がらくたのおもちゃ箱

hyui

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CHANGE THE WORLD

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俺はこの世界に絶望していた。
とにかく絶望していた。
くだらないこの世界を何とかして変えてやりたかった。


 そんな訳で、俺は神を喚び出すことにした。
なぜそんな方法を知っているのか?そんな事は聞かないでほしい。重要なのは世界を変えることだ。そこに行き着くまでのは過程は問題じゃない。



俺は部屋の中央に魔方陣を描き、召喚の呪文を唱えた。
程なくして神は現れた。
それはもう何というか、神々しいまでの、神だった。
……当たり前かもしれないが、とにかく神々しい感じだった。

俺は神に訴えた。
「神よ!お願いします!この世界を変えて下さい!」 
だが神は俺の訴えに怪訝な顔をするだけだった。
『汝、何故世界を変えようとするのか?』
「この世界は汚れきっています!上に立つのは教養も信念のない政治家ばかり。あちらこちらでは、やれものが盗まれた、やれ人が殺された、などと悪事が後を絶たず、正直者は馬鹿を見るだけ。こんな世界に私は嫌気が差したのです。」
『ふむ。しかし、そうでない者もいるであろう?』
「綺麗事を言う連中もいる。だが皆、腹の底では舌を出しているに決まってる。どいつもこいつも自分さえ良ければいい。今はそんな世の中なのです!私もつい先刻、信じていた友人に裏切られ、窮地に立たされています!」
『ふうむ……。』
神は俺の申し出にどうしたものかと渋い顔をしていた。
『……先程から、お前は周りが悪いと周囲の所為にばかりしているように見受けられるが……。自分の力でどうにかしようという気は無いのか?』
「私一人の力で変えられるならとっくにそうしています!しかし神よ!この私一人がいくら声高に叫んだところで何が変えられるでしょうか⁉︎」
『……お前の望む世界を作るなら、お前自身が動くべきだろう。私が仮に今この世界を変えたとして、それがお前の望む世界になるかどうか……。』
「構いません!私はもう、こんな世界でこれ以上生きていたくないんです!」
俺の必死の訴えに、神はしばし押し黙っていたが、やがて深く溜息を吐き出した。
『……はあ、めんどくせ……。』
「……は?」
『……あ!いやいや!わかった!まあ、そこまで言うなら変えてやろうじゃないか!外に出てみるといい!新しい世界がお前を待っているぞ!』
「本当ですか⁉︎おお、神よ!感謝いたします!」
『うむ!では、さらば!』
そう言って神は消えていった。


やった!俺の願いが通じたのだ!
なんか小言が聞こえた気がするがまあいい。
神が変えたと言ったのだから間違いない。世界は変わったのだ。

どんな世界になったのだろう?
善人が治める善意に満ち溢れた世界になったのだろうか?
俺は期待と不安を胸に、部屋の扉を開いていた。

そして一瞬にして理解した。

世界は確かに変わっていた。
空は紅く染まり、意味不明な文字の羅列を貼り付けた建物が並び、道行く人々はその6本の脚を器用に動かしてあちらこちらに蠢いていた。

それは俺の望んだ世界じゃなかった。
戻ろうと思ったがもう遅い。
すぐ後ろにあったはずの俺の自宅も消えている。
もう戻れない。
俺はここで死ぬまで生きるしかないのだ……。
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