生まれ変われたのなら…

ERIKA

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プロローグ

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ここは音楽の街

俺ことアーサはある音楽家の助手兼弟子で

彼の娘の付き人だ

その娘の名はセツリアだ

彼女は誰にも負けない明るいブラウンの髪をしていて

愛らしい見た目をしていた

ただ唯一欠点があるとしたら

「アーサはやくきて!」

「今参りますお嬢様、そんなに急かさずとも」

「またそんな話し方する!同い歳なのに~」

そう、お嬢様という立場なのに俺に対してタメ口で話せとかいうのだ

それが自分の父親に知れたらどうするんだ

と俺は思いつつセツリアの元へ向かう

俺が現れるとぷくっと頬をふくらませて「遅い!」

と怒るのだ

その姿は本当に可愛らしかった

だから俺は密かにセツリアを慕っていた


セツリアはよく父親と演奏会を行い

歌を披露していた

透き通るソプラノの声はとても美しく

お客様からも絶賛されていた

俺は時々ピアノを披露していた

師であるセツリアの父親は有名なピアニストでもあり作曲家ということもあったので

俺は緊張しつつもしっかり演奏を行うことが出来る

それに合わせてセツリアが歌うのだ

「まあまあ、あのお若いお二人の演奏とても素敵ですわ」

「なんとも聴きごたえのある演奏でしょう!セツリア様のお父様も鼻高々ですわね」

マダム達の噂間話も広がるため

師は本当に上機嫌だった


演奏が終わると俺とセツリアは先に屋敷に戻る

2人で反省をする

ここがよかった

あそこは悪かったという具合に

「もうアーサったら途中意地悪したでしょ」

「なんのことでしょう?」

「またその話し方する!」

またいつものようにぷりぷりとし始めるセツリア

俺は面白くなってついからかった

「途中から自分の世界入り込んでしまうのはお前の悪い癖だ、だから俺がもどしてるんだろ?」

「そういう!でも歌いやすいのは変わりないんだよね……アーサと演奏してるとさすごく歌いやすいの」

そりゃそうだ、セツリア似合わせられるのは俺と師だけだ

そう思いながら楽譜とかをしまうとセツリアはまた歌いだした

『2人で海辺へ行こうそこは2人だけの世界だから』

そういう意味の歌だ

屋敷の窓辺からは海が見える

セツリアはその景色が好きでよく海辺まで散歩に行くのだ

俺は何かあったらいけないので必ず着いていく

それに彼女の歌っているその歌は俺と彼女しか知らない歌

「好きだなその歌」

「うん、私たちの歌だから…」

彼女が作詞し俺が作曲した歌

『海辺の歌』

彼女はそれを本当に気に入っていた

そして俺といる時しか歌わなかった

歌い終わると必ず俺に向かって笑うのだ

その笑顔は本当に美しい

だからだ……身分が違うとわかっていても

彼女を好きになってしまったのは…

愛してしまったのは


俺と彼女がそういう仲になったのは

お互い17になる年だった

2人で海辺に散歩していた時だ

彼女は海を眺めながら何か思い詰めている感じだった

「どうした、なんか悩んでるのか?」

「アーサ……いやね、昨日お父様がねそろそろ私にも縁談をって話してるのを聞いてしまったの」

それを聞いて俺は一瞬固まってしまった

いつかはその話が来るとわかっていたが、本当にその時期が来たのだ

彼女は俯いていた

「そ、そうか……まぁそんな歳だもんな」

「そうね、でも私よく分からない人のところとか貴族とか偉そうな人の所にはいきたくないの」

そう言うと涙を流しているのがわかった

そして次の瞬間彼女は

「誰かのところに嫁ぐなら私…アーサと一緒にいたい!アーサのこと好きだから…アーサ…私…」

と泣きながら俺のところに縋り付くようにくっついてきた

俺はどうしていいか分からなかった

好きな人に好きだと言われて嬉しくないはずがない

でも…

許されることじゃないのも分かっていた

受け入れたい、でも受け入れるべきじゃない

その葛藤が強く抱き締めてやるべき手にチカラが入らなかった

「セツリア…」

彼女は泣き続けながら何度も俺の名前を呼んでいた

願望には勝てなかった

俺はそのまま彼女を抱きしめてしまった

「俺がどれだけ我慢してると思ってんだ…俺とお前じゃ身分が違いすぎる」

「……わかってる」

「でも、俺もお前と居たいよずっと一緒にいたい」

「うん」

抱きしめる力を強めてしまいつつも

抱きしめてる温もりはとても優しくて心地が良かった

それから俺たちは秘密の交際を始めた


俺たちふたりはとてもしあわせだった

お金を貯めてここじゃないどこかへ2人で行ってそこで暮らす

貧しくても2人でいれればいい

そう考えながら色々計画を練っていた

そして彼女が18の時俺はいつかしっかりしたのをやるからとシルバーのネックレスに花の茎を繋げて作ったリングを彼女に渡した

秘密の婚約だった

彼女は嬉しそうに泣いていた

本当に幸せだった


だが幸せというものはカンタンにも壊れてしまう

とうとうセツリアの父親が縁談を決めてしまったのだ

俺たちは駆け落ちすることに決め準備を練っていた

だがとうとう決行しようとしていた夜

俺が荷物をまとめている間に馬車に彼女たちご乗せられているのが見えた

俺は急いで馬車を追いかけた

あと少しで追いつくという時に馬車が急に止まった

近づいてみるとお付きの男が震え彼女の座っていた席をみていた

俺もその目線の先を見ると彼女が小瓶を持って倒れていた

お付きの男は俺に気がつくと逃げたらしいがそれどころじゃない

セツリアが息をしていない

「セツリア!」

何度も揺らすが返事は無い

体も冷たい

嫌だ…嫌だ!

「嘘だろ……なぁ、おい、起きろよ、起きてくれよ」

目を覚まさないセツリアを抱き抱えてオレは打ちひしがれるしか無かった

彼女の左手にはあのリングがあった

俺がもう少し早く追いついていれば

もっと早くに2人で逃げていれば…

そんな思いが渦巻いていく

彼女はもう一緒になれないのならばと死を選んだのだ…


少しして俺は彼女を抱き抱え『海辺の歌』を歌いながら海辺へ向かった

そして少し残っていた彼女ののんだ瓶を飲んで

彼女を抱き抱えながら海へ入った

暗い夜の中だから境はわからない

その間海へ入った

彼女を強く抱き締めながら俺は沈んでいく

「もし生まれ変わってまた逢えるのならば

その時は一緒になろう俺は必ず君を見つけてみせるから…」そう最後に言いながら…

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