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黒づくめの男
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「プハー。ゲップっ」
俺が一人でカウンター席でゴールデンビール酒を煽っていると、一人の男が俺の隣へと腰掛けた。上衣もズボンも全て黒づくめの男だ。
「良い飲みっぷりだな。観ているこっちが同じ酒を飲みたくなってくるような。と言うわけでマスター、俺とそれと、この隣の若旦那にもゴールデンビール酒、中ジョッキで」
「へい。ガッテンで」
「いや。せっかくだけど俺は良いいよ。それと俺は若旦那じゃねえ」
胡散臭さ全開の男だ。若旦那なんて言われたのは初めて。おそらくおだてているんだろうけど、ちょいウケる。
「さすがはこれからの拳闘士界を背負って立つ若旦那だけあるな。試合で良い結果を出すにはストイックさが大事だもんな。でも、ま、今だけは別さ。一杯だけ俺に奢らせてくれよ、新緑のケヤキマスクさん」
(なぬ?コイツどうして俺の正体を!もしやドラゴンAとプラズマの迅雷の息子であるアクセル・アイアンバトラーと知っているのか)
「新緑のケヤキマスクって拳闘士はマスクを観客の前で取らないって言うぜ。素顔を知るのは本人を除けばごく一部の関係者だけらしい。どうして俺が新緑だって思ったんだよ?」
「背格好、鍛えられた身体だけじゃない、全身から発せられる他者を惹きつける王者の風格っていうかオーラみたいなもので、すぐに分かったさ。誤魔化したってダメだぜ、俺だってこう見えて拳闘士の端くれ、分かってしまうのさ」
やはりコイツは胡散臭い。俺だってそんなもんは分からないもん。まあ、この辺は両親が両親で幼い頃はずっと一緒に暮らしていたからかも知れないけど。
いつもは概ね明るく優しい二人、違う雰囲気になることもある二人だけど、彼の言うような物語の登場キャラクターみたいなものを感じたことは一度たりとてないのだ。
カントの街のやや外れにひっそりと一軒佇む赤煉瓦倉庫。俺はあの胡散臭い黒づくめの男の言葉に乗っかり、彼の誘いに乗っかることにしたのだ。
ブラックモアはなかなか尻尾を出さない。父さんも母さんも手を焼いている。そこでもし彼がブラックモアの手先なら、何かしら役に立つ情報を手に入れられるかも、とついていくことにしたのだ。
危ない橋を渡っていることになるが、逃げ出すことぐらいならできるだろう。端っこではなく橋の真ん中を堂々と渡る。つまいは正攻法。この戦法が案外有効なのは日本出身の俺は知っている。まあ、通行禁止の橋の端っこではなく橋の真ん中を小坊主が渡っただけの話だけど。
「一般的なアルコール、つまり酒はいっときの気晴らしにはなっても、決して身体に良いわけではないぜ。あんたは拳闘士だ。身体に良い食いもん飲みもんはいくらでもあるだろう?これでも食ってみな。身体の身体能力や筋力がアップするような薬じゃないけど、体の健康には良いはずだぜ。もしかしたら、身体の中のアルコールを追い出してくれるかもな」
黒づくめは俺にりんごを投げてよこした。俺は受け取る。薄暗い倉庫内。りんごがどんな色や状態なのか見ることはできなかった。
「ありがとよ。コイツは宿屋に帰ってからゆっくり食わせてもらうぜ」
「いや。ソイツはここで食わなければならないんだ。それがルールってもんだぜ。アミーゴ」
「なーにがアミーゴだよ。てか、若旦那じゃなかったけ?そんなルール勝手につくんなよ。じゃあな、あばよ。アミーゴ」
「待て!悪いけど、このまま帰すわけにはいかないぜ!」
