80 / 97
第12章 長女と天才と薬師の狭間
閑話 執務室で記録が暴かれる
しおりを挟む
メイシィが旅立って3か月が経った。
すでに極国に到着してユーファステア侯爵家の長女 ユリリアンナ様にお会いし、お願いごとを叶えるためあちこと奔走している時期だと思う。
ミリステアでは大きな事件もなくメイシィだけがいない静かな日々を過ごしていた。
大きな事件がないだけで、小さな事件は起きているけれど。
「……来たか、クレア」
「お待たせし申し訳ございません。ローレンス様」
「構わない。急な呼び出しに応じてもらい感謝する」
「とんでもございません」
ここはローレンス様の執務室。本棚で壁を埋め尽くされていて圧迫感がある空間に、ソファと机が詰め込まれている。
本棚の中身はほとんどが魔法書で、執務に必要な書類はすべて机の中。拡張した空間にまとめていると教えていただいたことがある。
さらっと『空間を広げる』なんておっしゃっていたけれど、私のような侍従でも察するほどの高等魔法だ。
ローレンス・フェア・ユーファステア。
側近として身を立てたい故に人前で魔法を使うことを好まないこの方は、国王から直々に認められた証の名を持つ一級魔術師という資格をお持ちでいらっしゃる。
「今日、君には協力者として来てもらった」
「はい」
「俺が相談したいことはわかるか?」
「はい、もちろんでございます」
わからないわけがない。私が関係することといえばクリード殿下のこと。
そしてクリード殿下のことといえば……。
「5日目になる小雨を止める方法、だ」
「……はい」
ラジアン殿下に惚れ薬をいただいてから、ぼうっと眺めてお眠りになる習慣は変わらず、クリード殿下はゆっくりと意気消沈していらっしゃった。
ちょうど研究が詰まってしまったことも重なり、お心が沈んだまま日々を送っていらっしゃる。
今回はわかりやすい妖精の暴走ではなかったために、天気予報と乖離《かいり》があるという報告によって判明した。
「どう考えてもメイシィがいない寂しさにあいつが耐えられるわけがない。いずれこうなることはわかっていた」
「同意見でございます。お食事の量やお菓子作りの頻度も減ってしまっておりまして、濃い紅茶の効果も限界かと思われます」
「なるほどな……」
クリード殿下がお生まれになり、メイシィと出会う前。
不思議なことが起きるたびに陛下をはじめ王族と側近のみなさまはこうやって話し合いを繰り返してきたという。
階級など関係なく頭を突き合わせ、全員が同じ椅子で同じ机を囲みあれやこれやと話し合う。
他国ではまずありえない光景を繰り広げるうちに不思議な一体感が生まれ、災害時にも、平時の施政にも良い影響が出ているとか。
閑話休題。
目の前の問題をなんとかしなければいけないわ。
「メイシィはもう3ヶ月は戻らないだろうとみている。定期的にギルドメンバーのケンに報告の手紙をもらっているが、どう読んでも近況が1か月以上ずれているようでな、実態があいまいだ」
「ここでひとつ殿下のメイシィ欲を満たすものを提供しなければいけませんね」
「メイシィ欲……」
ローレンス様は微妙な顔をしているが表現としては適切だろう。
文句が返ってこなかったのでこのまま利用させてもらうことにする。
「ローレンス様、私にお任せください」
「なんだと?良い案があるのか」
「ええ、いつか出そうと思っていたとっておきでございます。本当はできる限り温存しておきたかった手ですが、仕方ありません」
その手を説明すると、ローレンス様は目を見開いた後に、頭を抱えた。
「確かに良い手だが……雨や止むのか?悪化しそうな予感しかしないのだが」
「それでも止むなら良いのではないでしょうか。多少の一時的な悪化くらい、城の人間は慣れております」
一般国民の者たちが巨城に務めるには、とある必須条件がある。
きっとローレンス様はご存じないだろう。
『傘の術』
頭上にバリアを展開することで、いろいろなものから身を守る術だ。
