【完結】寒風の吹く夜僕は美少年を拾った~砂糖菓子のように甘く切ない恋の物語~

紫紺

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第11章 反撃と脱出

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 警部が語った話は、恐らくジョシュアはある程度分かっていたのかもしれない。
 ロンは退院後、ロンドン市内の教会に住み込みで働いていた。どこでもらったのかはわからないが新聞でジョシュアの写真を発見したようだ。

 そして彼は……それを持ってマクミランのところへ自ら行ったのだ。
 ロンがいなくなったことはスコットランドヤードのキャンベル警部に伝えられ、もしかしたら捕まったのかとマクミラン一味を張る。案の定彼はそこにいた。

「ロン君はすぐには帰ろうとしませんでしたな。いい話を持って行ったからお金も仕事ももらえると、本気で思っていたようです。でもマクミランはそんな簡単な連中じゃないですから」
「ロンは今どうしてるの?」

 ようやくジョシュアが口を開いた。ロンのやったことにジョシュアは尋ねることも責めることもせずそう聞いた。

「今は拘留してるよ。正直またマクミランとつるまれても困るからね。これでもかなり譲歩しているつもりだ」
「ねえ、イーサン。俺がもらった賞金。まだ手付かずだよね?」

 賞金。ジョシュアが詩の新人賞で得た賞金だ。大きな額ではなかったがジョシュアの給金の二ヶ月分にはなった。

「ああ、もちろん。出版社との契約はまだだけど、あのお金は君のものだ」
「警部さん、俺からと言わずにそのお金をロンに渡して欲しいんだ。一度にじゃなくてもいいから、あいつが一人で生きていけるようにして欲しい。これからも俺が稼げたら少しずつでもお金を送るから」

「ジョシュア……きみ……」
「そんなことは君がする必要はない。我々の方で目を光らせておくしマクミラン一味をさっさと壊滅させるよ」

「違うんだよ。ロンがどうしてそうしたか。俺にはわかり過ぎるくらいわかるんだ。
 あいつは俺に裏切られたと思ったんだ。ずっと一緒に逃げてずっと一緒にいたのに。いつの間にか俺だけ幸せになっていたことに気が付いたんだ」

『ロンが死んで、俺は解放されたと思った』。いつだったかジョシュアは僕にそう言った。ようやくロンという枷が外れ僕のところにやってきたジョシュア。
 自分だけが僕というパートナーを得たことに君は罪悪感を持っていたのか?

 ――――助けてやりたい。ジョシュア、君は幸せになっていいんだ。だからこそ……。

 僕はある作戦を思いついた。警部にとっても願ってもない話じゃないだろうか。お金だけで解決できることではないが、スコットランドヤードがロンから目を離さずにいてくれたなら彼もやり直せるかもしれない。
 もちろん結局は本人次第だけれど、誰かが気にしていることを知れば人は努力できるんじゃないかな。

「警部殿。ジョシュアの願いを聞いてもらえませんか。ロンがまともな生活を送れるよう気にかけて欲しいのです。金銭の援助もジョシュアの言うようで構いません。その代わりマクミランをおびき出し、逮捕するお手伝いをします」

 警部とジョシュアは同時に僕の顔を見た。

「そんなことが……できますか?」
「恐らく。もちろん、スコットランドヤードには僕らを守ってもらいます。それと容疑は脅迫か誘拐未遂なので、あまり大きな罪には問えないかもしれませんが」
「いや、それは大丈夫です。一度拘留してしまえばこちらで何とでもします」

 自信ありげに警部はそう言った。もしかしたら警部は僕らに協力を願いに来たのではないだろうか。とすればうまく乗せられたのか? 
 そう思ったが後の祭りだ。やるしかない。



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