怨刃=ENNJINN=

詠野ごりら

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序章

序章 2

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        2

 伊助はピカデリーの階段を二歩ほどで上がると、裏道に出た。
 ピカデリー裏口を左折し、細い十字路にいる交通整理のガードマンを突き飛ばすと、伊助は伊勢丹の入り口へ入っていった。
 伊勢丹に入ると、伊助は、迷う事無くすぐ前方にある階段を上がって行く。
 警官達と村上と岩田もなんとかそれに追いつき、階段を上るが、二階の踊り場で岩田が値を上げた。
「村上、先に行け!俺は持たん・・・」
 
 伊助は、村上を始めとした警官達と伊勢丹の狭い階段を上へ上へと駆け上がって行き、やがて屋上階へ辿り着き、通路を抜け、芝生の張られた庭のような部分にでる。
 伊助は一瞬七月の嘘のような青空を見上た。
 ベビーカーを押す若い夫婦、小さな子供を遊ばせる主婦。
 伊助の目に平和な光景が毒物のように、脳内ではじけ飛んだとき、あちらこちらから警官達が雪崩を打ったように現れ、平和な屋上公園の空気は殺気だった物に一変した。
 金切り声をあげ、子供を抱きかかえるようにして逃げる家族連れたち。
「クッ!」
 伊助は苦しそうな呻きを上げると、屋上にある弁財天の小さな社を一瞥する。
「動くな!もう逃げられんぞ!」
 一人の若い警官が血気盛んに叫ぶ。
「フフフ・・・ニゲラレヌカ・・・けけけけけぇ」
 伊助は小烏丸を警官達に向けると、それを大きく振り回しながらクルリと身体を回転させた。
 回転させると同時に、伊助は宙に浮き、黒いロングコートを鳥の翼のように広げた。
「えっ?」
「なにぃ?」
「あそこに居るぞ!」
 警官の指す方を村上は見た。
 信じられなかった。
 信じる事など出来ようはずがなかった。
 
 伊助は大きな三本足の鳥へ変貌し、伊勢丹の屋上看板の上にとまっていたのだ。

  グアァァー!グアァァー!

 伊勢丹の「○に伊」の看板の上で、人の背丈ほどの怪鳥が鳴いている。
 
 グアァァァ!グアァァァ!

 黒い怪鳥はもう一度鳴くと、翼を広げ、新宿御苑方面飛んでいってしまった。

「嘘だろぉ・・・」
「マジかよ」
 警官達は悪夢の中から解き放たれずに、ただ屋上から街並みをぼんやりと眺めるしか出来ずにいた。
 その悪夢の世界に、村上も漂っていた。
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