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廻りだす運命
合わない二人
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テストを終え、リンは街を後にした。
「上手く終われて良かったよ」
リンの心は嬉しさで満ちていた。
最初に会った時は辛そうな人々が自分のお陰で笑顔に変わったことは忘れないだろう。
先生であるメルキにもテレパシーで「合格」と言われ、後は天界に戻るだけだ。
「ラフィは大丈夫だよね」
幼馴染みがテストを上手く切り抜けられるか気がかりだった。
しかしすぐに思い直した。テストは他の生徒が介入するのは禁止だからだ。下手にラフィアの手助けをするとお互いのためにはならない。
リンはラフィアのいる方角を向く。
「ラフィ頑張るんだよ、君ならできるから」
リンは幼馴染みが合格することを願った。幼馴染みならきっと乗り越えられると信じて。
願うのを止め、向きを変えようとした矢先だった。一人の天使がこちらに来るのが確認できた。
「……あれは」
リンは天使を凝視した。ふんわりとした銀髪には見覚えがある。
銀髪の天使もリンの存在に気付き動きを止めた。
「ナルジス」
「誰かと思えばきみか」
リンはナルジスと呼んだ銀髪の天使に少し近づく。
「テストは終わったの?」
「当たり前だ。我が儘な姫の体を癒すのは癪だが簡単だった」
ナルジスは不満げに漏らした。
「そっちはどうだ。まさか不合格じゃないよな」
「合格したよ」
「だよな、きみの頼りない天使とは違うよな」
ナルジスが示しているのはラフィアのことだ。
リンはむっとした。
「僕のことは悪くいってくれて構わないけど、ラフィのことは悪く言うな」
リンは怒り混じりに口走る。
ナルジスは自分が気に入らない相手を侮辱する呼び方をする。それが原因で同級生からは避けられている。
リンもナルジスと会話は出来るだけ回避したかったが、遭遇した以上無視する訳にもいかない。
ナルジスはリンの真横に来た。
「受かったら呼び方を検討してやるよ」
ナルジスはそのまま飛んでいった。
……イヤな奴だ。
リンは内心思った。
本来ならナルジスのいる方向には行きたくないが天界に帰るのはそっちが近いので進まざる得ない。
リンはナルジスの後ろを追う形で羽根を動かした。
下の世界は森と建物が続き、リンは苦手な天使との飛行が続いている。
お互い口を利かないまま、天界に着ければ楽だとリンは思った。
「おい」
ナルジスが背を向けつつも、リンに話しかけてきた。
「何?」
「きみはどうして頼りない天使を支えるんだ」
「どうしたんだよ、急に」
「きみとは同じ教室にいるのに、あまり話さないしな、聞きたくなった」
教室でナルジスと言葉を交わすことは滅多にない。二人きりになるのも正直苦痛である。
「家族だから、とだけ言っておく」
「家族? あいつは血の繋がりは無いんだろ、だったら赤の他人じゃないか」
「そうかもしれないけど、一緒に暮らしていれば絆は生まれるよ」
リンの言葉に、ナルジスは「ふん」と鼻を鳴らす。
「俺には理解できんな」
ナルジスはリンを軽蔑していた。
リンは文句を飲み込んだ。ナルジスに何を言っても無駄だからだ。
聞いた話だと、ナルジスは幼い頃に両親に捨てられ、躾の厳しい親戚に引き取られたという。
なので家族の温もりを知らずに育ってきたのだ。彼の性格も両親の愛がないことが原因のようだ。
「……なあ」
「まだ何かある?」
リンはつっけんどんに言った。ナルジスは振り向く。
「良かったら俺と友達にならないか」
急なことに、リンは戸惑いを覚えた。
なぜそんな事を口走るのか分からない。
「どうして?」
「きみの事は前から興味があったからな、俺より劣るが頭が良くて、先生にも好かれてるからな」
癪に障る言い方はともかく、ナルジスがリンを気にかけてたのは意外だった。
簡単に返事ができる問題では無かった。ナルジスと友人になるのは課題があるからだ。同級生の目や幼馴染みの気持ちを考慮しなければならない。
