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冒頭
しおりを挟む「いまとなっては笑い話よ。」
スレンダーな白い猫は横たわったネズミに爪を立てた。向かいに座る黒い猫はニコニコと微笑む。白い猫は口を開いて淡々と語り始めた。
「私は1匹の三毛猫をずっと見ていたわ。
一月半ぐらいだったかしら。本当に好きだったの。あの時は大変だった。彼が何を考えてるかさっぱりわからなかった。たくさん悩んだし、感情がシーソーのように揺れたわ。彼は平気で嘘つくから。お客さんは[それは何も考えてないからだ]って言ってたっけ。あれはやめとけって言われたのを覚えてるわ。彼には気をつけろって。周りの評価がよくないのが気になったなぁ。だけど、私の目には彼しかうつらなかった。彼に気に入ってもらうために仕事を頑張ったわ。そしたら大事にしてくれた。甘美な時間だった。生活は狂ったし、良かったのか悪かったのかは正直わからないけれど。」
白い猫はしばらく黙りまた、口を開く。
「ただ彼といれて嬉したかった。後悔してないわ。色々なものをもたらしくれた」
黒い猫が口をはさんだ。
「それは君には知らなくていいものでは?」
白い猫は答えた。
「たしかにね。でも今あなたと話せてるのも彼がいたからよ」
白い猫の手に力が入りネズミは叫んだ。
「助けてくれ!幼い子供がいるんだ!」
黒い猫は問いかけた。
「可能性の塊だ。どうする?」
白い猫は悲しげに答えた。
「ここで食い殺すわ」
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