味の思い出

hyui

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家族の皿 前編

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料理において、皿はとても重要な役割を果たしている。
盛られた料理を一層美味しそうに見せたり、内装に合わせたデザインで雰囲気を演出させる事だってできる。
そう。「皿」はある種のメッセージを食べる人に与えることができる。あの日の「皿」にも、きっとメッセージが込められていたのだろう。



大学4回生になるころ、父が再婚する事になった。
2度目の再婚。私にとっては3人目の母になる。
歳は父とあまり変わらない少し小柄な気立のいい女性といった感じで、明るいイメージだった。2人の連れ子がおり、私の家族は一気に賑やかになった。
一緒に住むことに伴い、家もリフォームで一新し、明るい日の射す家となった。

私は嬉しかった。
いつかのように、優しい母ができ、妹もできたのだと。
そして、私のために苦労し続けた父が、ようやく幸せになる番がやってきたのだと。
そう信じて疑わなかった。

だが、そんな期待は脆くも崩れ去った。

一緒に暮らすようになって数日が経ったころ、父が何やら泣いている母に寄り添っていた。
「どうしたの?」
と私が尋ねると、母は振り返って私をキッと睨み、
「何よ!これ!」
と、私の部屋にあったゴミを突き出してきた。その中には、まあ思春期特有のゴミがあったわけだが、私は言い淀み、
「えーっと……。」
と答えに詰まってるうちに、母は部屋を出て行ってしまった。
父が慰めに追いかけていったが、部屋の外から聞こえたあの叫び声を、私は今でも忘れられない。

「あんな子と、これからどうやって暮らしていけばいいのよ!」

それから、母の私に対する態度は厳しいものになった。
まず洗濯物は家族と別にされ、私のものと思われるゴミ(数本の抜け毛程度のもの)を見つけるとすぐさま悲鳴をあげて私を罵るようになった。
あいさつなどは無視され、私が部屋から出てきた途端に自分の部屋に戻って鍵をかけ口を聞かないようになった。
風呂などは一番最後に入るように言われ、追い焚きも禁止されたので、私は毎晩冷たい水風呂同然の風呂に、震えながら浸かっていた。

極め付けが「皿」だった。
食事の時、皆揃って同じデザインの皿を使っていたのだが、私の皿だけ違う皿だった。
まるで、「お前は違う」、「お前はのけものだ」と言わんばかりに。

その母とその連れ子の私に対する態度は日に日に冷たくなり、父も見かねて私と話をしてくれたが、
「もっときをつけろ。」
「もっと明るくなれ。」
と、母の側に立った意見ばかりだった。

そうだ。
私が悪いのだ。
わがままを言ってはいけない。
父がやっとつかんだ幸せなのだから、私がぶち壊しにしてはいけない。

そう思い、なんとか自分自身を変えるよう努力した。
明るい声で声をかけて、姿勢も前のめりでなく胸を張って…などと色々やってはみた。
始めは上手くいくようにみえても、少しでも気に入らない点を見つけたら、母…あの女は難癖をつけて私の全てを否定した。
その度に、私はダメだったところを修正してなんとか変わろうとする。その繰り返しだった。

いつからだろうか。
家は前よりも広くなったのに、私には狭く感じた。
家族は増えたはずなのに、2人暮らしだった時よりも私には孤独に感じた。
「いなくなりたい」
「消えてしまいたい」
いつしかそればかり考えるようになった。

転機が来たのはその年の12月頃。
九州への転勤が決まり、私は家を出ることになった。
初めての一人暮らしで不安も多かったが、私には正直ホッとした部分が多かった。
引っ越しの日、あの女は私の部屋にあったものを一つ残らず処分した。祖母が亡くなる前に私に買ってくれたベッドも、勉強机も、何もかも。
そうしてせいせいした、といった顔で私を笑いながら見下ろしていた。

実家を離れてからも、毎月給料日に仕送りをするようにせびり、始めのうちは毎月私も送っていたのだが、生活も苦しくなり、帰るつもりもない家のために何で無理をしてまで金を送らないといけないんだ、と送らないようになった。

そうして家を出て数年。私は年末年始に仕事があることも相まって実家に帰らなくなっていた。いや、避けていたというべきか。
もうあの狭苦しい空間に戻りたくないと思っていた、そんな矢先、早朝の私の携帯に一通の電話がかかった。よくお世話になっていた近所のおばさんからだ。
何だろう、と思い電話に出てみると、
「お父さんの車が峠で見つかったよ!」
と切羽詰まった声でそう告げてきた。

後編に続く
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