いつから条件となったかはあえて伏せるけれど、急な雷雪雨嵐が起きようと業務を淡々と進めることができるか。
城勤めの重要な雇用ポイントである。
―――――――――――――――――
その日の午後、クリード殿下はご自身の執務室でいつもより少ない書類を片付けていらっしゃった。
面会の予定もなく、研究に時間を回すかゆっくりお休みになるか、自由に決めて良い状況だ。
だからこそついいろいろなことを考えてしまうのだろう。雨はしとしとと降り続けている。
「失礼いたします。クリード殿下。紅茶とお菓子をお持ちしました」
「ああ、休憩しようか」
相変わらず目をあわせることなく静かに言うと、早々にペンを置いてソファに移動する。
今日は過去にメイシィと召し上がったエスプレッソケーキだ。
濃い紅茶と共にお渡しすると、無言で口にし始めた。
「ローレンス様から伝言を頂戴しました。メイシィ様は無事に極国に到着し、ユリリアンナ様のご子息と魔法を循環する練習をされているそうです」
「そうか……『魔脈閉塞《まみゃくへいそく》』になっていたというのは本当だったみたいだね」
「はい。同じ意見をおっしゃっておりました」
「メイシィ……元気にしているのだろうけれど、やっぱり寂しいな」
クリード殿下は手を止めて、窓を見上げた。
すぐさま強くなった雨足が窓に当たって流れていく。
はあ、と殿下の大きなため息が聞こえた。
「簪《かんざし》を作って贈ったのは正解だった。きっと向こうでも毎日使ってくれているのだろうな。はあ……だいぶ慣れたとはいえ最初は一束まとめ漏れていることが多くて本当に愛らしくて……。引っ張っていたずらすれば恥ずかしそうに留めなおそうとしてね、簪を抜いた瞬間に広がる髪がふわふわで可愛らしくて触りたくてたまらない」
また始まったわ。私は受け流す体勢に切り替えた。
なにせこの話はもう両手で足りないほど聞いている。
「メイシィ……」
「殿下、今日は私から贈り物がございます」
「ん?」
お茶が終わりましたらお持ちしますので、しばしお待ちください。
そう言うと、殿下は不思議そうな表情で首を傾げた。
―――――――――――――――――――――
「こ、こ、これは……!!」
それを見て、クリード殿下はぼすんと音を立ててソファに倒れこんだ。
反応が大げさすぎる……ただの本なのに。
殿下にそれを手渡してみれば、受け取ってくださるもののガタガタと震えが止まらず開けない。
「僕は学校に通わなかったけれど聞いたことがある、まさか、これは」
「はい。メイシィ様の映写記録本《卒業アルバム》です」
私とメイシィが出会った学校では、卒業するとひとりひとりに行事や授業の記録が写真でまとめられた本を渡される。
もちろんメイシィも受け取っている、そしてあまり興味ない彼女のことだからと勝手に寮に入ってひっくり返してみればすぐに見つかった。
拝借してきたのである。本人にはいつか言うわ。覚えていたら。
クリード殿下が持っているのを目撃しない限り、バレない気がするけれど。
「なんっ……」
「差し上げます。メイシィ様の12歳から16歳までの写真がぎっしりと詰まっておりますよ」
「何ということだ……、いいのか?本当に?」
「ええ、特に12歳の入学式のメイシィ様は……とても髪が長い頃です」
「ウッッ」
表紙をめくって1秒、急に空が晴れた。
「これは……人間なのか?」
「人間です。今よりずっとお嬢様らしい容姿でしたので、目立っておりました」
「人形よりも愛らしい人がこの世に存在していたとは……」
「ええそうですね」
もう1枚ページをめくると、窓から日差しが降り注ぎ始めた。
「これは討伐訓練の写真かな?」
「14歳くらいかと思われます。この頃から1年ほどは討伐訓練が多かったので、一番髪が短いです」
野宿の訓練もあるので長い髪は不便だったようですね。という言葉は耳に届いていないらしい。
研究資料よりも没頭した様子のクリード殿下に、私はなんだか面白くて口角が上がっている。
