監獄の部屋

hyui

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自由な世界

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世界は平和になった。
覇権を巡る戦争も、剥奪されていた権利もなくなり、何だってできる自由な世界になってから、いくつも時は流れた…。



そんな自由が当たり前になった頃、1組の高校生の男女が、お互いの進路で悩んでいた。
「う~ん。やっぱ進学かなぁ。大学には行っとかないと、就職厳しいし。」
「うん…。そうだね。でも行きたいとことかある?」
「別にない。何になりたいのかもいまいち決まんないし…。」
「俺もそうだよ。将来何になるのかなんて到底考えつかないし…。」
「どの大学にはいればいいのかなぁ…。」
「さぁ…。誰かがパッと決めてくれればいいのにね。」
「あはは!そしたら確かに楽だよね!こうやって悩むこともないし。いっそのこと、恋人も決めてくれたらなあ、なんて…。」
「あ、はは…。」
男の方は顔を赤らめた。男は以前から女の方を好いていたのだ。一方、女の方はそういう色恋に全く興味がなかった。
男は女に自分の想いをいつか伝えようと、何年も考えていた。
「あ、あのさ。俺、ずっとお前のこと…。」
「……。あ、何?ごめん、聞いてなかった。もう一回言って?」
「あ、いや。やっぱ何でもないや…。」
「?    変なの。」
今日も結局言えなかったようだ。




ところ変わって、どこかの家。母親が我が子を叱っていた。
「あなた、なんでこんな点数しか取れないの!?」
「…ごめんなさい。」
「いい?今はまだ遊んでられるけど、このままじゃ駄目なのよ!勉強ができなきゃ、この先苦労するんだから!」
「…ごめんなさい。」
「わかってるの!あなたの為に言ってるのよ!」
「…ごめんなさい。」
「もういいわ!部屋にこもって反省なさい!」
母親にそう言われると、子供はおとなしく自室に戻っていった。
この子が持ってきたテストの点は決して悪くなかった。でも母親は不充分だという。
「もっと頑張れば、許してくれるかなあ…?」
薄暗い部屋の天井を見つめながら、子供は一人呟いた。


またまたところ変わって、どこかのオフィス。
上司が部下に叱っていた。

「またやらかしたのか!?何度同じことを言わせる気だ!」
「申し訳ございません!次からは…!」
「そのセリフも何度目だ!お前の次はいつ来るんだ!えっ!?」
「も、申し訳ございません!」
言うだけ言って満足したのか、上司はどこかへといった。


「くそ!あの野郎、いつも俺のミスばかり指摘しやがって!」
「まあ、あそこまで言わなくてもねえ…。」
「もう我慢できない!この会社やめてやる!」
「君、先月も同じこと言ってたけど、ここ辞めて、何するつもりなの?」
「え?う~ん…。」
「決めてないのね…。」
「色々探してるんだけど、なかなかいいの見つからなくて…。」
「本当は探してないんでしょ?」
「……。」
図星である。この会社員は辞める辞めると言っておきながら、そのための行動を移せていなかった。結局いつもの休暇を過ごすことに甘んじていた。



…世界は平和になった。
人々は自由になったはずだった。
でも世界にはまだまだ不自由にあふれていた。

それでも人々は生き続ける。このどこまでも「不」自由な世界の中で…。
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