未来と希望のクリスマス

ねる

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未来と希望のクリスマス

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鉛色の雲から雪が降り注ぐ中、金髪に左右をカールに、赤目、赤い服のサンタクロースの少女・メレがトナカイのソリを引いて、次の場所に向かっていた。
「ったく、治安部隊の奴等仕事しろっての」
メレはむすっとした顔で口走る。
メレはさっきの街で子どもたちのいる家に行き、プレゼントを配っている最中に、人間たちを襲う天使であるトレイターに襲われそうになった。
 幸いにも何とか逃げられたが、生きた心地がしなかった。
ちなみにメレが言っている治安部隊とは、トレイターを取り締まる天使だが、メレが危険な目に遭っているにも関わらず来なかった。
「はぁ……どうなってるんだろ……」
メレはため息をつく。
しかしすぐに考えを切り替えた。他のサンタクロースもトレイターの危険をかわしつつ子供達にプレゼントを配っているのだ。
子供の笑顔のためにも、怖いからという理由で自分だけやめる訳にはいかない。
「次はノイヤール村ね」
メレは気を引き締める。

ノイヤール村に着くなり、メレは子供のいる家に一件一件回り、プレゼントを配る。
この村にはトレイターがいなかったので、安心した。
最後には大きな家に着いた。
「ここで終わりよね」
メレは静かに扉を開き、足音を立てないようにして歩く。
家の主を起こしたらまずいからだ。
「確か二階にいるって言ってたよね」
メレは事前に得た情報を思い返しつつ、二階に続く階段を昇り、廊下を進む。
そして一つの部屋に辿り着く。
「ちょっとお邪魔しますよ」
メレは小声で部屋の中に入った。そこには二人の人物が眠っている。
メレは忍び足で歩き、布団で眠る栗色のショートの女性に接近する。
「カスターニャ、あなたは本来サンタクロースのプレゼントを与える年齢ではないけど、過去の苦労に免じて、幸多い未来をプレゼントするわ」
メレは柔らかな口調で言うと、担いでいた白い袋から一つのオレンジ色の箱を取り出し、箱を開く。
 箱からは虹色の光が飛び出し、カスターニャの全身に降り注いだ。カスターニャの顔つきはさっきに比べるとどこか幸せそうに見えた。
次にベッドで眠る青髪の少女の元に近づいた。
二カ月前からカスターニャが保護して面倒を見ているのだ。
「ラフィア、あなたにはどんな事があっても挫けない希望をプレゼントするわ」
メレは白い袋から青い箱を出して、箱を開けた。
箱からは黄色い光が飛び出し、ラフィアの体に降り注いだ。
 サンタクロースは玩具や服など、形になるプレゼントを配るだけでなく、今二人に与えたように人が前向きになれる感情をプレゼントとして与えることがある。
「二人とも、良いクリスマスを」
メレは薄っすら笑って言うと、白い袋を担いで、家から去った。

 サンタクロースのメレの仕事はまだまだ続くのだった。



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