「凛々しい表情だね。今のメイシィになってきた感じがする。確か討伐訓練でかなり良い成績を残して薬師院に就職することになったらしいじゃないか」
「ええ、支援職にもかかわらず史上最高成績を残したそうです。特に魔法の技術の点数が高かったので、本人は不満そうでした」
「メイシィが不満?つまり……むくれた表情をしていたということかい?」
「まあ……そうですね」
「むくれたメイシィ……見たい、見てみたい。全力でご機嫌とりをしたい……」
日差しはそのままに、また雨粒が窓を濡らし始めた。
「ひとまず最後のページまで飛ばしてみていただけますか?残りはゆっくりお愉しみください」
「最後だね?ここか……えっ」
ぴたりと雨が止んだ。
天気が忙しすぎる、というより妖精が忙しそうだ。疲れないのかしら。
「なっ、なななな」
「卒業式は私が何度もお願いしてようやく髪をいじってよいと許してもらったのです。なので、編み込みを駆使してお団子にさせていただきました」
「クレア!!メイシィが帰ってきたらすぐに同じものを!!」
「お任せください。クリード殿下」
宝石で装飾されるものの、後ろでまとめた髪型は王族の女性が公務に参加する際の伝統的な格好。
もしメイシィが殿下と婚姻することになれば日常的に見ることになるけれど、未来を妄想するには十分な素材。
これでもう数か月もたないだろうか。現状の問題を解決することはできたようだけれど、あとはクリード殿下のお心次第。
メイシィが帰ってくるのが楽しみだわ。と私も思い始めたその時だった。
ゴンゴンと強くノックされ、遠慮なく開かれる扉。
驚いて振り返った私たちの視線の先には、息を切らしたローレンス様がいらっしゃった。
「クリード!すまないが緊急事態だ!」
「どうしたんだいローレンス、珍しいじゃないか」
「今すぐ陛下と面会してくれ!手紙をお送りいただけないか説得してもらえないか!!?」
手紙?
珍しく私とクリード殿下の目線が合う。
「極国から早便が来たんだ。
天帝の弟がメイシィを嫁にすると宣言したらしい!」
「「……は?」」
「止めなければ……クリード、なんとしても止めなければ。
俺の力じゃ……どうにもできない……頼む……」
せっかく晴れた空に、分厚い雲が覆い始める。
雨は今日もしとしと降っている。
すでに極国に到着してユーファステア侯爵家の長女 ユリリアンナ様にお会いし、お願いごとを叶えるためあちこと奔走している時期だと思う。
ミリステアでは大きな事件もなくメイシィだけがいない静かな日々を過ごしていた。
大きな事件がないだけで、小さな事件は起きているけれど。
「……来たか、クレア」
「お待たせし申し訳ございません。ローレンス様」
「構わない。急な呼び出しに応じてもらい感謝する」
「とんでもございません」
ここはローレンス様の執務室。本棚で壁を埋め尽くされていて圧迫感がある空間に、ソファと机が詰め込まれている。
本棚の中身はほとんどが魔法書で、執務に必要な書類はすべて机の中。拡張した空間にまとめていると教えていただいたことがある。
さらっと『空間を広げる』なんておっしゃっていたけれど、私のような侍従でも察するほどの高等魔法だ。
ローレンス・フェア・ユーファステア。
側近として身を立てたい故に人前で魔法を使うことを好まないこの方は、国王から直々に認められた証の名を持つ一級魔術師という資格をお持ちでいらっしゃる。
「今日、君には協力者として来てもらった」
「はい」
「俺が相談したいことはわかるか?」
「はい、もちろんでございます」
わからないわけがない。私が関係することといえばクリード殿下のこと。
そしてクリード殿下のことといえば……。
「5日目になる小雨を止める方法、だ」
「……はい」
ラジアン殿下に惚れ薬をいただいてから、ぼうっと眺めてお眠りになる習慣は変わらず、クリード殿下はゆっくりと意気消沈していらっしゃった。
ちょうど研究が詰まってしまったことも重なり、お心が沈んだまま日々を送っていらっしゃる。
