桜雨の希望

ねる

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桜雨の希望

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 私は涙を流しながら走っていた。友人と喧嘩となり、きつい言葉を浴びせて私が去ったからだ。
 「ちとせの馬鹿……大嫌いだよ……」
私は友人の名を呼び、心の底から友人への怒りを露にする。
 ちとせは高校に入学した頃から付き合い始めた友人で、喧嘩の原因はちとせが私が好きな男子と付き合うことになったのだ。ちとせは謝罪せずに、こう言ったのだ。
『いつまでも告白しないひなが悪いんだよ』
思い出しただけで余計に腹が立つ。
私がさっさと告白すれば良かったかもしれないが、それでもちとせの行いは許すことはできない。
  友人と過ごす楽しい休日が、最悪な日となってしまった。

 私は公園のベンチに座り、私服の袖で涙を拭う。
「ちとせの馬鹿……馬鹿っ」
私は心から感じるままにちとせへ悪口を言った。明日からちとせと何食わぬ顔をして付き合うなんて無理だ。
……ちとせは私の恋の相談にのってくれて、上手いくように応援してくれた上に、彼と話す機会を作ってくれたりもした。
私のことを考えてくれるちとせは大切にしたい友人だと心の底から思った。
でも、それは今日ちとせの話を聞くまでだ。もうちとせを友人として接することはできない。
 空は綺麗な青空だが、私の心はちとせが原因でどしゃ降りの雨模様だ。
 
どれくらい時が経っただろう、私の気持ちは少しは落ち着いた。心の痛みは消えてないが……
 「あ……」
私の視界に複数の桜の花びらが入る。泣き腫らした顔で私は上を見上げた。そこには満開に咲く桜の花があった。
公園に入ってきた時は気づかなかった。気持ちに余裕が無かったからだろう。
「綺麗……」
桜は静かに桜の花びらを降らせる。眺めていると不思議と心が和んだ。
 桜の雨は私のことを励ましてくれているみたいだった。
 桜に背中を押される形で私は意を決し、鞄からスマホを取り出した。ちとせに手早くメッセージを打つ。
『あなたとはもう絶交だから、付き合うのもやめるよ、さよなら』
短いけどちとせにも伝わるはずだ。
送信を確認し、ちとせからのメッセージを全部削除し、ちとせの連絡先をブロックした。
これでちとせのから連絡が来ることはないだろう。
 ちとせ本人から直接文句を言ってくるようなら、はっきり言ってやろう。
 心はジンジンと痛みは残るが、ちとせのことは忘れようと思った。家にあるちとせから貰った物や手紙は捨てよう。
「新しい友人を作ろう、好きな人はしばらく御免だけどね」
私は自分に言い聞かせた。
クラス替えしたばかりだから、チャンスはあるはずだ。幸いちとせとは違うクラスなので良かったと思った。
一緒のクラスだったら気まずいからだ。

 桜の雨が降る中、私は公園を去った。痛みと希望を胸にして……
  
 

    
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みんなの感想(2件)

アキ・スマイリー

夜中に感想失礼します。Twitterのrt企画でご紹介頂いたaki@rivaです。

青春の一コマを切り取った切ないお話ですね。桜の花びらが舞い散る美しい情景が、映像のように目に浮かびました。

ちとせは主人公の相談に乗っているうちに、思い人であるその男子の事が、好きになってしまったのでしょうね。

途中「もしかしてちとせは、主人公を奮起させる為にわざと嘘をついたのだろうか?」と思いましたが、ふつうに奪っていたのですね。恐ろしい子!

とても素敵な作品なのですが、気になる点が一つだけ。冒頭の、主人公の状況を説明するシーンですが、三人称視点のように「〜をした」って感じで、やけに説明的な印象を受けました。人称は「私」ではあるのですが客観的な視点に見えます。

なので、一人称の場合は心理描写に重きを置いた方が良いかな、と思いました。

例えば「私の足は、気がつけば公園に辿り付いていた。親友のちとせに裏切られ、どこをどう歩いているかわからない程に傷付いていたからだ」みたいな感じで......。

素敵な作品なので、僭越ながらアドバイスさせていただきました。

今回はご紹介頂き、ありがとうございました。僕の作品も読んで頂き、また感想まで頂いて、感謝感激雨あられです。

2020.08.24 ねる

感想とあアドバイスを有難うございます。
参考にさせて頂きます。

解除
2019.11.19 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2019.11.20 ねる

感想有難うございます。
その後のことは想像にお任せします。

解除

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