リンが迷っている時だった。
「たす……けて……」
弱々しい声が耳に飛び込んできた。リンは左右を見回す。
「どうした?」
「声がしたんだ。たすけて……って」
「たすけて……くれ……」
リンの言葉を示すように、また聞こえてきた。
「今度は俺にも聞こえた。位置からして真下だな」
ナルジスは言った。
天使は聴覚に優れており、遠く離れた小さな声でも聞き取れるのだ。
「行ってみよう」
「待て」
リンが行こうとするのを、ナルジスが止める。
「僅かだが黒天使の気配がする。もしかしたら罠かもしれないぞ」
「罠……ああ、天使狩りだね」
"天使狩り"とは黒天使が使う罠で、黒天使が人が襲われていると思わせ、天使をおびき寄せて黒天使が襲撃するという卑怯なものだ。
昨年のテストでも二人がその罠に引っ掛かり命を落としている。
「分かっているなら何故行こうとする。きみは馬鹿だぞ」
「もし本当に人が襲われてたらどうするんだよ」
「無茶だ。俺やきみはまだ見習いなんだ。黒天使一人倒す力もないんだぞ」
ナルジスの言っていることは確かだった。
術は使えてもまだまだ弱く、黒天使に立ち向かうなど自殺行為に等しい。
「心配ならテレパシーで近くの天使に連絡して、僕は一人でも行くから」
リンはそう言って真下に急降下した。背後から「お、おいっ!」とナルジスが叫ぶ声がしたが無視した。
怖くないというと嘘にはなる。もしかしたら天使になる前に死ぬかもしれないからだ。想像が現実になれば幼馴染みと母、今は別の場所に暮らしている父と弟が悲しむだろう。
それでも人間を守れたなら本望だ。悔いはない。
不安と恐怖が心渦巻く中、地上が近づいてきた。だが意外な展開がリンを待ち受けていた。
狼の群れを前に、薄緑色の髪、褐色肌の傷だらけの黒天使が横たわっていたからだ。黒天使は狼が来るにも関わらず動かない。このままでは食べられてしまう。
リンは右腕を伸ばし、 呪文を詠唱した。
「閃光よ視界を閉ざせ!」
白い光が狼の群れに襲いかかり、驚きのあまり狼達は逃げ出した。
狼の気配が無くなったことを確認すると、リンは地上に降り立ち黒天使の側に来た。
「う……っ」
黒天使は苦しそうな声を出す。
「大丈夫か?」
リンは身を屈めて話しかけた。
例え敵対している黒天使でも弱っているのは無視できない。
黒天使は顔を動かして、リンを見た。
「オマエ……天……使か?」
「そうだけど、君のことは放っておけなかった」
リンは率直に言った。
「あの……獣は……?」
「僕が追い払った」
「ばか……か……オレら……黒天使に関わると……分かってんだろ……」
「確かに自分がしてることが天界の法に触れるのは承知の上だよ、体の傷も治してあげる」
リンが治癒の呪文を使おうとすると、黒天使に「待て」と言われた。
「どうしてだよ」
「オレ……の仲間が……もうすぐ……来るはずだから……」
「仲間……」
背後からはっきりとした黒天使の気配が一つ出現する。
「ベリルさぁん!」
女の声だった。ベリルと呼んだ黒天使の左側に走ってきた。
「すぐに治しますからね、じっとしていて下さい」
黒の帽子に、赤毛の女黒天使は両手から癒しの光を出し、ベリルの体に当てる。
天使が黄色い光に対し、女の癒しの光は緑色である。
黒天使は癒しの術を使えないと聞いていたが、目の前にいる女の黒天使は使っている。
どういうことなのか気になった。
ベリルの体の傷は癒え、ベリルは起き上がる。
「大丈夫ですか?」
「……ああ」
ベリルはしっかりした声で言った。
「アンタも有難うな、敵にも関わらず助けるなんて向こう見ずも良いところだぜ」
「かもしれないね」
女はリンを見て驚愕の表情を見せる。
「ひいゃあっ! て、天使!」
「今気づいたのかよ、ってか心配すんな、こいつはオレを助けた奴だから」
「そ……そうだったんですかぁ、すみませぇん驚いてしまって」
女は謝った。
「君たちは早くここを離れた方がいい、僕の同級生が天使を呼んでいるかもしれないから」
リンは二人の黒天使に忠告した。
自分は戦えないが、天使か来れば二人の身が危険である。