今回はわかりやすい妖精の暴走ではなかったために、天気予報と乖離《かいり》があるという報告によって判明した。
「どう考えてもメイシィがいない寂しさにあいつが耐えられるわけがない。いずれこうなることはわかっていた」
「同意見でございます。お食事の量やお菓子作りの頻度も減ってしまっておりまして、濃い紅茶の効果も限界かと思われます」
「なるほどな……」
クリード殿下がお生まれになり、メイシィと出会う前。
不思議なことが起きるたびに陛下をはじめ王族と側近のみなさまはこうやって話し合いを繰り返してきたという。
階級など関係なく頭を突き合わせ、全員が同じ椅子で同じ机を囲みあれやこれやと話し合う。
他国ではまずありえない光景を繰り広げるうちに不思議な一体感が生まれ、災害時にも、平時の施政にも良い影響が出ているとか。
閑話休題。
目の前の問題をなんとかしなければいけないわ。
「メイシィはもう3ヶ月は戻らないだろうとみている。定期的にギルドメンバーのケンに報告の手紙をもらっているが、どう読んでも近況が1か月以上ずれているようでな、実態があいまいだ」
「ここでひとつ殿下のメイシィ欲を満たすものを提供しなければいけませんね」
「メイシィ欲……」
ローレンス様は微妙な顔をしているが表現としては適切だろう。
文句が返ってこなかったのでこのまま利用させてもらうことにする。
「ローレンス様、私にお任せください」
「なんだと?良い案があるのか」
「ええ、いつか出そうと思っていたとっておきでございます。本当はできる限り温存しておきたかった手ですが、仕方ありません」
その手を説明すると、ローレンス様は目を見開いた後に、頭を抱えた。
「確かに良い手だが……雨や止むのか?悪化しそうな予感しかしないのだが」
「それでも止むなら良いのではないでしょうか。多少の一時的な悪化くらい、城の人間は慣れております」
一般国民の者たちが巨城に務めるには、とある必須条件がある。
きっとローレンス様はご存じないだろう。
『傘の術』
頭上にバリアを展開することで、いろいろなものから身を守る術だ。
いつから条件となったかはあえて伏せるけれど、急な雷雪雨嵐が起きようと業務を淡々と進めることができるか。
城勤めの重要な雇用ポイントである。
―――――――――――――――――
その日の午後、クリード殿下はご自身の執務室でいつもより少ない書類を片付けていらっしゃった。
面会の予定もなく、研究に時間を回すかゆっくりお休みになるか、自由に決めて良い状況だ。
だからこそついいろいろなことを考えてしまうのだろう。雨はしとしとと降り続けている。
「失礼いたします。クリード殿下。紅茶とお菓子をお持ちしました」
「ああ、休憩しようか」
相変わらず目をあわせることなく静かに言うと、早々にペンを置いてソファに移動する。
今日は過去にメイシィと召し上がったエスプレッソケーキだ。
濃い紅茶と共にお渡しすると、無言で口にし始めた。
「ローレンス様から伝言を頂戴しました。メイシィ様は無事に極国に到着し、ユリリアンナ様のご子息と魔法を循環する練習をされているそうです」
「そうか……『魔脈閉塞《まみゃくへいそく》』になっていたというのは本当だったみたいだね」
「はい。同じ意見をおっしゃっておりました」
「メイシィ……元気にしているのだろうけれど、やっぱり寂しいな」
クリード殿下は手を止めて、窓を見上げた。
すぐさま強くなった雨足が窓に当たって流れていく。
はあ、と殿下の大きなため息が聞こえた。
「簪《かんざし》を作って贈ったのは正解だった。きっと向こうでも毎日使ってくれているのだろうな。はあ……だいぶ慣れたとはいえ最初は一束まとめ漏れていることが多くて本当に愛らしくて……。引っ張っていたずらすれば恥ずかしそうに留めなおそうとしてね、簪を抜いた瞬間に広がる髪がふわふわで可愛らしくて触りたくてたまらない」
また始まったわ。私は受け流す体勢に切り替えた。
なにせこの話はもう両手で足りないほど聞いている。
