1 / 1
未来と希望のクリスマス
しおりを挟む
鉛色の雲から雪が降り注ぐ中、金髪に左右をカールに、赤目、赤い服のサンタクロースの少女・メレがトナカイのソリを引いて、次の場所に向かっていた。
「ったく、治安部隊の奴等仕事しろっての」
メレはむすっとした顔で口走る。
メレはさっきの街で子どもたちのいる家に行き、プレゼントを配っている最中に、人間たちを襲う天使であるトレイターに襲われそうになった。
幸いにも何とか逃げられたが、生きた心地がしなかった。
ちなみにメレが言っている治安部隊とは、トレイターを取り締まる天使だが、メレが危険な目に遭っているにも関わらず来なかった。
「はぁ……どうなってるんだろ……」
メレはため息をつく。
しかしすぐに考えを切り替えた。他のサンタクロースもトレイターの危険をかわしつつ子供達にプレゼントを配っているのだ。
子供の笑顔のためにも、怖いからという理由で自分だけやめる訳にはいかない。
「次はノイヤール村ね」
メレは気を引き締める。
ノイヤール村に着くなり、メレは子供のいる家に一件一件回り、プレゼントを配る。
この村にはトレイターがいなかったので、安心した。
最後には大きな家に着いた。
「ここで終わりよね」
メレは静かに扉を開き、足音を立てないようにして歩く。
家の主を起こしたらまずいからだ。
「確か二階にいるって言ってたよね」
メレは事前に得た情報を思い返しつつ、二階に続く階段を昇り、廊下を進む。
そして一つの部屋に辿り着く。
「ちょっとお邪魔しますよ」
メレは小声で部屋の中に入った。そこには二人の人物が眠っている。
メレは忍び足で歩き、布団で眠る栗色のショートの女性に接近する。
「カスターニャ、あなたは本来サンタクロースのプレゼントを与える年齢ではないけど、過去の苦労に免じて、幸多い未来をプレゼントするわ」
メレは柔らかな口調で言うと、担いでいた白い袋から一つのオレンジ色の箱を取り出し、箱を開く。
箱からは虹色の光が飛び出し、カスターニャの全身に降り注いだ。カスターニャの顔つきはさっきに比べるとどこか幸せそうに見えた。
次にベッドで眠る青髪の少女の元に近づいた。
二カ月前からカスターニャが保護して面倒を見ているのだ。
「ラフィア、あなたにはどんな事があっても挫けない希望をプレゼントするわ」
メレは白い袋から青い箱を出して、箱を開けた。
箱からは黄色い光が飛び出し、ラフィアの体に降り注いだ。
サンタクロースは玩具や服など、形になるプレゼントを配るだけでなく、今二人に与えたように人が前向きになれる感情をプレゼントとして与えることがある。
「二人とも、良いクリスマスを」
メレは薄っすら笑って言うと、白い袋を担いで、家から去った。
サンタクロースのメレの仕事はまだまだ続くのだった。
「ったく、治安部隊の奴等仕事しろっての」
メレはむすっとした顔で口走る。
メレはさっきの街で子どもたちのいる家に行き、プレゼントを配っている最中に、人間たちを襲う天使であるトレイターに襲われそうになった。
幸いにも何とか逃げられたが、生きた心地がしなかった。
ちなみにメレが言っている治安部隊とは、トレイターを取り締まる天使だが、メレが危険な目に遭っているにも関わらず来なかった。
「はぁ……どうなってるんだろ……」
メレはため息をつく。
しかしすぐに考えを切り替えた。他のサンタクロースもトレイターの危険をかわしつつ子供達にプレゼントを配っているのだ。
子供の笑顔のためにも、怖いからという理由で自分だけやめる訳にはいかない。
「次はノイヤール村ね」
メレは気を引き締める。
ノイヤール村に着くなり、メレは子供のいる家に一件一件回り、プレゼントを配る。
この村にはトレイターがいなかったので、安心した。
最後には大きな家に着いた。
「ここで終わりよね」
メレは静かに扉を開き、足音を立てないようにして歩く。
家の主を起こしたらまずいからだ。
「確か二階にいるって言ってたよね」
メレは事前に得た情報を思い返しつつ、二階に続く階段を昇り、廊下を進む。
そして一つの部屋に辿り着く。
「ちょっとお邪魔しますよ」
メレは小声で部屋の中に入った。そこには二人の人物が眠っている。
メレは忍び足で歩き、布団で眠る栗色のショートの女性に接近する。
「カスターニャ、あなたは本来サンタクロースのプレゼントを与える年齢ではないけど、過去の苦労に免じて、幸多い未来をプレゼントするわ」
メレは柔らかな口調で言うと、担いでいた白い袋から一つのオレンジ色の箱を取り出し、箱を開く。
箱からは虹色の光が飛び出し、カスターニャの全身に降り注いだ。カスターニャの顔つきはさっきに比べるとどこか幸せそうに見えた。
次にベッドで眠る青髪の少女の元に近づいた。
二カ月前からカスターニャが保護して面倒を見ているのだ。
「ラフィア、あなたにはどんな事があっても挫けない希望をプレゼントするわ」
メレは白い袋から青い箱を出して、箱を開けた。
箱からは黄色い光が飛び出し、ラフィアの体に降り注いだ。
サンタクロースは玩具や服など、形になるプレゼントを配るだけでなく、今二人に与えたように人が前向きになれる感情をプレゼントとして与えることがある。
「二人とも、良いクリスマスを」
メレは薄っすら笑って言うと、白い袋を担いで、家から去った。
サンタクロースのメレの仕事はまだまだ続くのだった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる