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迫りくる危機
治安部隊の聴取
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机と椅子だけしかない殺風景な取調室に、ラフィアはティーアから問い詰められていた。
「ラフィアさん、正直に答えてください、貴女は儀式の時に声を聞きましたよね?」
「はい、聞きました」
ラフィアはよく通る声で言った。
ラフィアが治安部隊の取調室に連れてこられたのは天使昇給の儀式時に黒天使がラフィアに話しかけてきたことだ。
姿は見えなかったが、力からして黒天使のものだという。
「何て言っていたか覚えてますか?」
「えっと……確か、この時を待っていたぞと言っていました。知らない男の人でした」
ラフィアが話した内容を、ティーアの隣にいた天使・カーシヴが素早く書き込む。
「話した相手の顔は見えましたか?」
「いえ、声だけでした」
「分かりました。お話ししていただき有難うございます」
ティーアはラフィアに律儀に頭を下げた。
ラフィアは不安になった。もしかしたら重い罰が下るのでは……と。
しかしティーアの対応は意外なものだった。
「驚かないで聞いて下さいね、これは私の想像ですが話を聞く限り、黒天使は貴女を狙ってるでしょう」
ティーアの声色には真面目さがこもっている。
「何で……ですか?」
突拍子もない話にラフィアは困惑した。
「天使昇給の儀式という我々の警備がある中、危険を犯してまでテレパシーでメッセージを送るなんて黒天使はしないんですよ、普段の日も同様です。
我々に見つかれば黒天使もただじゃ済まない事は分かっていますから、しかし今回黒天使は危険を承知で貴女にテレパシーを飛ばした。黒天使が貴女に接近したいというのは目に見えています」
「わたし、今日天使になったばかりですよ、どうして狙われるんですか」
ラフィアは言った。黒天使と戦ってきた天使ならまだしも、ラフィアは今日天使になって、黒天使と戦を交えてないので、黒天使に恨みを買うようなことはしていない。
「黒天使が狙っているのは恐らく貴女の力でしょう、上級天使は言ってました。ラフィアさんだけ他の天使に比べて大きいと」
「冗談……ですよね」
「私が冗談を言うと思いますか? メルキなら可能性はありますけどね」
信じたくないラフィアとは裏腹に、
ティーアはあくまで真剣だった。
メルキのことを呼び捨てにするのは、メルキがかつて治安部隊の同僚だったことの名残りらしい。
「これって大事なことですよね、何ですぐに知らせないんですか?」
「確かに問題ですね。メルキの事ですから単に忘れてるだけだと思いますが、後ほど注意しておきます」
一つの問題を解消し、ラフィアは一番知りたい事を、恐る恐る訊ねた。
「わたしのことは……罰しないんですか?」
「まさか、そんな事しませんよ、我々は自分の意思で黒天使と接触する輩は罰しますが、貴女は黒天使から一方的に接近されたんですから、むしろ我々が貴女を守りますよ」
「そう……ですか」
ティーアの言葉に、ラフィアは安心した。リンや母親に心配かけずに済むからだ。
治安部隊もその辺の分別はするようだ。
「話を戻しますが、実際力を調べた方が良さそうですね」
ティーアは筆記を取っていたカーシヴに耳打ちし、カーシヴはすぐさま取調室を飛び出した。
ほどなくし、カーシヴは水晶玉を持って現れた。
「これは力計測玉、名の通り力を計測するものです。まずは手を当てます」
ティーアは力計測玉に手を当てた。すると玉は黄色く輝き始める。
「手を当てると、光って力のレベルが分かります。一番下が赤から始まり、青、緑、黄色、紫、そして一番上が虹色といった順です」
ティーアは説明した。
様子を見ていたカーシヴは目を丸くする。
「ティーアさん、また力が上がりましたね」
「貴方は仕事に集中しなさい」
「あっ、すいません」
カーシヴは謝罪した。
ティーアは手を離すと、水晶の色は消え元の透明色になる。
「手を当てるだけですからね」
「分かり……ました」
ラフィアは生唾を飲み込み、そっと水晶に手を当てる。自分の力は赤か髪の毛と同じ色である青が良いところだと思った。
