公爵子息だったけど勘違いが恥ずかしいので逃走します

市之川めい

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第一部

なぜ受け入る

 レオンをベッドの上で四つん這いにさせ、俺は用意しておいた、行為のための粘度がある液体が入った容器の蓋を開いた。むだな肉のない引き締まった背中にすら欲情してくる。
 聡明なレオンは俺が今から何をしようとしているのか気が付いているだろうが、抵抗はしない。まあ頭が良いからこそ、自分に拒否権がないことも完全に理解しているのだ。

「もう少し足を開いて尻を突き出せ。そうだ」

 潤滑剤を手に取り、命令に従うレオンのあなの部分を湿らす。固くしっかりと閉じているそこに指をゆっくりと侵入させる。少しずつ小刻みに動かし、レオンの中を自分のものにしていく。触れると内側がうねるようになる箇所がある。俺はそこを丹念に刺激すると、レオンの薄く形に良い口から声が漏れ出した。

「ん……あっ、んあ――」

 潤滑剤を足しながら指を増やし、さらに奥へとゆっくりと進む。レオンは恥ずかしそうに顔をベッドにうずめ、声を抑えようとしている。
 ああ、なぜこうもお前は加虐心かぎゃくしんを煽るのだ。いや、これは支配欲か?
 三本目の指を挿れ、これからする行為のように動かすと、体を支えきれなくなったのか足が震え始めた。

「そろそろいいか。尻を上げろ」
「はい――ジルベール様」

 俺は今までにないくらいに屹立しているそれを押し付けた。レオンが顔の周りのシーツを掴み、必死に耐えながらも俺を受け入れようとしている。

「レオン、力を抜け。これでは入らないぞ」
「――っ、申し訳あり……ません」

 さらさらな黒髪を撫でると、少し安心したのかレオンの体の強ばりが緩んだ。それを見計らい、犯すように一気に突く。中は熱くとろとろにとろけ、俺が出し入れする動きに合わせるように反応させている。
 やばい――想像以上だ。気を抜くとすぐにイキそうになるため、必死に訓練のことを思い出して気を逸らす。

「あっ、ん……ゔ……」

 荒い息づかいの合間に、押し殺そうとしたはずの声の欠片が混じる。男だから恥ずかしいのか?
 俺は別に聞こえてもかまわないんだがな。だが、必死に耐えているレオンに興奮するのも事実で、俺もそろそろ限界だ。本当は体勢を変えても良かったがそれは次の楽しみにすることにして、腰を振るスピードを早めた。

 何度目か奥を突いた時、レオンが体をビクッとさせ達したのが分かった。それと同時に内壁が痙攣しているのかのようになり性器を締め付けられ、俺も欲をレオンの中に吐き出した。
 頭の中は今までに味わったことのない達成感と恍惚感で占められ、今日の模擬戦訓練のことが遠い昔のように感じられる。

 体を離し拭くものを取ろうとした時に、レオンに言われ振り返った。
 
「ジルベール様……申し訳、ござい……ません……」
 
 本当に怯えている様子だ。

「どうした? 何を謝ってるんだ?」
「――ジルベール様のベッドを……汚して……しまいました」

 見ると、白濁のものがある。
 
「ああ、別にかまわない。そんなもの、使用人を呼んで交換させれば済む話だろう」
「すみません、ありがとうございます……あの、ご迷惑でなければ……私が自分でやります。その――差し出がましいですが、あまり気が付かれないほうがよろしいかと……」

 いくら父上が可愛がっているレオンだとしても、使用人と関係を持つことは公爵家子息としては相応しくないだろう。レオンとのことが露見しなくても、そしたら俺が一人でやってベッドに出したことになる。それは――貴公子としてのイメージ上、色々まずい。

「それもそうだな。頼む」

 頷いた後シーツを取ろうと枕元の方に行ったレオンは、俺の声に振り返った。

「後でいい。それよりまずは浴室に来い」
「――かしこまりました」

 部屋に併設されている浴室に二人で入る。レオンがお湯の蛇口を開いた後、椅子に座った俺を洗い始めた。痛いだろうに、休みたいだろうに――それを少しも表に出さず、甲斐甲斐しい完璧な使用人だ。
 泡立てた石鹸を滑らせるレオンの繊細な指が、訓練中の洞窟での出来事を思い出させる。適度に熱い湯で流されると、俺はレオンに座るよう促した。

「いえ、ジルベール様の前で私が座ることは……」
「俺の言う事が聞けないのか」

 俺は自分がされたように、レオンの吸い付くような肌を石鹸で擦っていく。初めは居心地悪そうにしていたが抵抗はしない。まあ、拒否するなら今じゃなく、普通はさっきの行為の最中だろう。いくら使用人の息子といえども無理やりされたと言えば、さすがに当家子息の俺でも立場は悪くなる。
 ましてやレオンの人望もあり、誰一人としてレオンが嘘をつくとは思わない(全くもって事実だし)

 レオンのギファルド家への忠誠心と身分をわきまえた人となりは評価するが、正直に言えば少々せないところもある。いくら母親と自分が昔から世話になっているとはいえ……普通ここまで健気にえ得るものなのか?
 レオンの母、クリスティーナは今も美貌が衰えていない絶世の美女だから、息子付きの平民だとしてもいくらでも良縁を探せるだろうし。

