男だと思われ夜這いされて、女だとバレてしまった件。ちなみに襲ってきたのは男です。

ありま氷炎

文字の大きさ
3 / 17

第3話 仇

しおりを挟む
 私は懲罰室へ入れられた。
 命令無視だから当然だ。

 本来ならもっと重い処罰のところを、また副団長に助けてもらったらしい。

「申し訳ありません」
「あなたの事情は調べて知ってたわ。無茶はこれっきりよ。次はないわ」
「はい」

 私は彼に甘えっぱなしだ。
 もし助けてに来てもらわないと、私は殺されていた。

「本当、あいつ。特別扱いされすぎだぜ。死ねばよかったんだ」

 その日から、私の風当たりは強くなった。
 当然だと思う。
 だから私は必死に訓練をした。
 嫌がらせも増えてきた。

「また傷ね。アノン君。もうやめなさい。あなたの仇は国境の総司令官よ。近づくのはもう無理だと思うわ。その代わり、私が必ず仇を討ってあげる」

 副団長の言葉は嬉しい。
 だけど、私はこれ以上甘えたくなかった。
 いつか戦っていれば、あいつに再び会える。
 その時は、刺し違えても。
 私はあいつを殺すために軍に入隊した。
 それだけのために生きている。

「頑固ね。それなら、私はもうあなたを庇うのはやめるわ。性別は秘密にしてあげる」

 副団長は呆れていた。
 それはそうだろう。
 だけど、私は諦めたくなかった。

 その日から苛めは酷くなった。
 だけど、その分強くなった気がする。
 水を掛けられようと、事故に見せかけて殴られようとも、私の気持ちは変わらない。絶対にあいつを殺す。

「副団長。もうアノンとは付き合っていないのですか?」
「そうよ。わかるでしょ?」

 食堂を通り過ぎると、副団長と分隊長を見かけた。
 楽しそうに話をしている。
 分隊長は副団長よりも背が高くて、がっちりしている。
 私は女だから、あんな風な肉体になることが難しい。大体年がら年中体を隠している。
 副団長に服を破かれて見られた時は、びっくりしたっけ。
 八か月前の出来事なので、最近みたいに思える。
 軍に長くいれば、いるだけ女ということがバレる可能性が高くなる。
 今でも体を見せない私に不信感を抱いているものがいる。
 汚らしい火傷の痕と言っても、国境には荒くれ者が多い。傷を負っているものもいるけど、みんな裸をさらけ出している。
 次、あいつを見たら、私は何がなんでもあいつを殺す。
 もうチャンスはない。
 女だとバレたら、軍法会議にかけられる。
 よければ解雇のみ。
 悪ければ処罰だ。
 どっちにしても私があいつと再び会う可能性はほぼなくなる。

 私はひたすら、自分の体を鍛えた。
 虐めも今の私にとっては自分を高めるための糧になった。
 そうして迎えた二度目の戦い。 
 あいつは再び司令官として現場にいた。
 副団長とは会話も一か月くらいしていない。
 こんな状態だけど、副団長は国境に居続けた。もう私は一人で大丈夫なのに。本部に戻ってくださいと言いたかったけど、副団長と再び話す勇気がなかった。

 副団長の助言を聞かなかった私。
 ずっと助けてくれたのに。
 ごめんなさい。
 それでも、私はあいつを殺したい。
 例え私が死んでも。

 戦いが始まった。
 私はあいつを目指した。
 命令違反だ。
 もう副団長も庇ってくれないし、だめだろう。
 私は今日あいつを殺す。

「アノン君!」

 名を呼ばれた気がする。

 囲まれた。
 必死に防戦する。
 馬鹿だ。
 自分なりに鍛えたつもりだけど、私は副団長などは違う。
 甘く見過ぎていた。
 ここで死ぬ。

「待て!生きたまま、とらえろ!」

 あいつの声がした。
 顔を上げると、あいつが気味悪い顔で笑っていた。

 ☆

「やはり、司令の言った通り、女でした」
「そうか」

 敵陣に連れていかれ、服を脱がされた。
 下卑た笑みを浮かべて、吐き気がした。
 自業自得だ。
 自害でもすべきだったか。
 口は布で封じられていて、手足は縛られた状態。
 舌すら噛むことができない。
 愚かすぎて泣きたくなる。
 でも絶対に泣かない。
 こうなったら、あいつが油断した隙にどうにか殺してやる。