が、現実はラフィアの予想を遥かに超えていた。何故なら水晶玉は虹色に輝いているからだ。
「す……凄いです」
ティーアは興奮を抑えられない様子である。
「私はここに勤めて五年は経ちますが、虹色を見たのは初めてです」
「この事も記録に残して良いですよね?」
カーシヴは水晶玉をまじまじと見つめる。
「勿論です。あ、もう手は離して大丈夫ですよ」
ティーアに言われ、ラフィアは水晶玉から手を引いた。
「……そんなに、凄いんですか?」
「ええ、それはもう、ラフィアさん貴女は頑張ってお勉強すれば天界を治める神様になれますよ、虹色を出せる天使は神様級の力を持っているって証ですから」
壮大な話にラフィアは軽く目眩がした。自分が神様なんて受け入れがたいからだ。
「でも、それって可笑しくないですか」
「可笑しくはありませんよ、ごく稀にですが、昇給の儀式で貴女のように強い力を持った天使も出てくるんです。その人達は黒天使の声を聞いたという報告は受けてませんけどね」
どうやら黒天使の声を聞いたのは自分だけのようで、ラフィアは怖さのあまり体が震える。
これから実戦訓練も行われて、天界を出る機会も増えるとメルキは言っていた。そんな時に黒天使が現れないとも限らない。
もし黒天使に捕まったら天使は生きて戻って来られない。
いや、テレパシーを天界内に飛ばす位だから天界の結界を破って侵入も考えられる。
悪い考えばかりが過り、不安でたまらなくなる。
「ティーア士官、ラフィアさん怖がってますよ」
カーシヴが耳打ちして、ティーアは言い過ぎたことを後悔した。
「ああ、不安を煽るようなことを言ってしまいすみません」
「いえ、良いんです。どっちにしても授かったものを捨てるなんてバチが当たりそうですから、大切にはします」
今のラフィアには、そう言うのが精一杯である。
苦労して試験に合格して天使になれたのに、今度は自分の力がいらないなんて言ったら、ラフィアの両親に叱られてしまう。例え自分の身の丈に合わない力だとしてもだ。
不安は消え去った訳ではないが、そう思ってないと心が挫けそうになる。
「それはいい心がけですね。我々もラフィアさんの身に危険が及ばないように最善を尽くします」
「え……ええ、有難うございます」
ラフィアはぎこちなく言った。
二人の会話は、外から聞こえた爆音と揺れにより強制終了することとなった。
「ラフィアさん、正直に答えてください、貴女は儀式の時に声を聞きましたよね?」
「はい、聞きました」
ラフィアはよく通る声で言った。
ラフィアが治安部隊の取調室に連れてこられたのは天使昇給の儀式時に黒天使がラフィアに話しかけてきたことだ。
姿は見えなかったが、力からして黒天使のものだという。
「何て言っていたか覚えてますか?」
「えっと……確か、この時を待っていたぞと言っていました。知らない男の人でした」
ラフィアが話した内容を、ティーアの隣にいた天使・カーシヴが素早く書き込む。
「話した相手の顔は見えましたか?」
「いえ、声だけでした」
「分かりました。お話ししていただき有難うございます」
ティーアはラフィアに律儀に頭を下げた。
ラフィアは不安になった。もしかしたら重い罰が下るのでは……と。
しかしティーアの対応は意外なものだった。
「驚かないで聞いて下さいね、これは私の想像ですが話を聞く限り、黒天使は貴女を狙ってるでしょう」
ティーアの声色には真面目さがこもっている。
「何で……ですか?」
突拍子もない話にラフィアは困惑した。
「天使昇給の儀式という我々の警備がある中、危険を犯してまでテレパシーでメッセージを送るなんて黒天使はしないんですよ、普段の日も同様です。
我々に見つかれば黒天使もただじゃ済まない事は分かっていますから、しかし今回黒天使は危険を承知で貴女にテレパシーを飛ばした。黒天使が貴女に接近したいというのは目に見えています」
「わたし、今日天使になったばかりですよ、どうして狙われるんですか」
ラフィアは言った。黒天使と戦ってきた天使ならまだしも、ラフィアは今日天使になって、黒天使と戦を交えてないので、黒天使に恨みを買うようなことはしていない。
「黒天使が狙っているのは恐らく貴女の力でしょう、上級天使は言ってました。ラフィアさんだけ他の天使に比べて大きいと」
「冗談……ですよね」