「そうか……じゃあ長居はできないな行くぞ、コンソーラ」
「あの、ベリルさんを助けてくれて有難うございましたぁ」
コンソーラと呼ばれた女はリンに頭を下げる。
「良いんだよ、礼なんて」
リンは手を軽く振って言った。
コンソーラはベリルを追い、二人は並んだ。
「アンタみたいに誰これ構わず優しい天使ばかりだったら良いのにな」
ベリルはリンに言うと、二人は姿を消した。
黒天使も皆が皆悪いとは限らない。中にはまともな黒天使もいるのだとリンは二人を見て思った。
ナルジスが三人の天使を連れてきたのは、二人がいなくなってから間もなくだった。
職員室でメルキに報告し、リンとナルジスは廊下に出る。
「……全く、きみにはヒヤヒヤさせられるよ、きみは早死にするタイプだな」
「仕方ないだろ、見てみぬふりはできなかったんだ」
リンはナルジスが何を言おうとそこだけは譲らない。
あの後、黒天使の気配が無かったことやリンも無傷だっとこともあり、駆けつけた天使には深く聞かれることは無かったが、天使狩りを警戒してかリンはナルジスと共に天使に警護してもらって天界に帰還したのである。
「口頭注意で済んで良かったな」
「確かに」
天使には突っ込まれなかったが、メルキにはばれており、リンは単身で黒天使(怪我をしてるとはいえ)に向かって行ったことは危険だと言われた。
黒天使が一人現れたのも、更に危なかったという。
色々あったが無事にきり抜けられてリンはほっとした。
「今日は有難う、君のお陰で助かったよ」
リンはナルジスに礼を述べる。
「俺は何もしてないぞ」
「心配してくれたよね、それが嬉しかったよ」
「勘違いするな、きみに何かあったら俺にまで責任が回ってくるだろ」
ナルジスはつれない態度をとった。
本人はそう言うが、リンは素直ではないんだなと感じた。
リンは立ち止まってナルジスを見る。
「ナルジス」
「何だ」
「君と友達になるにしても、時間をくれないか」
現地点で精一杯の答えだった。
今回の件を通してナルジスの違った一面を見られたが、容易に答えは出せない。
「くれてやるが、いい返事を期待してるぞ」
「よく考えてみる」
リンは言った。
ラフィアとは違う意味で大変な一日はようやく終わったのだ。
ナルジスに返答するのはまた別の話……
「上手く終われて良かったよ」
リンの心は嬉しさで満ちていた。
最初に会った時は辛そうな人々が自分のお陰で笑顔に変わったことは忘れないだろう。
先生であるメルキにもテレパシーで「合格」と言われ、後は天界に戻るだけだ。
「ラフィは大丈夫だよね」
幼馴染みがテストを上手く切り抜けられるか気がかりだった。
しかしすぐに思い直した。テストは他の生徒が介入するのは禁止だからだ。下手にラフィアの手助けをするとお互いのためにはならない。
リンはラフィアのいる方角を向く。
「ラフィ頑張るんだよ、君ならできるから」
リンは幼馴染みが合格することを願った。幼馴染みならきっと乗り越えられると信じて。
願うのを止め、向きを変えようとした矢先だった。一人の天使がこちらに来るのが確認できた。
「……あれは」
リンは天使を凝視した。ふんわりとした銀髪には見覚えがある。
銀髪の天使もリンの存在に気付き動きを止めた。
「ナルジス」
「誰かと思えばきみか」
リンはナルジスと呼んだ銀髪の天使に少し近づく。
「テストは終わったの?」
「当たり前だ。我が儘な姫の体を癒すのは癪だが簡単だった」
ナルジスは不満げに漏らした。
「そっちはどうだ。まさか不合格じゃないよな」
「合格したよ」
「だよな、きみの頼りない天使とは違うよな」
ナルジスが示しているのはラフィアのことだ。
リンはむっとした。
「僕のことは悪くいってくれて構わないけど、ラフィのことは悪く言うな」
リンは怒り混じりに口走る。
ナルジスは自分が気に入らない相手を侮辱する呼び方をする。それが原因で同級生からは避けられている。
リンもナルジスと会話は出来るだけ回避したかったが、遭遇した以上無視する訳にもいかない。
ナルジスはリンの真横に来た。
「受かったら呼び方を検討してやるよ」
ナルジスはそのまま飛んでいった。
