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第二部
それぞれの想い
昨晩の短時間で自白させ、これだけの情報を得られたのは確実に異能による理由だろう。
「フェリー大隊長。ヴァラン国王達、全ての人が真実を話していると、それは確証があるのでしょうか?」
「誰がどの異能――それに関しては守秘義務があり言えないが、それぞれの国には様々な能力を持つ者がいる」
「相互的に探り合い、判断している――と?」
「まあ端的に言えばそうだ。ジルベール、君はギファルド家子息だ。将来は国政にも関わるだろう、何が真実か見抜く力が必要になる」
「はい」
父上にも同じように言われたことを思い出す。今回も……レオン絡みの色恋沙汰ではあるが、色々と恥ずかしい勘違いをした。
手本となる行動をし、人の上に立ち統括する立場になるには、まだまだ俺は冷静さが足りない。
そういえば……フェリーは俺とレオンの仲は知っていそうだが、出生の秘密はどうだろうか。父上に認められたと信じられる今は、もし周りに知られても大丈夫だと思える安心感がある。
さすがに国中に広まることは避けたいが。いや、ジュールとかに笑われるのは心外だし令嬢からモテなくなるのも嫌だから、やっぱりフェリーとか信頼できる人限定だな。
フェリーが長い髪を耳にかけた。相変わらず品が良く、国王軍よりも王宮での執務が似合いそうだ。気になっていることを尋ねても、大丈夫だろうか。
「フェリー大隊長。お伺いしたいのですが」
「なんだ?」
「結局ローズ王女とルーク王太子はどうなったのでしょうか?」
「ああ。それに関しては父親同士が話し合い、前向きに時間をかけて検討していくことになった」
父親……平民でも親の言うことに逆らえない場合が多いだろうが、彼らの場合は父親が国王だ。二人もまた犠牲になるのだろうか。
俺の同情心を読んだフェリーが、否定するように微笑んだ。
「もちろん、ルーク王太子が熱望されていらっしゃいることと、ローズ王女も喜んでいらっしゃる、そのことを考慮した上での話だ」
「あ……良かったですね」
「私もそう思うよ」
「え?」
あ、思わず声を出してしまった。当然のようにフェリーに訊かれる。
「私がそう思うのは、君にとって意外だったかな? 大隊長といえども、任務以外にも関心はあるよ」
「あ、いえ……その、実は、フェリー大隊長とローズ王女が付き合っているのではないかと思っておりましたので」
フェリーが目を丸くした後、声を出して笑ったので、耳にかけていた髪がさらさらと流れるように落ちた。
「君にまでそんな誤解をされていたとは。もしかして彼女の部屋に泊まったからかな?」
「……はい、そうです」
「彼女の部屋に行ったのは、異能を使うためだ」
「あ……」
王女は知っていて協力したのだろう。確かに彼女の部屋に入れば他の者達は近付けないから、異能が露見する心配がない。噂が立つようにわざと入るところを目撃させ、任務中にフェリーが長時間不在でも王女の部屋にいるためだと偽装できる。
「そうだったんですね、失礼いたしました」
「いや構わないよ。正直私はそういったことには全く縁がなくてね。誤解されるだけでも新鮮だ」
「え、それこそ意外です」
「そうかな?」
「はい。すごくモテそうだと思いますが」
本当に令嬢から頻繁に言い寄られてそう――上品で知的なのに、色っぽい雰囲気も持ち合わせている。全く縁がないとは少し理解しづらい。
「それは完全に否定しないが」
そう言って笑った彼の瞳には、寂しさが垣間見れた。
「あいにく意中の人には、完全に脈がなくてね」
「不躾ですが……片思い、ということでしょうか」
フェリーが言い寄れば、大抵の女性は靡きそうだが。
「片思いすら烏滸がましいくらいの方でね。私は側にお仕えできるだけで十分なんだ」