ついに正体を表したな。喜び半分緊張半分、あまりやったことのない命のやりとり。回避できそうにないな、と俺は咄嗟に覚悟を決めた。
俺が一人でカウンター席でゴールデンビール酒を煽っていると、一人の男が俺の隣へと腰掛けた。上衣もズボンも全て黒づくめの男だ。
「良い飲みっぷりだな。観ているこっちが同じ酒を飲みたくなってくるような。と言うわけでマスター、俺とそれと、この隣の若旦那にもゴールデンビール酒、中ジョッキで」
「へい。ガッテンで」
「いや。せっかくだけど俺は良いいよ。それと俺は若旦那じゃねえ」
胡散臭さ全開の男だ。若旦那なんて言われたのは初めて。おそらくおだてているんだろうけど、ちょいウケる。
「さすがはこれからの拳闘士界を背負って立つ若旦那だけあるな。試合で良い結果を出すにはストイックさが大事だもんな。でも、ま、今だけは別さ。一杯だけ俺に奢らせてくれよ、新緑のケヤキマスクさん」
(なぬ?コイツどうして俺の正体を!もしやドラゴンAとプラズマの迅雷の息子であるアクセル・アイアンバトラーと知っているのか)
「新緑のケヤキマスクって拳闘士はマスクを観客の前で取らないって言うぜ。素顔を知るのは本人を除けばごく一部の関係者だけらしい。どうして俺が新緑だって思ったんだよ?」
「背格好、鍛えられた身体だけじゃない、全身から発せられる他者を惹きつける王者の風格っていうかオーラみたいなもので、すぐに分かったさ。誤魔化したってダメだぜ、俺だってこう見えて拳闘士の端くれ、分かってしまうのさ」
やはりコイツは胡散臭い。俺だってそんなもんは分からないもん。まあ、この辺は両親が両親で幼い頃はずっと一緒に暮らしていたからかも知れないけど。
いつもは概ね明るく優しい二人、違う雰囲気になることもある二人だけど、彼の言うような物語の登場キャラクターみたいなものを感じたことは一度たりとてないのだ。
カントの街のやや外れにひっそりと一軒佇む赤煉瓦倉庫。俺はあの胡散臭い黒づくめの男の言葉に乗っかり、彼の誘いに乗っかることにしたのだ。
ブラックモアはなかなか尻尾を出さない。父さんも母さんも手を焼いている。そこでもし彼がブラックモアの手先なら、何かしら役に立つ情報を手に入れられるかも、とついていくことにしたのだ。
危ない橋を渡っていることになるが、逃げ出すことぐらいならできるだろう。端っこではなく橋の真ん中を堂々と渡る。つまいは正攻法。この戦法が案外有効なのは日本出身の俺は知っている。まあ、通行禁止の橋の端っこではなく橋の真ん中を小坊主が渡っただけの話だけど。
「一般的なアルコール、つまり酒はいっときの気晴らしにはなっても、決して身体に良いわけではないぜ。あんたは拳闘士だ。身体に良い食いもん飲みもんはいくらでもあるだろう?これでも食ってみな。身体の身体能力や筋力がアップするような薬じゃないけど、体の健康には良いはずだぜ。もしかしたら、身体の中のアルコールを追い出してくれるかもな」
黒づくめは俺にりんごを投げてよこした。俺は受け取る。薄暗い倉庫内。りんごがどんな色や状態なのか見ることはできなかった。
「ありがとよ。コイツは宿屋に帰ってからゆっくり食わせてもらうぜ」
「いや。ソイツはここで食わなければならないんだ。それがルールってもんだぜ。アミーゴ」
「なーにがアミーゴだよ。てか、若旦那じゃなかったけ?そんなルール勝手につくんなよ。じゃあな、あばよ。アミーゴ」
「待て!悪いけど、このまま帰すわけにはいかないぜ!」
ついに正体を表したな。喜び半分緊張半分、あまりやったことのない命のやりとり。回避できそうにないな、と俺は咄嗟に覚悟を決めた。
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