カササギは雨の夜に啼く【R18】

紫紺

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第2章

4 最悪な朝

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 離れそうで離れない、まとわりつくような残暑の熱気は、どうやら秋の清々しい空気に変わったようだ。
 それでも時折30度を超える日もあるが、湿気がない分過ごしやすい。ほとんどインドアで過ごす俺でも、この季節の変わり目は歓迎だ。

「今、何時?」

 寝室の窓を開け、朝の空気を入れていると、ベッドから寝ぼけ声が聞こえてきた。昨夜遅く、カササギがやってきたのだ。
 こんな晴れてる朝にまだいるのは珍しいな。まあ、久しぶりだったので俺が熱ーく抱いてやったんで疲れたんだろう。今の今までぐっすり眠っていた。

「10時だよ」
「え? もうマーケット……ああ、今日は土曜日か」
「なんだよ。それも知らずに来たのか」
「あいにく、オレは曜日の感覚ないんでね」
「遊び人の特権だな」

 カササギは、気だるそうに起き上がる。くせっ毛が絡みあって酷い有様だ。それも俺が掻き混ぜたからでもあるが。相変わらず白くて華奢な、けど美しい裸体が滑り落ちたシーツから覗いた。

「遊び人で悪かったな。これでもご奉仕してるつもりだけど」
「奉仕というなら、俺だってしてるだろ? おまえ、昨夜も乱れまくってたじゃないか」
「ちぇ、反論できないのはちょっと悔しいね」

 再びごろんと寝ころび、長い両手足を伸ばす。また寝るつもりか一息して瞼を閉じた。朝日に照らされた肌がまるでどこかの彫像のように美しい。俺はまたごくりと生唾を呑んだ。

「おいおい。もう部屋に戻れ」

 このままここで居座られたら、またむくむくと俺の性欲が顔を出してしまう。こいつらがどういうタイミングで入れ替わるのか知らないが、さっさとベッドを明け渡し、清純な顔に戻って欲しい。なんだけど……。

「カササギ? それとも……もう一回、やるか?」

 それでも、ふるふると震える長いまつ毛を見ていると、もう一度可愛がりたい気持ちが湧いてくる。俺もまだ裸のままだ。人は甘ったれたほうに流されやすいもの。俺はその欲望に抗えず、あいつの上に四つん這いになった。

「え……」

 俺はカササギの細い顎を右手で掴み、くいっと上げる。事を始めるお約束のキスをした。あいつの下唇と上唇を交互に舐め、それから乱暴に舌をねじ込む。

「ううんっ……」

 可愛い声で鳴くのを聞くと、また下腹部が熱くなって……。

「カササギ、俺の……」

 あいつの細い手首を持ち、自分の熱いところに誘おうとした。だがいつもなら勝手に動いていく腕に、力が入ってる。それどころか俺の動きに抗い、逆に引っ張ろうとしていた。

「なんだよ……カサ……え……」

 唇を離した俺は、鼻先に見えたものにたじろいた。

「う、嘘だろ……」

 大きく見開いた瞳、真っ赤に染まった頬。それだけで俺は理解した。

「ご、ごめんなさい。急に出てきて……」
「そ、空かっ!?」

 ばね仕掛けの玩具のように、俺は空の体から飛びのいた。自分が全裸なのに気付き、そこらにあったバスタオルを掴んで腰に巻く。まだおっ立っているのが収まらない!

「部屋にもどるね。あ、朝ごはん作るの、少し待ってて……」

 空は俺の目を見ずに言った。自分も裸なのを気付いたのか、シーツを手早く体に巻き付け、裾をずるずる引っ張りながら足早に出て行った。



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