想い人は分からないが……国王軍大隊長で高位貴族であろうフェリーが想いを伝えることすら躊躇うとは。やはりどうすることもできない立場の相手なのだろうか。
俺がどう返せばよいのか分からずにいると、フェリーが微笑んだ。瞳には先ほどの沈んだ色はなく、温かみのある雰囲気だ。
「ジルベール。ところで昨晩、君の父上――ギファルド様とは話せたかな?」
「はい。治療を受け、大丈夫そうだと」
「なら安心したよ。私が朝、イリュダから戻ってきた時は来客中だったみたいで。今夜また伺うつもりだ」
また瞳に影が差した気がした。疲れだろうか。
「フェリー大隊長もずっと動かれていらっしゃいますよね。少し休まれたほうが……」
「ああ、心配かけてすまない。一応休憩は取っているよ」
俺がこれ以上言う必要はないだろうが……フェリーにも俺にとってのレオン、父上にとってのクリスティーナのような、自分以上に自分のことを想ってくれる存在がいてほしいと、図々しくも思う。
「それでジルベール。本日の任務だが、他の隊員達が戻ってくるまで、私の書類関係の手伝いしてもらってもかまわないか?」
「はい。それはもちろんですが、機密情報などがあるのでは」
「ああ。当然そこは配慮してお願いする」
「分かりました」
さすがは俺だ。国王軍の体力自慢の隊員達ならば対応できないであろう書類を次々と片付けていく。学園時代は頻繁にレポートをレオンに押し付けていたが、そもそも実力はある。そうでなければ、教師達も簡単に見破るだろうし。
そんなわけで今日の分を終えた俺は、フェリーから「また明日頼む」と言われたため、父上がいる治癒室へと向かっている。
たどり着く直前、廊下でリューイと会った。
父上が治癒室にいることを彼女は知らない。昨晩に続き俺がなぜ治癒隊に来たのか不思議に思われそうだが、彼女も爵位は低いとはいえ貴族なので、疑問に思っても口には出さないだろう。ジュールのような者は例外として。
「お疲れ」
「お疲れ様。今日も珍しくレオンさんとは一緒じゃないのね」
やっぱりレオンが気になっているのか、との思いは顔に出さず、いつもの貴公子然とした態度で対応する。
「ああ。リューイは帰るのか?」
「ええ。任務が終わったので」
「まだそこまで暗くないが、気をつけて」
「さすがジルベール様、お気遣いありがとう。でも私はあの女性とは違うし、それに一応国王軍隊員だもの。大丈夫よ」
「あの女性とは?」
なんで女の話はいつも脈絡がないんだよ。いや、偏見だな。
「昨日は知らなかったけど、あなたのお父様がいらっしゃってたのね。今朝、治療を担当して分かったの。それで――部屋の外で、今までに見たこともないほどの絶世の美女を見かけて。あの女性くらい美しければ危ないでしょうけど」
「絶世の――美女?」
「ふわふわの茶色の髪と緑色の瞳が神秘的な、思わず目を見張るくらい美しい方だった」
リューイはその女性が意中の人の母親だとは分からなかったようだ、結構似ているのに。
いや、重要なのはそこではなくて……
「そんなに綺麗な女性なら、俺も見てみたかったよ」
「ギファルド公爵のお知り合いかと思っていたけど、あなたが知らないのなら違ったみたいね」
驚きを隠して素早く取り繕い、リューイを見送ってからゆっくりと思案する。
父上とクリスティーナは関係を公にできなくても、精神的に互いを支え合っているのだろう。母上ではなくて……とか、そんな気持ちは不思議と湧き上がらない。父上が癒される人があることが、素直に嬉しい。
レオンも知っているのだろうか?
教えたい。だがあいつは優しいから、俺に悪いと思うかもしれない。それで万が一クリスティーナに伝えられ、俺に憚って二人が会うのを躊躇ったりするのは嫌だ。
そういえばフェリーが……今朝父上のところに行ったが来客がいたと話した時、彼の瞳に寂しさの色が映った気がした。
えっ、もしかしてクリスティーナ!?
