラを騙していたのだという彼女に好意的な見方をする者も多かった。
そのように国民の反応は様々であったのだが、王の彼女への態度は熾烈であった。
かの王は帰国した彼女を投獄したまま、一度も会おうとしなかった。その上、何も裁きを受けさせないまま死刑を執行しようとした。
リーディアは、ハランデン国王が自身の本当の父親と分かっているが、どうしても好ましい印象をもてなかった。
けれども、彼女は付け焼刃で身につけた王族らしさを持って、国王に頭を垂れる。
「ただいま戻りました。父上」
リーディアに対してハランデンの国民を含め、貴族たちは複雑な思いを抱く。降って沸いてきた王女、その印象が大きかった。けれども国王と対面した彼女を見た貴族たちは、その容貌、特に緑色の瞳に王族の血を見て、平伏する。
「まだ体調が万全ではないと聞いておる。部屋で休むがよい」
「そうさせていただきます」
父と娘の対面はそれで終わる。
リーディアの異母兄の王太子ラデクが国王の傍に控えていたが、彼は終始複雑な表情をしていた。けれども彼女はそれを不快に思う事はなかった。
ラデクはリーディアの計画を知っている者であり、協力者。しかも今でも姉のことを妹として思っているようで、彼女はラデクに好意を持っていた。
大好きな姉の兄、そんな気分で彼を眺める。
「エリアス様」
準備された部屋に戻ると、エリアスが訪ねてきてくれて、それまでの緊張が嘘のようになくなった。他国への正式訪問でもあるので、彼は礼服に身を包み、赤色のマントを身につけている。
普段でも見目がいい彼は目立つ。
王室までエリアスが傍についてくれたが、王女である彼女より目を引いていた。時に女性たちは溜息をこぼしていたのをリーディアは横目で確認していた。
単なる使用人であった時はエリアスとの関係は諦めており、一方的に想うだけであった。けれども王女と身分が保証された今、エリアスとの関係も変わってきている。
リーディアが以前のように接してくれと願ったため、態度は前と変わらない。変わったのは彼女の意識で、そんな自分が少し浅ましく思える時もあった。
(手が届かないと思っていて、遠くで見てるだけでいいと思ったのに)
今はとてもエリアスは近い距離にいる。
「リーディア。どうした?緊張したか?」
「ええ。とても緊張しました」
そんな場合ではないのに、彼の眼差しに胸を高まらせる。
(……お姉ちゃんが大変な時に、私は……)
「どうした。気分が悪いか?」
「いいえ。大丈夫です」
本当のことなど言って軽蔑されたらと思って、リーディアは必死に平静を取り繕った。
「リーディア。作戦はうまくいっているぞ。反感をもっていた貴族たちもお前の存在を認め始めたらしい」
「そうですか。よかった。頑張った甲斐がありました」
ラウラは、王女として立派に役目を果たしていたと聞いている。それもあって、リーディアを王女として認めない動きがあることを知った。
姉を目標に彼女は王女を演じてみせたつもりだった。
それが功を奏したようで、リーディアは安堵した。
ハランデンで、彼女は王女として認められ、発言力を高める必要があった。自身の王女としての影響力を持って、姉ラウラを救う。そのつもりで彼女は努力してきた。
「もう一ついい知らせがある。ラウラと会う算段もついた」
「本当ですか!」
一度気を失って倒れたリーディアは、姉を救いたいと訴えた。それはヴィートも同じ考えだったため、エリアスが架け橋になり、計画を立てた。
彼は父のドミニクにも協力を仰ぎ、この計画を推し進めた。
ハランデンの情報は王太子(ラデク)からヴィートに伝えられ、ラウラの死刑を止めるためにまずはリーディアが動いた。嘆願書を作成し、伝令に化けたヴィートがハランデンの国王に届ける。
ラウラが死ぬつもりだとわかったヴィートは、ハランデンに残ることを決めて、次の計画に移る。リーディアは体を休めながら王族の仕草、礼儀を学び、ハランデンへの帰還に備えた。
彼女に同行するのはエリアスで、これはハランデンの王女の希望として突き通した。
そうして本日、ハランデンに到着し、リーディアが希望していたラウラとの対面が実現しようとしていた。
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