……イヤな奴だ。
リンは内心思った。
本来ならナルジスのいる方向には行きたくないが天界に帰るのはそっちが近いので進まざる得ない。
リンはナルジスの後ろを追う形で羽根を動かした。
下の世界は森と建物が続き、リンは苦手な天使との飛行が続いている。
お互い口を利かないまま、天界に着ければ楽だとリンは思った。
「おい」
ナルジスが背を向けつつも、リンに話しかけてきた。
「何?」
「きみはどうして頼りない天使を支えるんだ」
「どうしたんだよ、急に」
「きみとは同じ教室にいるのに、あまり話さないしな、聞きたくなった」
教室でナルジスと言葉を交わすことは滅多にない。二人きりになるのも正直苦痛である。
「家族だから、とだけ言っておく」
「家族? あいつは血の繋がりは無いんだろ、だったら赤の他人じゃないか」
「そうかもしれないけど、一緒に暮らしていれば絆は生まれるよ」
リンの言葉に、ナルジスは「ふん」と鼻を鳴らす。
「俺には理解できんな」
ナルジスはリンを軽蔑していた。
リンは文句を飲み込んだ。ナルジスに何を言っても無駄だからだ。
聞いた話だと、ナルジスは幼い頃に両親に捨てられ、躾の厳しい親戚に引き取られたという。
なので家族の温もりを知らずに育ってきたのだ。彼の性格も両親の愛がないことが原因のようだ。
「……なあ」
「まだ何かある?」
リンはつっけんどんに言った。ナルジスは振り向く。
「良かったら俺と友達にならないか」
急なことに、リンは戸惑いを覚えた。
なぜそんな事を口走るのか分からない。
「どうして?」
「きみの事は前から興味があったからな、俺より劣るが頭が良くて、先生にも好かれてるからな」
癪に障る言い方はともかく、ナルジスがリンを気にかけてたのは意外だった。
簡単に返事ができる問題では無かった。ナルジスと友人になるのは課題があるからだ。同級生の目や幼馴染みの気持ちを考慮しなければならない。
リンが迷っている時だった。
「たす……けて……」
弱々しい声が耳に飛び込んできた。リンは左右を見回す。
「どうした?」
「声がしたんだ。たすけて……って」
「たすけて……くれ……」
リンの言葉を示すように、また聞こえてきた。
「今度は俺にも聞こえた。位置からして真下だな」
ナルジスは言った。
天使は聴覚に優れており、遠く離れた小さな声でも聞き取れるのだ。
「行ってみよう」
「待て」
リンが行こうとするのを、ナルジスが止める。
「僅かだが黒天使の気配がする。もしかしたら罠かもしれないぞ」
「罠……ああ、天使狩りだね」
"天使狩り"とは黒天使が使う罠で、黒天使が人が襲われていると思わせ、天使をおびき寄せて黒天使が襲撃するという卑怯なものだ。
昨年のテストでも二人がその罠に引っ掛かり命を落としている。
「分かっているなら何故行こうとする。きみは馬鹿だぞ」
「もし本当に人が襲われてたらどうするんだよ」
「無茶だ。俺やきみはまだ見習いなんだ。黒天使一人倒す力もないんだぞ」
ナルジスの言っていることは確かだった。
術は使えてもまだまだ弱く、黒天使に立ち向かうなど自殺行為に等しい。
「心配ならテレパシーで近くの天使に連絡して、僕は一人でも行くから」
リンはそう言って真下に急降下した。背後から「お、おいっ!」とナルジスが叫ぶ声がしたが無視した。
怖くないというと嘘にはなる。もしかしたら天使になる前に死ぬかもしれないからだ。想像が現実になれば幼馴染みと母、今は別の場所に暮らしている父と弟が悲しむだろう。
それでも人間を守れたなら本望だ。悔いはない。
不安と恐怖が心渦巻く中、地上が近づいてきた。だが意外な展開がリンを待ち受けていた。
狼の群れを前に、薄緑色の髪、褐色肌の傷だらけの黒天使が横たわっていたからだ。黒天使は狼が来るにも関わらず動かない。このままでは食べられてしまう。
リンは右腕を伸ばし、 呪文を詠唱した。
「閃光よ視界を閉ざせ!」
白い光が狼の群れに襲いかかり、驚きのあまり狼達は逃げ出した。
狼の気配が無くなったことを確認すると、リンは地上に降り立ち黒天使の側に来た。
「う……っ」
黒天使は苦しそうな声を出す。
