【完結】寒風の吹く夜僕は美少年を拾った~砂糖菓子のように甘く切ない恋の物語~

紫紺

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第11章 反撃と脱出

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 僕らが走り去ったホームでキャンベル警部はマクミラン一味を取り押さえた。

「警部、グリフィス先生たちがどこにも見当たりませんが」

 困り顔のコール警部補に向かってニヤリと笑う。

「気にしなくてもいい。先生たちはご旅行だよ」

 と言ったかどうかはわからない。



 船のデッキに出るとさすがに波風が強い。夏のドーバー海峡はこれでも波が静かだと言うが、体に感じる揺れは想像以上だ。

「俺、船は初めてだよ」
「ああ、僕も久しぶりだ。前にこの海峡を渡ったのは学生時代だったからな」

「イーサン、フランス語は大丈夫なの?」
「任せておけ。もっとも耳のいい君の方がすぐに話せるようになると思うけどね」
「ねえ、俺がボスに渡した封筒には何が入ってたの? 例の写真だけにしては厚かったように思うけれど」

 金色の髪を風になびかせながらジョシュアが尋ねる。

「あれは君とあいつがやり取りした証拠だよ。僕を脅す手筈を書かせたろ?」
「ああ、あれかぁ。イーサン意外に悪いんだな」
「賢いと言ってくれ」

 駅で写真を渡すまでのやり取りのなかで、僕はマクミランに脅迫の一部始終を書かせるよう仕向けた。
 それが奴らの脅迫の証拠になるかはわからないが警部にとって役に立ってくれればいいと思っている。まあ後は彼らに任せればいいことだ。知ったこっちゃない。

「僕もジョシュアと一緒にいるためなら、何でもやるのさ」

 ジョシュアは僕の顔を穴のあくほど見つめるところころと笑い出した。そして手すりに寄りかかり、今度は真面目な顔をして告白する。

「俺もさ。俺もロンのこと気にしてないわけじゃないけど、あいつを見捨てる覚悟はできてた。俺はイーサンと一緒にいるためなら何だってする。最初に言ったとおりだ」

 それでも君は最後まで精一杯頑張った。警部とした約束も嘘じゃない。僕はわかっているよ。
 でもいいんだ。僕はもう構わない。君が何者でもどんな過去を持っていても。僕は君を愛していて君も僕を愛していてくれる。それで十分だ。僕らにはお互いしかいないんだから。

 僕は彼の肩をぽんぽんと叩く。

「見てごらん。港が見えてきた。フランスだ」

 船は灰色の煙を吐きながら波をつんざいて走っていく。僕らを新しい希望の大地へと導いて。

 もう誰にも邪魔させない。僕とジョシュアの物語は今始まったばかりだ。さあ行こう。自由の世界へ。 






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