それならばフェリー大隊長ほどの人物でも想いを伝えられない相手、ということも納得できる。だが、『傍にお仕えできるだけで十分』とも言っていた。フェリーがギファルド家に連絡を伝えに来た時に会ったかもしれないが、それ以外では二人に接点など全くないと思うが……意外な繋がりでもあるのだろうか。
リューイから聞いた話は心の中に留め、父上がいる部屋へと向かう。扉を叩くとすぐに返事があったので入室した。
「失礼します」
「ジルベール、今日の任務は終わったのか」
「はい。フェリー大隊長は今夜父上の元に伺うと、仰っていました」
「そうか」
「父上、顔色が良さそうで安心しました」
「ああ治療のおかげで、明日には屋敷に戻ってよいそうだ」
「そうなんですね。シャンティエから父上が必要なものがあるか、確かめるように頼まれたのですが……迎えの手配のみでよろしいでしょうか」
アンドレは少し思案顔になった。
「頼む。それと、おまえが良かったら……」
言い淀む父上の言葉を待つ。
「一緒に食事を……してくれるか」
「はい是非、喜んで」
「ありがとう」
父上の柔和な顔には、様々な感情が見える。
「こちらの台詞です、父上。よろしければ、レオンとクリスティーナも一緒に」
「ああ……私は本当に父親として情けない。ジルベール、おまえに気を遣わせてしまっているな」
ありがたい言葉だが、俺は否定した。
「いいえ父上、そうではありません。俺がそうしたいのです」
父上の微笑んで温かみのある瞳に、懐かしさを感じる。
「ではレオンが戻ってくる日の夜にでも――いや、本当に私は気が利かない。その日は早く二人きりになりたいだろう、別の日を決めてシャンティエに伝えておく」
やはり父親とのこういう話は恥ずかしい。俺の顔は照れて赤くなっているはずだ。
「父上こそ、お気遣いありがとうございます」
翌日以降もフェリーから指示された書類関係の任務をこなしていった。
父上は屋敷に戻り、初めは室内で執務にあたっていたがすぐに王宮へ出勤できるまでに回復し、国王陛下やフェリー大隊長達と共に、事後処理に追われている。
そして明日、他の隊員達が帰ってくると連絡があった。
「フェリー大隊長。ヴァラン国王達、全ての人が真実を話していると、それは確証があるのでしょうか?」
「誰がどの異能――それに関しては守秘義務があり言えないが、それぞれの国には様々な能力を持つ者がいる」
「相互的に探り合い、判断している――と?」
「まあ端的に言えばそうだ。ジルベール、君はギファルド家子息だ。将来は国政にも関わるだろう、何が真実か見抜く力が必要になる」
「はい」
父上にも同じように言われたことを思い出す。今回も……レオン絡みの色恋沙汰ではあるが、色々と恥ずかしい勘違いをした。
手本となる行動をし、人の上に立ち統括する立場になるには、まだまだ俺は冷静さが足りない。
そういえば……フェリーは俺とレオンの仲は知っていそうだが、出生の秘密はどうだろうか。父上に認められたと信じられる今は、もし周りに知られても大丈夫だと思える安心感がある。
さすがに国中に広まることは避けたいが。いや、ジュールとかに笑われるのは心外だし令嬢からモテなくなるのも嫌だから、やっぱりフェリーとか信頼できる人限定だな。
フェリーが長い髪を耳にかけた。相変わらず品が良く、国王軍よりも王宮での執務が似合いそうだ。気になっていることを尋ねても、大丈夫だろうか。
「フェリー大隊長。お伺いしたいのですが」
「なんだ?」
「結局ローズ王女とルーク王太子はどうなったのでしょうか?」
「ああ。それに関しては父親同士が話し合い、前向きに時間をかけて検討していくことになった」
父親……平民でも親の言うことに逆らえない場合が多いだろうが、彼らの場合は父親が国王だ。二人もまた犠牲になるのだろうか。
俺の同情心を読んだフェリーが、否定するように微笑んだ。
「もちろん、ルーク王太子が熱望されていらっしゃいることと、ローズ王女も喜んでいらっしゃる、そのことを考慮した上での話だ」
