味の思い出

hyui

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ヤクルト

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私はタバコというものが嫌いだ。
むしろ憎悪すら感じる。

まずタバコにはいいところなどない。
値段は年々高くなっていくし、体にも悪い。
周りの人にも副流煙で迷惑をかける。
しかも中毒性があるから止めることも難しい。
吸えるところもどんどんと減り、タバコを流行らせる存在であるタバコ協会にさえ、「あなたの健康を損ないます。」と差し控えるように言われる始末。

とにかく私はタバコが大嫌いだ。
それを決定づけた出来事が幼少期にあった。



小さい頃、私には祖父がいた。
厳しかった祖母に対して、祖父は優しかった。穏やかで、よく笑い、そしてロマンチストだった。
夏の夜などはよく庭に出て星空を眺めていた。祖父が好きだった私も、よく一緒に庭に出て地べたに寝っ転がって満点の星空を堪能したものだ。

そして星空を眺めて家の中に戻ったら「ヤクルト」を飲む。これがルーティンになっていた。
我が家はヤクルトを配達されるように契約されていて、いつも3本のヤクルトが届いていた。
とはいえ飲むのはいつも私と祖父だけだったので1本余ってしまう。
「ほれ。もう1本飲みい。」
と祖父は勧めるが、私はいつも断った。
ヤクルトが嫌いだからではない。
片方が多く飲むというのが不公平だと思ったからだ。
だからそんな時はいつも、「半分こ」と言って半分ずつヤクルトを祖父と飲んだ。そんな様子を、祖父はいつも嬉しそうに笑っていたような気がする。

さてそんな祖父なのだが、どうしてもダメなところがあった。
それがタバコである。
当時は分煙という発想が無かったので、リビングだろうがキッチンだろうが、構わずスパスパ吸っていた。おかげで部屋中にタバコの煙がこもってしまい、私はいつもゴホゴホとせきこんでいた。
しかも家族の中でタバコを吸うのは祖父だけだった。けれども祖父は「それがどうした」といった体で食事中でも、テレビを見ながらでも気づけばスパスパ吸っている。

そんな日を毎日やっていたら、当然しっぺ返しがやってくる。
ある日のこと、祖父が病院で診察してもらうと肺がんであることがわかった。
原因は明らか。「タバコ」だ。
祖父は医者にタバコを控えるように言われた。
だが祖父は「それがどうした」と変わらずスパスパ吸っていた。
さすがに私も、
「タバコダメ!やめて!」
と注意したが、祖父は笑って
「一本。一本だけ。」
と言って吸うのをやめなかった。

結果どうなったか。
肺がんはどんどんと悪化し、とうとう祖父は息を引き取ってしまった。69歳だった。
相当悲しかったんだろう。この祖父の亡くなった年齢はいまだに覚えている。祖父が亡くなってから私は毎日のように泣きじゃくった。
食事の時に祖父がいないのが悲しい。
夏の夜、一緒に星空を見ていた祖父がいないのが悲しい。
いつものようにヤクルトを分け合う祖父がいないのが悲しい。

人というものは勝手なもので、その人を失ってから初めてその人の価値に気づくものだ。
私はその時初めて、私にとって祖父という存在がどれだけ大きな存在だったのかに気づいた。

それ以来、私はタバコが嫌いだ。
今後絶対に吸うこともないだろう。
タバコは肺がんを始め、舌がんや口腔、咽頭がんなど様々ながんの発症リスクを高めてしまう。百害あって一利なしだ。
タバコを吸うくらいなら私たちはヤクルトを飲めばいいのだ。30年以上経っても変わらない味。変わらないフォルム。そして健康をサポートしてくれる素晴らしい飲み物だ。
それを分け合って飲める仲間や家族がいればなおよいだろう。
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