「大丈夫か?」
リンは身を屈めて話しかけた。
例え敵対している黒天使でも弱っているのは無視できない。
黒天使は顔を動かして、リンを見た。
「オマエ……天……使か?」
「そうだけど、君のことは放っておけなかった」
リンは率直に言った。
「あの……獣は……?」
「僕が追い払った」
「ばか……か……オレら……黒天使に関わると……分かってんだろ……」
「確かに自分がしてることが天界の法に触れるのは承知の上だよ、体の傷も治してあげる」
リンが治癒の呪文を使おうとすると、黒天使に「待て」と言われた。
「どうしてだよ」
「オレ……の仲間が……もうすぐ……来るはずだから……」
「仲間……」
背後からはっきりとした黒天使の気配が一つ出現する。
「ベリルさぁん!」
女の声だった。ベリルと呼んだ黒天使の左側に走ってきた。
「すぐに治しますからね、じっとしていて下さい」
黒の帽子に、赤毛の女黒天使は両手から癒しの光を出し、ベリルの体に当てる。
天使が黄色い光に対し、女の癒しの光は緑色である。
黒天使は癒しの術を使えないと聞いていたが、目の前にいる女の黒天使は使っている。
どういうことなのか気になった。
ベリルの体の傷は癒え、ベリルは起き上がる。
「大丈夫ですか?」
「……ああ」
ベリルはしっかりした声で言った。
「アンタも有難うな、敵にも関わらず助けるなんて向こう見ずも良いところだぜ」
「かもしれないね」
女はリンを見て驚愕の表情を見せる。
「ひいゃあっ! て、天使!」
「今気づいたのかよ、ってか心配すんな、こいつはオレを助けた奴だから」
「そ……そうだったんですかぁ、すみませぇん驚いてしまって」
女は謝った。
「君たちは早くここを離れた方がいい、僕の同級生が天使を呼んでいるかもしれないから」
リンは二人の黒天使に忠告した。
自分は戦えないが、天使か来れば二人の身が危険である。
「そうか……じゃあ長居はできないな行くぞ、コンソーラ」
「あの、ベリルさんを助けてくれて有難うございましたぁ」
コンソーラと呼ばれた女はリンに頭を下げる。
「良いんだよ、礼なんて」
リンは手を軽く振って言った。
コンソーラはベリルを追い、二人は並んだ。
「アンタみたいに誰これ構わず優しい天使ばかりだったら良いのにな」
ベリルはリンに言うと、二人は姿を消した。
黒天使も皆が皆悪いとは限らない。中にはまともな黒天使もいるのだとリンは二人を見て思った。
ナルジスが三人の天使を連れてきたのは、二人がいなくなってから間もなくだった。
職員室でメルキに報告し、リンとナルジスは廊下に出る。
「……全く、きみにはヒヤヒヤさせられるよ、きみは早死にするタイプだな」
「仕方ないだろ、見てみぬふりはできなかったんだ」
リンはナルジスが何を言おうとそこだけは譲らない。
あの後、黒天使の気配が無かったことやリンも無傷だっとこともあり、駆けつけた天使には深く聞かれることは無かったが、天使狩りを警戒してかリンはナルジスと共に天使に警護してもらって天界に帰還したのである。
「口頭注意で済んで良かったな」
「確かに」
天使には突っ込まれなかったが、メルキにはばれており、リンは単身で黒天使(怪我をしてるとはいえ)に向かって行ったことは危険だと言われた。
黒天使が一人現れたのも、更に危なかったという。
色々あったが無事にきり抜けられてリンはほっとした。
「今日は有難う、君のお陰で助かったよ」
リンはナルジスに礼を述べる。
「俺は何もしてないぞ」
「心配してくれたよね、それが嬉しかったよ」
「勘違いするな、きみに何かあったら俺にまで責任が回ってくるだろ」
ナルジスはつれない態度をとった。
本人はそう言うが、リンは素直ではないんだなと感じた。
リンは立ち止まってナルジスを見る。
「ナルジス」
「何だ」
「君と友達になるにしても、時間をくれないか」
現地点で精一杯の答えだった。
今回の件を通してナルジスの違った一面を見られたが、容易に答えは出せない。
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