「あ……良かったですね」
「私もそう思うよ」
「え?」
あ、思わず声を出してしまった。当然のようにフェリーに訊かれる。
「私がそう思うのは、君にとって意外だったかな? 大隊長といえども、任務以外にも関心はあるよ」
「あ、いえ……その、実は、フェリー大隊長とローズ王女が付き合っているのではないかと思っておりましたので」
フェリーが目を丸くした後、声を出して笑ったので、耳にかけていた髪がさらさらと流れるように落ちた。
「君にまでそんな誤解をされていたとは。もしかして彼女の部屋に泊まったからかな?」
「……はい、そうです」
「彼女の部屋に行ったのは、異能を使うためだ」
「あ……」
王女は知っていて協力したのだろう。確かに彼女の部屋に入れば他の者達は近付けないから、異能が露見する心配がない。噂が立つようにわざと入るところを目撃させ、任務中にフェリーが長時間不在でも王女の部屋にいるためだと偽装できる。
「そうだったんですね、失礼いたしました」
「いや構わないよ。正直私はそういったことには全く縁がなくてね。誤解されるだけでも新鮮だ」
「え、それこそ意外です」
「そうかな?」
「はい。すごくモテそうだと思いますが」
本当に令嬢から頻繁に言い寄られてそう――上品で知的なのに、色っぽい雰囲気も持ち合わせている。全く縁がないとは少し理解しづらい。
「それは完全に否定しないが」
そう言って笑った彼の瞳には、寂しさが垣間見れた。
「あいにく意中の人には、完全に脈がなくてね」
「不躾ですが……片思い、ということでしょうか」
フェリーが言い寄れば、大抵の女性は靡きそうだが。
「片思いすら烏滸がましいくらいの方でね。私は側にお仕えできるだけで十分なんだ」
想い人は分からないが……国王軍大隊長で高位貴族であろうフェリーが想いを伝えることすら躊躇うとは。やはりどうすることもできない立場の相手なのだろうか。
俺がどう返せばよいのか分からずにいると、フェリーが微笑んだ。瞳には先ほどの沈んだ色はなく、温かみのある雰囲気だ。
「ジルベール。ところで昨晩、君の父上――ギファルド様とは話せたかな?」
「はい。治療を受け、大丈夫そうだと」
「なら安心したよ。私が朝、イリュダから戻ってきた時は来客中だったみたいで。今夜また伺うつもりだ」
また瞳に影が差した気がした。疲れだろうか。
「フェリー大隊長もずっと動かれていらっしゃいますよね。少し休まれたほうが……」
「ああ、心配かけてすまない。一応休憩は取っているよ」
俺がこれ以上言う必要はないだろうが……フェリーにも俺にとってのレオン、父上にとってのクリスティーナのような、自分以上に自分のことを想ってくれる存在がいてほしいと、図々しくも思う。
「それでジルベール。本日の任務だが、他の隊員達が戻ってくるまで、私の書類関係の手伝いしてもらってもかまわないか?」
「はい。それはもちろんですが、機密情報などがあるのでは」
「ああ。当然そこは配慮してお願いする」
「分かりました」
さすがは俺だ。国王軍の体力自慢の隊員達ならば対応できないであろう書類を次々と片付けていく。学園時代は頻繁にレポートをレオンに押し付けていたが、そもそも実力はある。そうでなければ、教師達も簡単に見破るだろうし。
そんなわけで今日の分を終えた俺は、フェリーから「また明日頼む」と言われたため、父上がいる治癒室へと向かっている。
たどり着く直前、廊下でリューイと会った。
父上が治癒室にいることを彼女は知らない。昨晩に続き俺がなぜ治癒隊に来たのか不思議に思われそうだが、彼女も爵位は低いとはいえ貴族なので、疑問に思っても口には出さないだろう。ジュールのような者は例外として。
「お疲れ」
「お疲れ様。今日も珍しくレオンさんとは一緒じゃないのね」
やっぱりレオンが気になっているのか、との思いは顔に出さず、いつもの貴公子然とした態度で対応する。
「ああ。リューイは帰るのか?」
