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第15話
しおりを挟む約束通り、僕は運転させてもらった。その時は今の窮地を忘れようと努力したが、そうもいかなかった。でも、やっぱりこの車は凄い! いつか乗りたい!
だけど今は、この危機を乗り切らないと……。
「どうでしたぁ?」
「はい……とっても良かったです」
「ん? 元気ないですねぇ。心配しなくても、取って食いやしませんよ。ちゃんと先生の車のあるところまでお送りしますから」
既に運転席には沢城さんが座っている。僕はその言葉に安堵しながらも、少しだけ拍子抜けな気分になってることに狼狽えた。
帰り道、何故か沢城さんは黙ったままだった。時折、思い出したように料理の話をしたけれど長続きせず。僕も自分から発することができなくて、しんとした空気が車内に重く垂れこめていた。
公民館の駐車場に着いたころには、もう辺りはすっかり陽が落ちていた。何とか閉館までには間に合った。夜にも公民館では教室があるんだ。
「今日はありがとうございました」
僕がお辞儀して車を降りようとしたとき、沢城さんが身を乗り出した。
「ひゃっ」
小さな悲鳴を上げる。ドアを開けようとした僕の腕が掴まれると同時にシートが倒れた。
「驚きました?」
「さ、沢城さん、何にもしないって……」
「やだなあ、先生。それは、するってことですよぉ」
僕の上に覆いかぶさるように沢城さんは体を預けてくる。前髪がふわりと額に降りていく。切れ長の双眸がきらりと光った。
「あっ……」
顎のくぼみに親指を当てると、僕の口が簡単に開く。そこに沢城さんの薄めの唇が絡みついてきた。そのまま柔らかな舌が僕の舌を探し出す。
「心配しないで、先生……。私は、美原さんみたいに……はふっ……顔にも態度にもだしません……」
「あふっ……んんっ」
言葉を繋ぎながらも、沢城さんはキスを続ける。
「だから……はあっ、たまにつまみ食いさせて……ふうっ……くださいね」
熱い息が車の窓を曇らせる。僕はたっぷりと? つまみ食いされてしまった。
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