「私が冗談を言うと思いますか? メルキなら可能性はありますけどね」
信じたくないラフィアとは裏腹に、
ティーアはあくまで真剣だった。
メルキのことを呼び捨てにするのは、メルキがかつて治安部隊の同僚だったことの名残りらしい。
「これって大事なことですよね、何ですぐに知らせないんですか?」
「確かに問題ですね。メルキの事ですから単に忘れてるだけだと思いますが、後ほど注意しておきます」
一つの問題を解消し、ラフィアは一番知りたい事を、恐る恐る訊ねた。
「わたしのことは……罰しないんですか?」
「まさか、そんな事しませんよ、我々は自分の意思で黒天使と接触する輩は罰しますが、貴女は黒天使から一方的に接近されたんですから、むしろ我々が貴女を守りますよ」
「そう……ですか」
ティーアの言葉に、ラフィアは安心した。リンや母親に心配かけずに済むからだ。
治安部隊もその辺の分別はするようだ。
「話を戻しますが、実際力を調べた方が良さそうですね」
ティーアは筆記を取っていたカーシヴに耳打ちし、カーシヴはすぐさま取調室を飛び出した。
ほどなくし、カーシヴは水晶玉を持って現れた。
「これは力計測玉、名の通り力を計測するものです。まずは手を当てます」
ティーアは力計測玉に手を当てた。すると玉は黄色く輝き始める。
「手を当てると、光って力のレベルが分かります。一番下が赤から始まり、青、緑、黄色、紫、そして一番上が虹色といった順です」
ティーアは説明した。
様子を見ていたカーシヴは目を丸くする。
「ティーアさん、また力が上がりましたね」
「貴方は仕事に集中しなさい」
「あっ、すいません」
カーシヴは謝罪した。
ティーアは手を離すと、水晶の色は消え元の透明色になる。
「手を当てるだけですからね」
「分かり……ました」
ラフィアは生唾を飲み込み、そっと水晶に手を当てる。自分の力は赤か髪の毛と同じ色である青が良いところだと思った。
が、現実はラフィアの予想を遥かに超えていた。何故なら水晶玉は虹色に輝いているからだ。
「す……凄いです」
ティーアは興奮を抑えられない様子である。
「私はここに勤めて五年は経ちますが、虹色を見たのは初めてです」
「この事も記録に残して良いですよね?」
カーシヴは水晶玉をまじまじと見つめる。
「勿論です。あ、もう手は離して大丈夫ですよ」
ティーアに言われ、ラフィアは水晶玉から手を引いた。
「……そんなに、凄いんですか?」
「ええ、それはもう、ラフィアさん貴女は頑張ってお勉強すれば天界を治める神様になれますよ、虹色を出せる天使は神様級の力を持っているって証ですから」
壮大な話にラフィアは軽く目眩がした。自分が神様なんて受け入れがたいからだ。
「でも、それって可笑しくないですか」
「可笑しくはありませんよ、ごく稀にですが、昇給の儀式で貴女のように強い力を持った天使も出てくるんです。その人達は黒天使の声を聞いたという報告は受けてませんけどね」
どうやら黒天使の声を聞いたのは自分だけのようで、ラフィアは怖さのあまり体が震える。
これから実戦訓練も行われて、天界を出る機会も増えるとメルキは言っていた。そんな時に黒天使が現れないとも限らない。
もし黒天使に捕まったら天使は生きて戻って来られない。
いや、テレパシーを天界内に飛ばす位だから天界の結界を破って侵入も考えられる。
悪い考えばかりが過り、不安でたまらなくなる。
「ティーア士官、ラフィアさん怖がってますよ」
カーシヴが耳打ちして、ティーアは言い過ぎたことを後悔した。
「ああ、不安を煽るようなことを言ってしまいすみません」
「いえ、良いんです。どっちにしても授かったものを捨てるなんてバチが当たりそうですから、大切にはします」
今のラフィアには、そう言うのが精一杯である。
苦労して試験に合格して天使になれたのに、今度は自分の力がいらないなんて言ったら、ラフィアの両親に叱られてしまう。例え自分の身の丈に合わない力だとしてもだ。
不安は消え去った訳ではないが、そう思ってないと心が挫けそうになる。
「それはいい心がけですね。我々もラフィアさんの身に危険が及ばないように最善を尽くします」
「え……ええ、有難うございます」
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