 流し終えたので俺は湯船にかり、レオンも一緒に入るよう命じた。個人用の浴室なので屋敷の中では小さい作りだが、それでも二人で入ることができるくらいには大きい。
 ただ俺達のように長身の男二人ではくっつく感じになるので、さすがに困った様子で「ジルベール様。私はシーツを交換しておきますので……」と理由をつけて断ろうとしたレオンを、俺は腕を引っ張るようにして強引に中に入れて向かい合うように座らせた。

「疲れているか?」
「――いえ、お気遣いありがとうございます」

 一瞬頬を引きつらせてから答えたのは、が模擬戦訓練でなのか、それとも先ほどのことなのか考えたからだろうか。どちらにせよレオンが言う(言える)返事は一つしかなくても。
  

 こういう時、意外とレオンは俺も疲れているか尋ねてこない。多分完璧な俺に訊くのは失礼だと思っているのだろう。それは正しい判断だ。身分の高い者は下位の者達の手本となるよう、そして周りに付け入る隙を与えないよう、幼少期から厳しく躾られる。

「ジルベール様……」
「何だ?」
「あの、初めてだったので――上手くできなくて……粗相してしまい……すみません」
「いや、気持ち良かったぞ」
 
 ふと視線をあげると、レオンの緑色の瞳に捉えられた。赤くなって少し戸惑ったレオンの形の良い唇を奪おうとしたが、模擬戦前からしようと思っていたはずなのに、なぜかそうするのは挿入するよりも緊張して最後までできなかった。

 結局そのまま風呂から上がり、新しい寝巻きを着て部屋に入ると、先に出たレオンがちょうど茶を淹れ終えたところだった。

「ジルベール様。今シーツを交換しますので、少々お待ちください」と言われたので、ソファに腰を下ろした。
 安眠効果のある茶は熱すぎない温度で用意されている。火を使う異能の俺は相当熱い茶でも問題ないが、こういう時は少しぬるめが好きなのをレオンは心得ている。

「ジルベール様、お待たせいたしました」
「ああ」
「では、おやすみなさいませ」


 
 翌朝からは、特に変わりない日々が過ぎていった。野外での合同訓練の予定はまだ先のため、学園内での授業、練習、試験といった内容だ。
 相変わらずレオンとともに行動しているが、関係に変化はない。お互い外では以前と同じ態度を崩さないため(その必要もないが)、気付く者はいないだろう。
 顔を合わせれば突っかかってくるラファエルを華麗にスルーしつつ令嬢からの熱のこもった視線を集め、そして夜はレオンを呼び出し好きにする!
 人生がイージーモード過ぎて刺激が欲しくなり、その渇欲かつよくのはけ口のレオンは忠実に俺の渇きを癒す。俺はなんて恵まれた人生を謳歌しているんだ!


 この異能属性学の授業が終われば今日はもう講義がない。俺はレオンを連れ、情事のための教室へと向かった。人のいない廊下を抜け鍵を開けると、無人の室内はひっそりと静まり返り空気が重く感じ、ここだけ時が止まったかのようだ。
 いつものように俺の前にしゃがみ奉仕しようとしたレオンを制し、ズボンと下着を脱いで机の上に仰向けで乗るように命じた。

「レオン、足を持ち上げて自分で抱えろ」
 
 素直に応じて膝の裏を手で抑えているレオンの下肢に、ズボンのポケットから取り出した潤滑剤を垂らす。昨日もしたばかりだからまだ柔らかいそこは、指で拡げるとあっという間に俺を受け入れる準備を終えた。

「触ってもないのに何硬くしてるんだよ」
「――申し訳、あり……ません……」

 先端が溢れ出たもので濡れている。俺はそれを指で拭うと、レオンに舐めさせた。

「自分が出したものの味はどうだ?」

 そう言いながら下の口に俺のものを挿れると、レオンが甘さを含めた声を漏らした。ああ、この縋るような視線――俺は腹の底から欲がたぎるのを感じる。
 動くと机が軋み音が出た。周りに気付かれないか心配になるが、その背徳感が高揚感になり、より強い快楽へと導くのを否定できない。
 恥ずかしい体勢にさせられ、顔を歪めて必死に声を我慢しているレオンの硬くなった性器を擦ると、中がうねり締め付けを強くした。

「ジル、ベール様……っあ、ん……」

 俺は本能が望むままに腰を振ると、その動きに合わせて漆黒の髪が揺れる。

「このっ、ままでは……ジル……ベール様の……服を、よご、して……しまい、ます」
「イキそうか?」

 頷いたのか喘いでいるのか分からないレオンだが、達しそうなのは確かだろう。俺は擦っていた動きをやめ、そのまま右手で付け根を強めに押さえつけた。出したいのに出せないレオンは、潤んだ緑色の目で俺を見あげ、より深い甘美な感覚を享受きょうじゅしているかのようだ。
 しかし従順にギファルド家に仕えるレオンだ。実際は演技で、少しでも俺が罪悪感をいだかないようにとの配慮だろうと思う。

 だが聡明なレオンでも気が付いていないが、俺が良心の呵責にさいなまれることなど有り得ない。むしろそんなレオンを無茶苦茶にして、泣いて縋ってほしいとすら考えている。
 ああ可愛い俺のレオン――このまずっと俺のものでいてくれ……
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