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第二章
第三十話「この世界の本当に恐ろしいもの」
しおりを挟む妖精の館と呼ばれる暗くて物が散乱している、誰もが近づきにくい屋敷の中で俺は思いもしない言葉を耳にしてしまった。
―― スイーツって何?
妖精は甘い食べ物が好きだと聞く。
そんな中で甘い食べ物の代表とも言えるスイーツを知らないとは、驚きだった。
「本当に……、この世界の食べ物に知識がないというか……、なんというか……」
俺は宙を見るように目線を上に向けてため息をついた。
ここまで食の文化が進んでないとは、本当に何も言えないな。
「……?お兄さん?ねえねえ、スイーツって何?!」
呆れている中、俺の服の袖を引っ張りながら興味津々で目を輝かせている少年がいる。
「んー、少年よ、甘味ってわかるか?」
「甘味……?かん、み……?」
ああ、甘味という言葉すら知らないのか、この世界は。
俺はこの足場のない寝室で紙とペンを探した。
その二つを探すために、足元にあるものから探していった。
そんな様子を見ていた少年は何をしているのか気になって、屈んだ状態で俺の顔を覗いてきた。
「お兄さん、何してるの?何を探しているの?」
「ああ、ペンと紙を探していてな……」
「紙とペンって……、語言魔法って使えなかったっけ?」
俺は少年の発した言葉「語言魔法」という言葉を聞いてジェットのことを思い出した。
ジェットの使用できるスキル「語言理解」と似たようなものってことだろうかと。
だが、実際に少年が使う姿を見て全くの違うものだということがわかった。
「へー……、語言魔法って……、宙に文字を書くことができるんだな……」
俺は感心するように頷きながら、宙に浮いている文字を見た。
ただ、ここの世界の文字がわからないのが苦であった。
「お兄さん?」
「すまん、語言魔法は使えないんだ……、だからその……」
俺の世界の言葉で教えようと思ったが、ここの世界の人にそれが伝わるかも分からなかったため、自分の言葉で伝えるしかないと思った。
言葉が詰まって、どう言えば伝わるかと悩んでいた。
「んー、お兄さんが何をしたいのかわっかーんない!で、甘味とスイーツってのがその香りの正体ってこと?」
ラビリアさんが寝ているベッドの上に、思い切りジャンプをして腰掛けた。
起きてもおかしくないほどの揺れに、ふらついてしまい近くのテーブルを掴んで体を支えた。
そんな振動があったにも関わらず、ラビリアさんは枕を抱きしめたまま幸せそうに眠っている。
「すごいな……、普通に起きないのがすごい……」
「この人匂いとかじゃないと起きないんだよー、で、で、僕の質問に答えてー!」
俺が質問に答えなかったので、唇を突き出して膨れたまま腕を掴んできた。
そうだったと俺は眉を下げた状態で苦笑いして、頷く。
「僕スイーツ?っての食べたことないんだー。この世界の食べ物ってまずい物だらけでしょ?だからさ……」
そのままの状態で、俯きながらぼそぼそと口に出してくる。
俺は妖精が何が苦手なのか、考えてみた。
確か、苦いものを嫌う生き物と聞いたことがある。
これも現世にいた時に本で読んだことがあった。
「よしっ、じゃあ俺がとびっきりに美味いもんを作ってやる!」
俺の心に火が付いた。
少年のそんな顔を見てしまったら作るしかないだろうと思ってしまうくらいやる気が沸いてきた。
「え、それって甘いものなんだよね…?」
不安そうな顔をした少年は、上目遣いをしながらこちらを見つめてくる。
ここには何もない。
普通なら、妖精は甘いものを好きと聞くし結構甘いものがたくさんあるものだと思うが、やはり食について問題があるのか甘いものはほとんどなさそうなイメージがあった。
「ああ、甘いものだ。ただ、この国には甘いものってあるのか?果物とか、甘い蜜ーとか……。あるなら、教えて欲しいのだが……」
「甘いものはあるけど、それをどうやってもっと美味しくさせるかはわからないんだ……」
俺は腕組をしながらその話を聞いた。
この世界には材料はそろっているが、その調理法を知らないという。
だからってこともあるのかもしれない。
食の文化が進まないこと、美味いものを食べてこなかったこと、それも関係しているんではないかと俺は思った。
「ふむっ、なら……、できるだけ甘いものを持ってきてくれ。運び入れられないなら……、外に出して待っていてくれ」
さて、この国の食文化見定めてやる!
俺がどのくらい美味くなるのか、どのように調理するのかも教えてやろう!
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