「皆下がれ」
「司令!」
「大丈夫だ。こいつに何ができる。手足を縛っているじゃないか」

 あいつはにやにや笑いながら、私に近づく。
 兵士たちは心配しながらも、天幕から出て行った。

「お前、あの時の女の娘だな。よく似ている。この髪色、その目。薄汚れてしまったなあ。綺麗に後で洗ってやる」

 あいつは私の体を撫でた。
 気持ち悪すぎて、体が震える。

「おお、こんなに震えて。軍では慰め者にでもなっていたか?」

 お前らと違って、我が軍はそんなことはしない!
 そう叫びたかったけど、布が邪魔して話せない。

「布を取ったら煩そうだな。このまま楽しむか。すでに色々仕込まれているだろうが、それもまた一興か」

 男が私の胸に触れる。 
 ぞわぞわと全身の毛が立つ。

「触るな」

 初めて、副団長のそんな声を聞いた。

「死ね」

 あいつの首が掻っ切られ、血が飛び散る。あいつはのたうちまわった後、死んだ。
 私の体に布が巻きつけられる。
 そして荷物のように抱えられた。
 外は火をつけられ、大混乱だった。
 副団長は敵兵の制服を着ており、髪は短く切られていた。
 いつもの女性らしい副団長はそこにはいなかった。

「お前、それは!」
「司令から命じられて、運ぶ途中です!」
「そうか」

 副団長がそう言うと、詰問してきた相手は納得したようで道を通す。
 火の手がいくつも上がっていて、それどころじゃないようだった。

 天幕から離れると副団長は駆け出し、繋いであった馬に乗った。
 私は彼の前に抱え込まれた。
 口に布を巻かれたままの私は何も話せない。
 だけど、副団長も一言も話そうとしなかった。

 


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた魔王様と一緒に田舎でのんびりスローライフ

さら
恋愛
 美人な同僚・麗奈と一緒に異世界へ召喚された私――佐伯由香。  麗奈は「光の聖女」として王に称えられるけれど、私は“おまけ”扱い。  鑑定の結果は《才能なし》、そしてあっという間に王城を追い出されました。  行くあてもなく途方に暮れていたその時、声をかけてくれたのは――  人間に紛れて暮らす、黒髪の青年。  後に“元・魔王”と知ることになる彼、ルゼルでした。  彼に連れられて辿り着いたのは、魔王領の片田舎・フィリア村。  湖と森に囲まれた小さな村で、私は彼の「家政婦」として働き始めます。  掃除、洗濯、料理……ただの庶民スキルばかりなのに、村の人たちは驚くほど喜んでくれて。  「無能」なんて言われたけれど、ここでは“必要とされている”――  その事実が、私の心をゆっくりと満たしていきました。  やがて、村の危機をきっかけに、私の“看板の文字”が人々を守る力を発揮しはじめます。  争わずに、傷つけずに、人をつなぐ“言葉の魔法”。  そんな小さな力を信じてくれるルゼルとともに、私はこの村で生きていくことを決めました。

【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。

櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のセラフィーナには生まれつき前世の記憶があったが、覚えているのはくだらないことばかり。 そのどうでもいい知識が一番重宝されるのが、余興好きの国王が主催する夜会だった。 毎年余興の企画を頼まれるセラフィーナが今回提案したのは、なんと「借り物競争」。 もちろん生まれて初めての借り物競争に参加をする貴族たちだったが、夜会は大いに盛り上がり……。 気付けばセラフィーナはイケメン王太子、アレクシスに借りられて、共にゴールにたどり着いていた。 果たしてアレクシスの引いたカードに書かれていた内容とは? 意味もなく異世界転生したセラフィーナが、特に使命や運命に翻弄されることもなく、王太子と結ばれるお話。 とにかくツッコミどころ満載のゆるい、ハッピーエンドの短編なので、気軽に読んでいただければ嬉しいです。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。 小説家になろう様への投稿時から、タイトルを『借り物(人)競争』からただの『借り物競争』へ変更いたしました。

【完結】悪役令嬢の身代わりで処刑されかけた侍女、悪人面強面騎士にさらわれる。

雨宮羽那
恋愛
 侍女リーリエは、処刑される予定の主・エリーゼと容姿がそっくりだったせいで、身代わりとして処刑台へ立たされていた。  (私はエリーゼ様じゃないわ!)と心の中で叫んだ瞬間、前世の記憶がよみがえり、ここが読みかけだった悪役令嬢ものの小説の世界だと気づく。  しかも小説ではエリーゼが処刑されるはずなのに、リーリエが処刑されかけているという最悪の展開。  絶体絶命の瞬間、リーリエの前に現れたのは強面で悪人面の騎士ガウェイン。  彼はなぜかリーリエを抱えあげ連れ去ってしまい――? ◇◇◇◇ ※全5話 ※AI不使用です。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております。

【完結】貧乏子爵令嬢は、王子のフェロモンに靡かない。

櫻野くるみ
恋愛
王太子フェルゼンは悩んでいた。 生まれつきのフェロモンと美しい容姿のせいで、みんな失神してしまうのだ。 このままでは結婚相手など見つかるはずもないと落ち込み、なかば諦めかけていたところ、自分のフェロモンが全く効かない令嬢に出会う。 運命の相手だと執着する王子と、社交界に興味の無い、フェロモンに鈍感な貧乏子爵令嬢の恋のお話です。 ゆるい話ですので、軽い気持ちでお読み下さいませ。

投資の天才”を名乗る臣民たちよ。 その全財産、確かに受け取った。 我が民のために活かそう』 〜虚飾を砕く女王の経済鉄槌〜

しおしお
恋愛
バブルに沸くアルビオン王国。 「エルドラド株」を持たぬ者は時代遅れ―― そう嘲笑いながら、実体のない海外権益へ全財産を注ぎ込む貴族たち。 自らを“投資の天才”と称し、増税に苦しむ民を見下す日々。 若き女王リリアーナは、その狂騒を静かに見つめていた。 やがて始まる王室監査。 暴かれる虚偽契約。 崩れ落ちる担保。 連鎖する破綻。 昨日まで「時代の勝者」を気取っていた特権階級は、一夜にして無一文へ。 泣きつく彼らに、女王はただ微笑む。 ――“皆様の尊いご投資、確かに受け取りましたわ” 没収された富は国庫へ。 再配分された資源は民へ。 虚飾を砕き、制度を再設計し、王国を立て直す。 これは復讐譚ではない。 清算と再建の物語。 泡沫の王国に、女王の鉄槌が下される。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

守護契約のはずが、精霊騎士の距離が近すぎて心拍がもちません―― 距離ゼロで溺愛でした。

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済:全8話⭐︎ ーー条項:心拍が乱れたら抱擁せよ(やめて) 村育ちの鈍感かわいい癒し系ヒロイン・リリィは、王都を目指して旅に出たはずが――森で迷子になった瞬間、精霊騎士エヴァンに“守護契約”されてしまう! 問題は、この騎士さまの守護距離が近すぎること。 半歩どころか背後ぴったり、手を繋ぐのも「当然」、心拍が乱れたら“抱擁条項”発動!? 周囲は「恋人だろ!」と総ツッコミなのに、本人たちは「相棒です!」で通常運転。 守護(と言い張る)密着が止まらない、じわ甘コメディ異世界ファンタジー!

料理スキルしか取り柄がない令嬢ですが、冷徹騎士団長の胃袋を掴んだら国一番の寵姫になってしまいました

さら
恋愛
婚約破棄された伯爵令嬢クラリッサ。 裁縫も舞踏も楽器も壊滅的、唯一の取り柄は――料理だけ。 「貴族の娘が台所仕事など恥だ」と笑われ、家からも見放され、辺境の冷徹騎士団長のもとへ“料理番”として嫁入りすることに。 恐れられる団長レオンハルトは無表情で冷徹。けれど、彼の皿はいつも空っぽで……? 温かいシチューで兵の心を癒し、香草の香りで団長の孤独を溶かす。気づけば彼の灰色の瞳は、わたしだけを見つめていた。 ――料理しかできないはずの私が、いつの間にか「国一番の寵姫」と呼ばれている!? 胃袋から始まるシンデレラストーリー、ここに開幕!

処理中です...