「メイシィ……」
「殿下、今日は私から贈り物がございます」
「ん?」
お茶が終わりましたらお持ちしますので、しばしお待ちください。
そう言うと、殿下は不思議そうな表情で首を傾げた。
―――――――――――――――――――――
「こ、こ、これは……!!」
それを見て、クリード殿下はぼすんと音を立ててソファに倒れこんだ。
反応が大げさすぎる……ただの本なのに。
殿下にそれを手渡してみれば、受け取ってくださるもののガタガタと震えが止まらず開けない。
「僕は学校に通わなかったけれど聞いたことがある、まさか、これは」
「はい。メイシィ様の映写記録本《卒業アルバム》です」
私とメイシィが出会った学校では、卒業するとひとりひとりに行事や授業の記録が写真でまとめられた本を渡される。
もちろんメイシィも受け取っている、そしてあまり興味ない彼女のことだからと勝手に寮に入ってひっくり返してみればすぐに見つかった。
拝借してきたのである。本人にはいつか言うわ。覚えていたら。
クリード殿下が持っているのを目撃しない限り、バレない気がするけれど。
「なんっ……」
「差し上げます。メイシィ様の12歳から16歳までの写真がぎっしりと詰まっておりますよ」
「何ということだ……、いいのか?本当に?」
「ええ、特に12歳の入学式のメイシィ様は……とても髪が長い頃です」
「ウッッ」
表紙をめくって1秒、急に空が晴れた。
「これは……人間なのか?」
「人間です。今よりずっとお嬢様らしい容姿でしたので、目立っておりました」
「人形よりも愛らしい人がこの世に存在していたとは……」
「ええそうですね」
もう1枚ページをめくると、窓から日差しが降り注ぎ始めた。
「これは討伐訓練の写真かな?」
「14歳くらいかと思われます。この頃から1年ほどは討伐訓練が多かったので、一番髪が短いです」
野宿の訓練もあるので長い髪は不便だったようですね。という言葉は耳に届いていないらしい。
研究資料よりも没頭した様子のクリード殿下に、私はなんだか面白くて口角が上がっている。
「凛々しい表情だね。今のメイシィになってきた感じがする。確か討伐訓練でかなり良い成績を残して薬師院に就職することになったらしいじゃないか」
「ええ、支援職にもかかわらず史上最高成績を残したそうです。特に魔法の技術の点数が高かったので、本人は不満そうでした」
「メイシィが不満?つまり……むくれた表情をしていたということかい?」
「まあ……そうですね」
「むくれたメイシィ……見たい、見てみたい。全力でご機嫌とりをしたい……」
日差しはそのままに、また雨粒が窓を濡らし始めた。
「ひとまず最後のページまで飛ばしてみていただけますか?残りはゆっくりお愉しみください」
「最後だね?ここか……えっ」
ぴたりと雨が止んだ。
天気が忙しすぎる、というより妖精が忙しそうだ。疲れないのかしら。
「なっ、なななな」
「卒業式は私が何度もお願いしてようやく髪をいじってよいと許してもらったのです。なので、編み込みを駆使してお団子にさせていただきました」
「クレア!!メイシィが帰ってきたらすぐに同じものを!!」
「お任せください。クリード殿下」
宝石で装飾されるものの、後ろでまとめた髪型は王族の女性が公務に参加する際の伝統的な格好。
もしメイシィが殿下と婚姻することになれば日常的に見ることになるけれど、未来を妄想するには十分な素材。
これでもう数か月もたないだろうか。現状の問題を解決することはできたようだけれど、あとはクリード殿下のお心次第。
メイシィが帰ってくるのが楽しみだわ。と私も思い始めたその時だった。
ゴンゴンと強くノックされ、遠慮なく開かれる扉。
驚いて振り返った私たちの視線の先には、息を切らしたローレンス様がいらっしゃった。
「クリード!すまないが緊急事態だ!」
「どうしたんだいローレンス、珍しいじゃないか」
「今すぐ陛下と面会してくれ!手紙をお送りいただけないか説得してもらえないか!!?」
手紙?