「ええ。任務が終わったので」
「まだそこまで暗くないが、気をつけて」
「さすがジルベール様、お気遣いありがとう。でも私はあの女性とは違うし、それに一応国王軍隊員だもの。大丈夫よ」
「あの女性とは?」
なんで女の話はいつも脈絡がないんだよ。いや、偏見だな。
「昨日は知らなかったけど、あなたのお父様がいらっしゃってたのね。今朝、治療を担当して分かったの。それで――部屋の外で、今までに見たこともないほどの絶世の美女を見かけて。あの女性くらい美しければ危ないでしょうけど」
「絶世の――美女?」
「ふわふわの茶色の髪と緑色の瞳が神秘的な、思わず目を見張るくらい美しい方だった」
リューイはその女性が意中の人の母親だとは分からなかったようだ、結構似ているのに。
いや、重要なのはそこではなくて……
「そんなに綺麗な女性なら、俺も見てみたかったよ」
「ギファルド公爵のお知り合いかと思っていたけど、あなたが知らないのなら違ったみたいね」
驚きを隠して素早く取り繕い、リューイを見送ってからゆっくりと思案する。
父上とクリスティーナは関係を公にできなくても、精神的に互いを支え合っているのだろう。母上ではなくて……とか、そんな気持ちは不思議と湧き上がらない。父上が癒される人があることが、素直に嬉しい。
レオンも知っているのだろうか?
教えたい。だがあいつは優しいから、俺に悪いと思うかもしれない。それで万が一クリスティーナに伝えられ、俺に憚って二人が会うのを躊躇ったりするのは嫌だ。
そういえばフェリーが……今朝父上のところに行ったが来客がいたと話した時、彼の瞳に寂しさの色が映った気がした。
えっ、もしかしてクリスティーナ!?
それならばフェリー大隊長ほどの人物でも想いを伝えられない相手、ということも納得できる。だが、『傍にお仕えできるだけで十分』とも言っていた。フェリーがギファルド家に連絡を伝えに来た時に会ったかもしれないが、それ以外では二人に接点など全くないと思うが……意外な繋がりでもあるのだろうか。
リューイから聞いた話は心の中に留め、父上がいる部屋へと向かう。扉を叩くとすぐに返事があったので入室した。
「失礼します」
「ジルベール、今日の任務は終わったのか」
「はい。フェリー大隊長は今夜父上の元に伺うと、仰っていました」
「そうか」
「父上、顔色が良さそうで安心しました」
「ああ治療のおかげで、明日には屋敷に戻ってよいそうだ」
「そうなんですね。シャンティエから父上が必要なものがあるか、確かめるように頼まれたのですが……迎えの手配のみでよろしいでしょうか」
アンドレは少し思案顔になった。
「頼む。それと、おまえが良かったら……」
言い淀む父上の言葉を待つ。
「一緒に食事を……してくれるか」
「はい是非、喜んで」
「ありがとう」
父上の柔和な顔には、様々な感情が見える。
「こちらの台詞です、父上。よろしければ、レオンとクリスティーナも一緒に」
「ああ……私は本当に父親として情けない。ジルベール、おまえに気を遣わせてしまっているな」
ありがたい言葉だが、俺は否定した。
「いいえ父上、そうではありません。俺がそうしたいのです」
父上の微笑んで温かみのある瞳に、懐かしさを感じる。
「ではレオンが戻ってくる日の夜にでも――いや、本当に私は気が利かない。その日は早く二人きりになりたいだろう、別の日を決めてシャンティエに伝えておく」
やはり父親とのこういう話は恥ずかしい。俺の顔は照れて赤くなっているはずだ。
「父上こそ、お気遣いありがとうございます」
翌日以降もフェリーから指示された書類関係の任務をこなしていった。
父上は屋敷に戻り、初めは室内で執務にあたっていたがすぐに王宮へ出勤できるまでに回復し、国王陛下やフェリー大隊長達と共に、事後処理に追われている。
そして明日、他の隊員達が帰ってくると連絡があった。
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