珍しく私とクリード殿下の目線が合う。
「極国から早便が来たんだ。
天帝の弟がメイシィを嫁にすると宣言したらしい!」
「「……は?」」
「止めなければ……クリード、なんとしても止めなければ。
俺の力じゃ……どうにもできない……頼む……」
せっかく晴れた空に、分厚い雲が覆い始める。
雨は今日もしとしと降っている。
11
あなたにおすすめの小説
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
※完結しました。
離婚約――それは離婚を約束した結婚のこと。
王太子アルバートの婚約披露パーティーで目にあまる行動をした、社交界でも噂の毒女クラリスは、辺境伯ユージーンと結婚するようにと国王から命じられる。
アルバートの側にいたかったクラリスであるが、国王からの命令である以上、この結婚は断れない。
断れないのはユージーンも同じだったようで、二人は二年後の離婚を前提として結婚を受け入れた――はずなのだが。
毒女令嬢クラリスと女に縁のない辺境伯ユージーンの、離婚前提の結婚による空回り恋愛物語。
※以前、短編で書いたものを長編にしたものです。
※蛇が出てきますので、苦手な方はお気をつけください。
黄金の魔族姫
風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」
「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」
とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!
──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?
これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。
──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!
※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。
※表紙は自作ではありません。
捨てられ聖女は、王太子殿下の契約花嫁。彼の呪いを解けるのは、わたしだけでした。
鷹凪きら
恋愛
「力を失いかけた聖女を、いつまでも生かしておくと思ったか?」
聖女の力を使い果たしたヴェータ国の王女シェラは、王となった兄から廃棄宣告を受ける。
死を覚悟したが、一人の男によって強引に連れ去られたことにより、命を繋ぎとめた。
シェラをさらったのは、敵国であるアレストリアの王太子ルディオ。
「君が生きたいと願うなら、ひとつだけ方法がある」
それは彼と結婚し、敵国アレストリアの王太子妃となること。
生き延びるために、シェラは提案を受け入れる。
これは互いの利益のための契約結婚。
初めから分かっていたはずなのに、彼の優しさに惹かれていってしまう。
しかしある事件をきっかけに、ルディオはシェラと距離をとり始めて……?
……分かりました。
この際ですから、いっそあたって砕けてみましょう。
夫を好きになったっていいですよね?
シェラはひっそりと決意を固める。
彼が恐ろしい呪いを抱えているとも知らずに……
※『ネコ科王子の手なずけ方』シリーズの三作目、王太子編となります。
主人公が変わっているので、単体で読めます。
私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!
近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。
「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」
声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています。
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
契約妻に「愛さない」と言い放った冷酷騎士、一分後に彼女の健気さが性癖に刺さって理性が崩壊した件
水月
恋愛
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件の旦那様視点短編となります。
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
【完結】婚約者なんて眼中にありません
らんか
恋愛
あー、気が抜ける。
婚約者とのお茶会なのにときめかない……
私は若いお子様には興味ないんだってば。
やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?
大人の哀愁が滲み出ているわぁ。
それに強くて守ってもらえそう。
男はやっぱり包容力よね!
私も守ってもらいたいわぁ!
これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語……
短めのお話です。
サクッと、読み終えてしまえます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる